広島県安芸郡熊野町は日本一の筆の生産地です。また化粧筆は世界トップのブランド品として女性に広く愛用されています。

熊野町の方言

熊野のことばとは

熊野町は、広島県の一町のため、熊野ことばは、「ひろしまべん」のひとつであり、他地の人々から、特に「くまのの ことば」のように言われることは、ほとんどありません。「ひろしまほーげん」と呼ばれるものとなります。
●ほいで かー こまって しもーた いのー。 (老男)
(それで、ほれ、こまってしまったよねえ)
このような「かー」をカラスにたとえて、「安芸ガラス」と呼んでいます。
●さむい ゆーて いーよった で。 (若男) (寒いといっていたよ)
「といって」という言い方で、「と」が抜けて用いたり、「ゆーてゆーた」のように 重ねて用いたりする傾向の「と抜け」事象が有します。
●もーおっちゃんは きょんさるけー はよ いきんさい やー。 (中女)
(もうおじさんは来ていなさるから、早く行きなさいよ。)
このように「~んさる」が熊野町で盛んに用いられています。

音声の生活

【連語上の音変化】「~のは」=「~なー」

●いくなー きらいじゃ。 (行くのはきらいだ。)

「~とは」=「~たー」
●あっちたー これの ほーに よけー あろー おもうんじゃが のー。
(あちらよりは、こちらの方に、よけいあるだろうと思うのだがねえ。)

「です」「ます」に接する「わい」の変化
● わしが いきまさー のー。 (老男) (私がいきますわいねえ)

「~ちょる」「~ちゃる」と「~ちゃげる」「~ちょく」
● あしこい きにょーから はー きょんさるさろー が。
(あそこに昨日から、もう来ていなさるじゃないの。)
● あんかたかたの ひとにゃ あー しちゃげんさいじゃが うちのにゃー
この ぶにゅー こーちゃっちくれんさりゃー えー。

(お宅の人(お宅のご主人)には、ああしてあげなさいだが、私の<人>には、この分を買ってやって下さればよい。)
このように、「ちゃる」「ちゃげる」は尊敬態上の差として用いられています。
● はよ もろーちょかんにゃー。 (早くもらっておかなければ。)

音節添加

熊野町で、音節添加が認められるのは「ん」音の添加事象です。
いっこん(1個) にこん(2個)・・・・・・はっこん(8個) きゅーこん(9個) じっこん(10個)
助数詞の後に「ん」をつける
打消しの助動詞「ん」は「のん」の形となります。
● いかん のん。 (行かないの。)
「ち」を用いる傾向は、急速に失われつつあり、聞かれなくなる日もそう遠くはなさそうです。
● きのー あんたかたい いっちぇからよー はなーちょいちぇ くれー ゆーちょい たんじゃが のー。
(昨日あなたの家に行ってから、よく話しておいてくれといっておいたのだがねえ。)
● よーまいち ちゅーち なー。 (よく詣ってといってねえ。)
このような「ち」は今では、ほとんど「て」に変化しています。
熊野町のアクセントは、後上がり調のものが特徴的となっています。

表現の生活

【朝】
● おはよ がんした
● おはよ がした のー。 (おはようございます。)
「がんす」は、現在では、80歳以上の人々でないと使用されていません。
● おはよ ありました。 (おはようございます。)
中年層以上に用いられています。

【昼】
● こんちわ。 (今日は。)

【晩】
● はー かえりまひょー やー。 (もう帰りましょう。)
田などの帰り道に、人に出会った時のあいさつ。
● こんばんわ。 (今晩は。)

【訪問】
● おーがんさんした か。 (おあがりなさいましたか)
これは、元来「食事はすみましたか」の意味もつもので、昼でも夕刻でも用いられている。
● くれんさい。 (下さい。)
中年層以上の店屋に入る時のあいさつです。 少年層は「ちょうだい」になります。

【謝辞】
● ありがとー がんす のー よいよ。 (ありがとうございますねえ。全く)
老年層の謝辞で、丁寧な謝辞は次のような言い方をします。
● おーけに ありがとー がんす のー こりゃー まー ごねんの いりまして のー。
(おおきにありがとうございますねえ。これは、まあ、御念の入ったことですねえ。)

【来客へのもてなし】
● だまくな ことー しちょりますが かけなさんへー。
(むさくるしいことをしていますが、掛けなさいませ。)
「がんす」「なさんへー」「つかんへー」「くれんさい」「んさんす」など 老人層の言葉で、他町では用いられることの少なくなっている敬語法が多く認められます。

【感動の表現】
● おりょりょ (あれあれ)
● ありゃ (あれ。)
● ほよほよ
同意した気持ち (そうよそうよ) 更に深い感動をもって同意される場合には、
● ほよほよ ほーよー
● おーさぶや、さぶや、(おお寒、寒。)
● ほいでかーの。わきゃーわからんよーに かー、なってしもーて からにの。かー こまってしもーて。
(それで、ほれね。訳がわからないように、ほれ、なってしまったからね。ほれ、困ってしまっ て。)