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H18.12.29 13項に「武士の一分」を追加

若い頃は一日に3本立て上映映画館を2館見てもあきないほどの映画好きでした。
しかし、サラリーマンになってからは長時間がとれないで映画から遠ざかっていましたが、リタイヤー後60歳以上はどの映画館でも1,000円で見られると知り、今年6月より興味深い映画上映館に足を運んでいます。
今年見た映画は次の通りです。

1.H16年6月17日 ポポロ「海猿」‐‐‐海上保安大学校の潜水士養成コースの生徒を描いた作品で、激しい訓練、友情、恋を描き、海から見た呉の町、音戸・倉橋の情景・両城の急傾斜地の坂道等呉人にとっては懐かしい景色がふんだんに出てくる佳作でした。潜水士という者がいかに訓練をつんでいるかと言うことが分り興味深かった。

2.H16年7月29日ポポロ「スパイダーマン(日本語版)」‐‐‐ユニホームを着ると指先から蜘蛛の糸が自由に噴射でき糸を利用しながら空中を飛べる主役のスーパーマンが悪役を退治する映画。ニューヨークが舞台であるが、岩波書店の配給であり日本語版であったため洋画を見ている気分にならなかった。ちなみに英語版は別の日に上映されていた。

3.H16年10月15日呉シネマ「華氏911」---アメリカでは随分評判になったブッシュの違法行為を取材した映画であった。4年前の大統領選挙におけるブッシュ陣営の行動を取材していて非常に興味を持って見られたが、ケリーとの今年の選挙でブッシュの勝利に終わった事で映画の効果がなかったことになる。呉地区にはこのようなドキュメンタリー映画に興味を持った人が少ないのか館内はがらがらであった。

4.H16年11月8日呉シネマ「隠し剣 鬼の爪」---藤沢周平の原作を山田洋次監督が映画化した作品で秘剣「鬼の爪」を伝授された侍がたどる数奇な運命を描いて「鬼の爪」がこういう技であったとは想像が出来なかった。東北のある藩が場面であるため東北弁で会話が進むがそれがなんともいえない雰囲気の良さをかもし出していた。主演の永瀬正敏の演技も素晴らしかったが、競演の松たか子が光った映画であった。

5.H16年11月10日ポポロ「血と骨」---崔洋一監督作品で大正時代に済州島から大阪に出稼ぎに来たビートたけしが演ずる男の一家の物語である。在日朝鮮人の生活が良く描かれており、戦前と戦後における在日朝鮮人の位置づけの変化が顕著に表現されていた。ビートたけし演ずる主役のたくましさ・悪さ・強さがたけしの迫真の演技で恐い位であった。たけしがいて始めて映画かできたのではと思われた。競演の鈴木京香もよかった。ビートの最後が末っ子を連れて北朝鮮に渡り、吹雪の小屋で末っ子にみとられてであるのも印象的であった。

6.H17年1月20日 ポポロ「北の零年」---行定 勲監督作品、吉永小百合、豊川悦司、渡辺 謙、石原さとみ、香川照之出演。
徳島藩と同藩洲本城代家老稲田家との間で起こった庚午事変の結果、明治政府より北海道静内郡開拓を命じられた稲田家旧家臣546名が辛苦を味わいながら開拓を進めた事実を基に描かれた話である。
吉永小百合の演技が光る映画であった。彼女の力の入らない自然ではあるが魂をゆすられる演技に感動した。彼女は観客を魅了出来る大女優であると再認識した。香川照之が小悪党を好演しているのも光った。
某新聞評によると話が荒唐無稽で笑いをこらえる場面もあったが、最後まで興味を持って鑑賞できたとあった。
確かに、史実と違う場面−例えば三隻の汽船のうち一隻は難破したとあったが、事実は三隻とも到着している。又、城代家老稲田邦植は映画では北海道に到着しても即座に本土に引返したことになっているが、史実は邦植以下546名が静内の海岸に上陸して開拓の第一歩を印している。
吉永の夫を演じた渡辺謙が5年間の失踪の後、北海道開拓使として現れ、最終的には開拓を妨げることになる耕作馬の徴用を諦めるストーリー、或いは元会津藩士が五稜郭の戦い後アイヌ人に化けて逃げていたのが、吉永のために犠牲になって彼女を助ける場面などはいかにも作り話といった感じを受けたが、非常に楽しめる映画であった。


