元素名 | 工具鋼におよぼす添加元素の影響 |
C |
C 0.6 %以上では、C量を増加しても焼入れ硬さは増大しないが、炭化物量が増し耐摩耗性を増大させる。 |
Si |
低温焼もどしにおける衝撃抵抗を増大させる。低温の焼もどし抵抗性を増大する。炭素工具鋼に多量に加えると、セメンタイトを黒鉛化し、脆性化したり、可鍛性を害する。少量添加で多少かたさと強度を増す。添加量を増すと耐酸化性を増す。 加熱による結晶粒の成長を防止する。 |
Mn |
焼入れ性を増し、耐摩耗性を高める。Sによる脆化性を防止する。多量に加えると焼割れを起こしたり、残留オーステナイトを生じさせ、脆化させる。 |
P | 衝撃抵抗を低下させる。 |
S |
熱間加工性を害する。Mn、Moと結合して工具の被削性、研磨性を良くする。 ただし、靱性を害する。 |
Cu | 赤燃脆性を起こす。黒鉛化を助長する。鍛接性を害する。 |
Ni |
少量添加で靱性を増大させるが、多量に加えると残留オーステナイトを生じ脆化する。焼入れ性を増す。黒鉛化を助長する。 |
Cr |
焼入れ性を増す。炭化物をつくり耐摩耗性を増す。V、Mo、Wなどと複炭化物をつくり、焼もどし抵抗を増大させる。炭化物は結晶粒の成長をおさえる。耐酸化性を増す。靱性を改善する。 |
Mo |
Wの1/2の量でWと同様な性質が得られる。高温硬さ、強度、クリープ抵抗を増す。焼もどし二次硬化性が大である。焼入れ性を増大する。焼もどし脆性を防止する。 |
V |
結晶粒を微細化し、焼もどし抵抗性を増大させ、600℃までの高温硬さを高める。焼入温度範囲を広くし、焼割れを防止する。靱性を与え脱炭を防止する効果がある。含有量を増すと焼入性を低下させるので普通2%以下である。難溶性の炭化物を作り耐摩耗性は上昇するが研磨が困難となる。 |
W |
600℃までの高温硬さを増す。Crの存在により焼もどし抵抗を非常に大きくし二次硬化を起こす。耐摩耗性を増大させる。 |
Co |
マルテンサイト地を強化し、耐摩耗性、高温硬さを増す。多量に加えると、ZEI脆化するが、Vの添加により防止される。 |
As | 赤熱脆性を起こす。 |
Sn | 赤熱脆性を起こす。 |
B | 少量添加すると切削耐久力を増す。また、共晶炭化物を小さくする働きがある。 |
Ti | 結晶粒を微細化し靱性を向上させる。 |
Se | 工具の被削性、研磨性を良くする。 |
Zr | 結晶粒を微細化し靱性を向上させる。 |
Nb | 結晶粒を微細化し靱性を向上させる。 |
Te | 被削性を増すが、熱間加工を困難にする。 |
Pb | 被削性を与えるが、300℃以上の熱間衝撃性を悪くする。 |
Re | 鋳造組織を微細化する。 |
Al | 結晶粒を微細化する。 |
O | 高温、低温とも脆化する。 |
N | 靱性を低下させる。 |
H | 靱性を低下させる。白点の原因になるが、高温で焼きなましをすれば拡散する。 |