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アワビのお仕事-4-       
<16> 剥離
<17> 温水剥離
<18> 麻酔剥離
<19> 紫外線照射装置
<20> ろ過ということ
<アワビのお仕事16> 剥離 

■勤務記録1987/4/20 〜25 より■
指導を受けた事項・内容稚貝の温水剥離、麻酔剥離について
理解度/感想/希望等水槽調整のための「剥離」ということであった。「剥離」を実際に見たのははじめてであった。意外なほど簡単に剥離できるものだと思った。
 
 アワビを扱う際に一番厄介なのは、「くっついたら剥がすのが大変」なことだと思います。魚のようにたもですくって場所を移動したり出荷したりできないからです。数えるほどのアワビを剥がすのは、油絵のパレットナイフや洋食ナイフなどを、アワビの足の裏と付着基盤との間に差し込んで引き起こせば比較的簡単に剥がれます。

 しかし何万、何10万個のアワビを短時間に剥がすとなると大変です。成長を停滞させないための分散作業の際はもちろん、計画的に個数管理をしながらノルマを達成しなければいけない種苗生産施設であればなおさらのこと、ぱっと剥がれていただかないことにはにっちもさっちもいきません。そこで、先人の工夫でいくつかの方法が編み出されました。
 私が仕事をしていたところでは、主に、次に二つの方法がとられていました。
    1.温水剥離
    2.麻酔剥離
の二つの方法です。詳しくは次回。
(020413)
<アワビのお仕事17> 温水剥離  

アワビを大量に効率よく剥がす方法について、2つの方法がとられていました。

 まず、温度剥離(はくり)ですが、これはアワビのついた板を急激に暖かい海水に浸けるものです。暖かいといってもアワビの元気がなくなるような温度ではまずいわけで、目安として飼育水温より、14度ぐらい高めの海水を使ったと記憶しています。(岩手の人違ってたらメールくださいね)アワビの具合が悪くならない最高温度は、エゾアワビでは24度ぐらいといわれています。

 したがって、それひく14℃ということは、飼育水温が10℃以下でないとつかえないということになります。そうなんです。寒い時期に密度調整や、計数のためのサンプリングなどをする場合、あるいは春期(シーズン最初)の出荷の時などに使われます。

 この剥離のよい点は、なんといってもアワビのダメージが少ないことでしょう。大きな網袋を張った水槽に、加温した海水を貯めておき、アワビのついた板(シェルター)をドボンと入れます。するとあら不思議、にわかにアワビはもぞもぞ動き出して、はらり、はらりと水底に落ちていくものもあります。自分から落ちないものでも、手でつついたりすれば簡単に剥がれ落ちます。

 このように板から落ちたアワビは網袋を手繰り寄せることで網の一箇所に集められ、おばさんたちの華麗なザルさばきですくい取られ、元いた冷たい海水に戻されます。その後選別器でサイズ分けされる場合が多いのですが、ダメージが少なくていい反面、回復が早いので、選別器でふるっている間にぺたぺたくっつきだすアワビもいて、選別作業がしにくいという面があります。

 どうして暖かいところに浸けると剥がれ落ちてしまうのかはよくわからないのですが、人間が冷たい外から帰ってきて、温かいお湯に手を浸けたりすると、なんだかじわ〜〜んと痺れたようになるのと似ているのかもしれません。

では次は、麻酔剥離です。
(020502)
<アワビのお仕事18> 麻酔剥離            

 麻酔剥離は文字通り麻酔で剥離するのですが、I県で使っていた(る)のは パラアミノ安息香酸エチルという薬品でした。かゆみ止めの塗り薬「ラナケイ○」の主成分です。麻酔といっても局所麻酔剤というわけですね。

 どうやって使うかというと、やはりドボンとシェルター(アワビのくっついている板)ごと漬け込むのです。ところがこの薬品が水にはなかなか溶けないという厄介な性質を持っていて、一工夫が必要です。

 水には溶けないのですが、エタノール(エチルアルコール:お酒の原料ですな)には溶けるので、まず、エタノールに溶かしてから、その溶液を海水に混ぜるのです。使用濃度は50ppm、50gの麻酔薬を500mlのエタノール(食品添加物の70%のものが安価でした)に溶かして、1tの海水に溶かして使っていました。