7.H17年6月24日 ポポロ「交渉人 真下正義」
元広克行監督作品、ユースケ・サンタマリア、矢野君一、国村隼、金田龍之介、水野美紀、西村雅彦、八千草薫、柳葉敏郎出演。
キーワードは「フリーレイルトレイン、ボレル355.2、地下鉄側線、地下鉄新線」と感じた。
交渉人真下正義に挑む知能犯が地下鉄で新開発されたレールゲイジを自動で変えていずれの地下鉄線路にも乗り換え可能な車輌をハイジャックして真下に挑む物語り。
東京の地下鉄線路に戦前掘られた膨大な線路があり、それが最近開設された大江戸線等にも流用されているという話は、数年前に刊行された東京地下鉄に関する本で読んだ。本映画でもそれが一つの伏線となっており、一般には認識されていない線路を側線としてハイジャックされた車輌が走るストーリーとなっていた。しかし、最終的には開通寸前の新宿までの14号線に車輌が誘導されており、真下の推理で警視庁狙撃犯により車輌からの演奏会場への爆破信号発信が食い止められる。
圧巻はクリスマスイブに開催された演奏会で演奏される「ボレロ」の355小節の2音節タンバリンの周波数に合わせて爆破装置の周波数がセットされているところである。
指揮者「西村雅彦」のくそまじめな指揮ぶり、タンバリン奏者を警察が確保したために、聞き場のタンバリンの音が出ない、そのため演奏終了後拍手が起きないので、指揮者が拍手して聴衆に促す場面、中々見ごたえがあった。
最後に失敗した犯人が自爆したために犯人は分らずしまいとなるが、歩いている真下が犯人と知らないで犯人運転の車を追いかける途中で諦める場面、鴉が異様に騒ぐ場面、その後真下が婚約者と出会い、エンゲージリングを道路にす落とし大騒ぎして探す場面と重なりながら進む。
後半はボレロの演奏と犯人追求の警察の動きとが重なりながら進む映像は中々見ごたえがあった。
脇を固めた、国村隼、金田龍之介の好演が光った。柳葉は殆ど出番がなかった。いずれにしても、楽しめる映画であった。


8.H17.8.22呉シネマ「亡国のイージス」
阪本順治監督作品
真田広之、寺尾 聡、中井貴一、佐藤浩市、原田芳雄出演
自衛隊の協力を得たとのことで、イージス艦内・戦闘場面・艦内でのは迫力満点であった。
日本人のいざ鎌倉というときの愛国心があるか、外国からの侵略があったときに若者がそれに立ち向かえる度胸と知力・腕力があるのかということを再認識させるのが狙いであったのか。
某国工作員がイージス艦をのっとり日本に宣戦布告したときの対応を教材にして、本当の戦争を知らない(自衛隊を含めた)日本人に対して、戦争とはいかなるものかを知らしめようとする場面が、中井貴一演ずる工作員の最後まで望みを捨てないでがんばる姿、その部下が敗れたときに全員自決する姿に表されていた。
対照的なのが、総理大臣をチーフに関係大臣をメンバーとして設立された防衛委員会の決断ができない姿、米国に相談しなければ攻撃ができない姿に表れており、現在の日本の防衛力の情けなさがよく表現されていた。今の政府の対米姿も現している。
専任伍長を演じた真田広之と副艦長を演じた寺尾 聡の日本を守るために尽くす好演が印象に残った映画であった。

9.H17.11.01呉ポポロ「容疑者 室井慎次」
君塚良一監督作品
柳葉敏郎、田中麗奈、哀川 翔、真矢みき出演
柳葉演じる警視正 捜査本部長が検察に逮捕されるところから始まる。罪状が容疑者の自白強要を指示したことであるが、結果的にはなんでも法律で勝負する頭の良い悪徳弁護士の売名行為による作為が根底にある。分かって見ればなんだと思える原因であるが、全般の迫力ある画面・動きが良い映画であった。
今回は青島刑事が出なくて代わりを哀川翔扮するごろつき気味の刑事が勤めなかなか味のある演技をしていた。
NHK朝ドラ「風のはるか」で母親役を演じている真矢みきも要所で頭に残る演技をしていた。
新人弁護士役の田中麗奈が先輩の所長の厳しい育て方に耐えて最後の場面で、悪徳弁護士と対決し法律論で破るところが圧巻であった。
法律を振りかざせば悪が正当化され、それに歯向かう善玉が悪となる怖さを描こうとしたのが主題であったのか?
従来の「踊る捜査線」シリーズとは一味違う作品であったが、娯楽作品として又法律を考える作品として楽しめた。

