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  死刑囚

大道寺将司 『死刑確定中』 太田出版

『命の灯を消さないで―死刑囚からあなたへ 105人の死刑確定者へのアンケートに応えた魂の叫び』 

 死刑囚の生活については、大道寺将司『死刑確定中』をお読み下さい。非常に厳しい毎日です。
 狭い部屋に閉じこめられ、いつ殺されるかわからない不安におびえています。夏は暑く、冬は寒い。具合が悪くても寝ころがることもできないのです。支援がなければ、日常生活にも苦労します。たとえば、トイレットペーパー、歯ブラシなども不足します。

 「死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90」が、2008年7月に確定死刑囚105人にアンケートを送り、返ってきた77通をまとめたのが『命の灯を消さないで―死刑囚からあなたへ 105人の死刑確定者へのアンケートに応えた魂の叫び』です。
 「アンケート結果からは拘置所の過酷な処遇が見えてきた」とありますが、死刑囚の生活は厳しいです。

 死刑囚は独居で生活し、独居から出るのは風呂、運動、面会、教誨ぐらいでしょうか。面会人がいない死刑囚には話相手は刑務官だけです。宗教教誨は誰でも受けられるわけではないようで、順番待ちの死刑囚がいるそうです。手紙は一日一通しか出せません。
 独居の中では、勝手に寝転がったり運動したりすることはできません。あぐらをかくか、正座するかです。風邪をひいて横になりたければ、願箋を出して許可をもらわないといけません。
 自分のお金でお菓子などを買うことができますが、拘置所で販売されている品物でないとだめです。お金を持っていなかった、差し入れがないと、請願作業によってお金を手に入れるしかないありません。
 しかし、ブロックの組立をして1個15銭だそうです。100個で15円、一日3000個でも450円の収入です。そのお金を貯めて被害者遺族へ送金したり、生活に必要なものをまかなうことになります。

 また、冤罪を主張している死刑囚も少なくありません。知的障害者や精神障害と思われる人もいます。

 上田宜範死刑囚(無罪を主張している)は自分のことはさておいて、松本健次死刑囚のことを心配しています。
「大阪拘置所在監・松本健次死刑囚はえん罪であり、早急に弁護団を結成すべきである。松健氏は知能が低く(決して差別表現ではない)、取調べで自供を強要された節があり、大阪拘置所の調査で、知能が低いから、取調べで丸めこまれたのであろう、死体遺棄は手伝ったかも知れないが、殺人についてはやっていないと結論が出ており、その旨が法務省への報告され、法務省も同じ見解を示している。松健氏を救って上げてください」

 その松本健次死刑囚はどういうことを書いているかというと、
「福島みずほちゃんへ 俺と文通をよろしくお願い致します。文通する相手をよろしく。全員で10人程支援人を増やして下さるように、福田首相さん、保岡興治法務大臣さま達へ報告を。レーダー光線を外部から中止して下さるよう国会議員達へ報告をして下さい。命の大切さは良くわかりましたので、トクー償金等のために特別出廷願いを弁護士たちに現在お願い中です!」
 松本健次死刑囚は胎児性水俣病による知的障害だそうで、主犯の兄が自殺したために、その代わりに死刑になったらしいです。

 山本峰照死刑囚(2008年9月11日執行)の文章もウーンというもの。
「福島みずほ様
 わだわだアンケイ用紙を送って下さいましたが、お力ぞえにならず気を悪くなさらないで下さい。裁判の時は判決で死刑 私しは死刑にして下さいといいましたが、弁護士がこおその手続をしましたが、私しはその日に取下をし死刑にせんねんしました。死刑が確定すれば半年以内で処刑されると聞いていましたので、それが約4年になりますが、一行にそんなそぶりも有りませんので、私しも困っています。
 私しの書いた事とアンケイトは関係は有りませんが、福島みずほ様のお力で法務省のほうに年内まぜの間いだにどおか処刑出来ますように法務大臣にお力ぞえをよろしくお願いします。毎日 一日でも早くお告がくくるよう に私は手を合せて、お告のくる事を心まちにしています。どおか福島みずほ様 どうおかよろしくお願いします」

 山本峰照死刑囚はどんな人だったのか気になります。

 匿名男性B死刑囚はこんなことを書いています。
「死刑囚の中には共犯として起訴されたのに、一方の者は死刑を言い渡され、片や残りの者は極刑判決ではなく、無期又は有期刑の判決を下された者が多くおりま す。そうなると、命を断たれる死刑と今後生き続けられ、社会復帰の可能性が残る無期刑との境は何だったのかということになるのですが……。
 これが またなんとも杜撰きわまりない認定によって生死を分けられているのです。裁判では複数犯の場合、主犯的立場であったのか、もしくは従属的な立場で犯行に加わっていたのかが重要なポイントになるのですが、裁判所による判断のおそまつなこと……その実態を知れば誰もが呆れ返ると思います」

「現実の日本の裁判というのは、本当に驚くほど杜撰に行われています。犯行に使用されたとされる凶器が未発見であろうと、物的証拠が一切なかろうと、自白がなかろうとも、共犯者の作り話を参考に「検察が起訴したのだから……」のひとことによっていとも簡単に死刑判決を下すのがこの国の裁判官たちなのです」


 私たちは何もかも人ごととしてしまうため、死刑問題なんて自分とは全く無関係なことだと考えています。そのため死刑囚やその家族に残酷であり、時には被害者やその遺族に対してさえ無神経になってしまいます。そしてそういう自分のあり方を省みることはしません。
 死刑問題を縁として自分や社会のあり方を考えていくことが大切ではないでしょうか。