 このとき海水温もやや高めにしてしていました。低水温だと、剥がれ落ちるまでに時間がかかり、回復も遅いようでした。麻酔で剥がされたアワビは足の裏の筋肉がぺターと広がったままで、ほんとに「しびれたー」という感じです。剥がれ落ちたアワビは温度剥離同様、ザルですくって選別水槽で、サイズ分けされます。

 この他、麻酔にはジ-フェノキシエタノールや、炭酸ガスによる麻酔も有効なようです。(020901)
<アワビのお仕事19> 紫外線照射装置<ステリト○ン>のフィルター交換            

 種苗生産業務の一番重要な時期のひとつは、採卵から採苗までのごく初期の管理だと思います。特に採卵は、産んでくれないことには始まらないので、職員も神経を使います。初めて産卵誘発室を案内してもらった時に、誘発台の脇に「お札」が張ってありました。氷上神社という近くの神社の安産祈願のお札だとか・・・・・。 採卵がままならなかった頃、初代のA所長さんが職員を率いてお参りに行ったとかいうお話です。

 アワビの受精は体外受精ですが、
魚のように搾り出したりして人工的に受精することが出来ません。そこで人工的な刺激を与えて、産卵させる方法が先人の努力と「偶然」で見つけられたのです。

 それが、一般的に行われている「紫外線照射海水」による産卵刺激なのです。原理はのちほど説明することとして、与えられた仕事は、紫外線照射装置のフィルター交換でした。交換する場所は3箇所、機械室の中の2箇所と、幼生管理室の1箇所でした。フィルターというのは要するにゴミとりで、プラスチックの円筒形のカゴに化学繊維を密に巻きつけたものです。筒の外側から内側へ向かって水がしみこむときにゴミが引っかかって水をきれいにします。

 このフィルターは、紫外線照射装置の手前にある、ハウジングのなかに納まっています。これを産卵誘発の前に新品に交換する必要があるのだそうです。つまり、ゴミが紫外線照射装置の中に入ると、ゴミが紫外線を吸収してしまい、紫外線による海水の光化学変化が不十分になると考えられているようです。

 いずれにしても、フィルター交換は、スパナの使い方の入門編でした。モンキースパナのナットが納まる部分の固定側と可動側、固定側の方に力がかかるように回せと教えられました。また、海水中の金属の電蝕というものがどういうものかを知ったのもこのときでした。(020924)
<アワビのお仕事20> ろ過ということ

 アワビを飼う海水は、海から直接水槽にポンプアップしているのではなく、ろ過槽を通過した海水を使います。そうしないと、ごみはもとより、いろいろな生物が水槽の中に入り込んで、大変なことになります。たとえば、フジツボやムラサキイガイのような、壁面にがっちりと固着する生き物がたくさん入ると、水槽の壁面は、あっという間にそれらの生き物でおおいつくされてしまいます。また、ヨコエビや、コペポーダなどの小さな甲殻類のなかには、アワビが餌にしている珪藻を横取りしてしまう種類もいます。たいていの種苗生産センターでは、これらの生き物やその幼生が水槽内に侵入しないように、また、単にごみを取り除き、水をきれいにするためにろ過槽を設けています。

 しかし、アワビの餌である珪藻もまた、海水中に浮遊している珪藻を元種として利用するため、珪藻は通過するけれど、他の動物プランクトンなどは通過させない「ろ過精度」が求められます。その境目は、私が勤務していた時は、100ミクロンとしていたと記憶しています。そのろ過槽というものが、どういう構造かというと、原理はいたって簡単な砂の積層によるものです。しかし、その砂の積み方や、砂の粒径の設定などは、プラント会社のノウハウのよるものらしく、詳しくは知る機会がありませんでした。

 砂ろ過槽には方式がいくつかあるようで、私の知っているのは、圧力式と重力式です。圧力式は、大きなタンクのような密閉容器の中に砂が積まれていて、ポンプで送水する圧力でろ過速度を速める事ができるので、設置面積の割には処理能力が高いと思われます。重力式は水槽のような開放式の容器に砂を積み、重力で通過させます。しくみがシンプルで、メンテナンスが楽といえるのではないでしょうか。

 私の仕事場は、当時圧力式の急速ろ過でしたが、電磁弁とやらがいくつもついていて、自動的に流路が変わり、「逆洗」するという、すぐれものでした。そばにいると、爆発しそうに振動する、銀色の巨大なカプセルは恐怖を感じました。しかし、しくみを覚えるまでにずいぶんと時間がかかりました。今はもう、海底ろ過システムに変ったようですが、その後順調に稼動してるんでしょうか・・・・。(021229)