10.H18.02.02呉ポポロ「男たちの大和」
逸見じゅんの原作「男たちの大和」を「人間の証明」「野生の証明」「敦煌」等を監督した社会派の巨匠 佐藤純彌監督がプロジュースした大作
反町隆史、中村師童の主演陣に芸達者の脇役が固め単なる戦争映画ではなく、当時の国際情勢から戦わざるを得なかった状況の下に、若人が自分たちが次の日本を創るために一命を賭して戦かったのだと言う意思を現代人に理解させようと言う製作者の意図が読み取れる作品であった。.
大和は昭和16年11月16日呉軍港で極秘裏に完成した、全長263m、満載重量72,800トン、最高速度51km/hで、世界最大の46cm主砲9門を備えた連合艦隊旗艦。
主要出演者を列記すると
第二十二分隊烹炊班二等兵曹 森荘八 反町隆史
第七分隊二等兵曹機関銃射手 内田守 中村獅童
内田守の養女で戦後60年目に義父の死んだ大和の沈没地点に出かける内田真貴子 鈴木京香
現明日香丸船長で大和の水上特攻作戦生残り 神尾克己 仲代哲矢
第二艦隊司令長官 伊藤整一 渡 哲矢
枕崎漁業組合長 芥川日佐志
明日香丸船員 前岡敦 池松壮亮
大和五代目艦長 有賀幸作 奥田瑛二
大和福長 能村次郎 岡崎海太郎
大和航海長 茂木史朗 高岡健治
第二艦隊参謀長第四代目艦長 森下信衛 勝野洋
露天甲板機銃射手二等兵曹 唐木正雄 山田純大
第五分隊広角砲第二班水兵曹 玉木 平山広行
第二十一分隊医務科班長 大森  森富隆
第七分隊四番機銃座第四班一等兵曹班長 町村 金子憲史
呉の芸者 文子  寺島しのぶ
神尾の同級生 野崎妙子 蒼井優
西の母 西サヨ  余貴美子
神尾の母 神尾スエ 白石加代子
海軍特別少年兵 第二十二分隊烹炊班(森脇の部下)常田澄夫 崎本大海
海軍特別少年兵 第五分隊広角砲二班 西哲也
海軍特別少年兵 第四分隊給弾手  神尾克己 松山ケンイチ
海軍特別少年兵第二分隊通信科伊達俊夫 渡田大
海軍特別少年兵 第二十一分隊医務科児島義晴 橋爪遼

以上の配役に示すようにこの映画の物語を構成しているのは20歳代の下士官と入隊したばかりの15−16歳の少年兵の大和での戦いぶり及びその家族知己との上陸時の片時の生活である。少年が國のために戦地に行くことは現在では考えられない、といってもイスラエルやイラクでは現在でも日常茶飯事であるが。明日香丸船長から大和で死んだ人々特に少年兵の話を聞いた15歳の船員 前岡の操船する姿が変わってくるのも印象的であった。もう一つの悲劇は芸者文子と神尾の同級生野崎妙子が広島の原爆で死んだことである。
主題歌は長渕剛が謡っているがこの映画に非常にマッチしていると感じた。
封切り後一ヵ月後であるにもかかわらず呉の映画館では珍しく観客が入っていたのも印象的であった。

11.H18.6.14ポポロ1「Limit Of Love 海猿」
 H16年6月に封切られた「海猿」が海上保安大学校、くれ市内等のロケによる作品であり当地では評判であった(本ページの第1項に記載)が、その続編がTVの連続物として登場し好評であったのを受けて、完結編として製作された映画であった。
伊藤英明が演ずる潜水士 仙崎とその恋人環菜(加藤あい)の結婚までの紆余曲折、特に仙崎が飛行機の海上への墜落事故での犠牲者を救助できなかった心の苦しさを排除できない状況で環菜との結婚に踏ん切りがつかない状況をかなりしつこく描いていた。
620名を乗せて鹿児島沖で座礁し火災を起こしながら急速に沈没してゆくフェリー船内の状況、海上保安官の救助活動が非常にリアルに描かれていた。又、この船に前夜結婚の話からお互いに気持ちを壊していた環菜が乗っていて事故に遭遇することが主題のひとつとなっていた。
乗客の救出が完了して保安庁の全員が一安心した時に、4名が船内にいると判明してからが物語の本論となる。
最後まで船内に残った乗客二人と先崎及びそのバディである佐藤竜太の極限での活動と41歳の男の乗客ーーー妻・娘と別れそれまでの怠惰な生活から決別しようと金をためて妻子との仲を修復しようとして頑張り、車の販売会社を起こしやっと初めての外車が売れ、フェリーで運んでいる途中でこの事故に遭遇した男及び35歳の女ーーー船内売店で働いている5ヶ月の妊婦 の性格・生への執着を描きながら次第に先崎の考え方を理解して脱出に協力する姿が感動的であった。又かっての上司 時任三郎演ずる海上保安庁から派遣された事故対策本部長が仙崎を信じて最後まで救出をあきらめない姿もよかった。
船内の仙崎と事務所の環菜との電話での会話がすべて10管の事務所内に流れ先崎のプロポーズの言葉も海上保安官全員に聞かれ、「全員に聞かれてしまったのだから、逃れられないよ」という環菜の言葉がこの映画を締めくくるのに非常によかった。
監督:羽住英一郎 作品

