「蒼のマハラジャ」神坂智子

「シルクロードシリーズ」や、「小春びより」などで、敬愛する作家さんですが、 中でもこの「蒼のマハラジャ」には、ものすごく感動しました。

 第二次世界大戦前のインドは英国統治下にありました。父の転任でラジャスタン地方にやってきたイギリス人の少女・モイラは、 ジョドプールの王宮で、王子・シルバと運命的な出会いをします。その後、歳若いマハラジャ(王)となったシバと、マハラーニ(妃)となったモイラが、 いろんな苦難を乗り越えてゆくエキゾチック大河ロマンです。史実に沿って話が進むし、 インドにおけるカースト制度の問題や、人種差別、アヘンの恐ろしさなども織り込まれています。
それでなくても様々な宗教と人種のるつぼのインドで、白人の女の子が、マハラーニになるには、 周囲を納得させるまでには時間もかかりました。その頃、インドでは一夫多妻でしたから、 もちろんイギリス人のモイラにはとても耐えられなかったし・・・・。 ですが、何に付けても前向きにがんばるモイラと、それを愛し信じつづけたマハラジャは、 なんとか問題をクリアし結婚します。

 ハッピーエンドかと思いきや、後宮の問題、第二次世界大戦の勃発、インドの独立、マハラジャ制度の廃止、新政府への税金、 選挙、学校や病院の運営、すぐには答えの出ない問題が次から次へと山積みでした。 それらを二人と、二人に心よせる人達が協力して、ひとつひとつ片づけていきます。 インドが英国から独立したことによって、王制が廃止になり民間人となった後も、 二人は、国民から「マハラジャ」「マハラーニ」と呼ばれ続け、国民の為に努力を惜しみませんでした。 そして、何か問題を解決しようとする度に資金難となり、王家の秘宝「蒼の石」が欠けていきました。 二人はそれを「蒼の石」はこのためにあったのだと言うんです。

たぶん、殆どがフィクションだと思うのですが、私はこれを読んでいると、 本当に、インドにこんなマハラジャとマハラーニがいたのではないかと思うくらい感動しました。 感涙した場面は多々ありますが、やはり一番印象が深かったのは、モイラが、 カースト制で最下位(ハリジャン)の少年と、宝石の細工を通じて親しくなるのだけど、 マハラーニがそんな身分のものと接触してはいけないという、周囲の猛反対により、 少年をアメリカに移住させねばならなくなった事。 だけど、マハラジャに跡継ぎの子供が生まれた時、少年ナルシスが二人に最大の恩返しをする所かな。

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