12.H18.8.22ポポロ2「日本沈没」
 33年前に映画化された小松左京の同名小説を再映画化したものであるが、前回より地球物理学の進歩が著しい状況を踏まえて新しい理論も織り込まれた内容であった。
 草薙剛の小野寺潜水艇操縦士と柴咲コウの消防救命隊員が演ずる大地震後の出会いから別れまでの純愛物語、豊川悦司扮する田所博士の日本沈没時期の予測から沈没防止策の実行までを描く物語、石坂扮する総理大臣を中心とした政府の対応と阿蘇山噴火に巻き込まれて総理大臣が死亡後の大地扮する科学担当大臣と彼女を中心とする政府首脳の総理の遺志を継いだ国民救済努力の物語、日本全国の港・飛行場からの日本人脱出活動の状況、日本全土を破壊しようとする大自然の力の強大さを火山活動、地震・津波・活断層の動き等を最新の特撮映像技術を駆使して見せる物語が同時並行的に描かれてなかなか迫力ある映画であった。
 前回映画では田所博士を小林桂樹が演じて重厚さを見せていたが、今回は豊川が彼のキャラクターを十分出した物怖じしない性格で大臣であろうとつかみかからんとする迫力で自説を理解させ政府の国民救済努力を急がせようとする場面は凄みがあった。最後、最愛の部下であり仲間である小野寺を旧型の深海船で3,800mの深海に行かせる苦渋の選択は非常に感動的で彼の心中が理解できた。
それに対して政府首脳は首相亡き後の臨時首相代理を務める大臣の発言「日本人全員を救おうとしても毎日の災害で死亡する人間が多いのだから、それを考慮した政策でよい」は現在の政権を担う人たちの弱者を相手にしない考えにも通じるのはなかろうか?尚、その大臣と田所の理論を馬鹿扱いした大臣は国民をおいて海外逃亡をしたが!まさに忠臣蔵の大野くろべえの世界であった。
プレート沈降を早める理論に地中に引き込まれたプレートがマグマとしてたまり、次第に大きくなる結果その重量で地球の核に向けて一気に沈降することにより、プレート沈降速度が速まるという新しい理論が織り込まれていた。又、この沈降をとめるにはプレートを横断方向に切断することにより地中深い部分のみ沈降させて日本列島を載せているプレート部分は残すという方策が唯一あるということ、それを実行するためにはプレートに横方向に何十箇所も穴を開け爆薬を仕掛けそこを破壊することによりプレートを切断する方法しかない。原爆にも匹敵する爆発力を持つ最近開発されたN21爆薬を海底の起爆点に仕掛ける必要がる。それを小野寺操縦士が帰れないことを覚悟して旧型潜水艇で海面下3,800mの起爆点に仕掛けるのである。その結果、プレートが分断され日本列島は沈没を免れる。
 今年8月に発売された[日本沈没 下巻」を読んだが、これは原作通り日本は沈没し1億余りの日本人は海外移住し、海外移住後苦労しながら日本再建に努力する物語である。登場人物の中に小野寺が生存していて小野田と改名して重要人物として出てくる。映画化の時にはどのようにするのであろうか気にかかる。
樋口真嗣監督作品

13.H18.12.29シネマ1「武士の一分」
 山戸洋次監督の藤沢修平原作の三部作の最後の作品で既作品「たそがれ清兵衛」、「隠し剣 鬼の爪」(4項に記載)と同様に東北が舞台で各俳優の方言によるセリフが独特の雰囲気をかもし出していた。
主演の木村卓也扮する下級武士三村新之丞、その妻に扮した壇れい、下男の笹野高史が熱演でそれを助ける役どころに小林稔持、緒形 拳、桃井かおり等の芸達者を配し充実させていた。剣の師緒形拳の「互いに死ぬ覚悟でむかえ」という教えを常に念頭に描きながら、「盲であると侮りめさるな」と敵に告げながら敵の免許皆伝の腕を持つ番頭に立ち向かい、盲である事を利用してだまそうとする相手の術中にはまらず勝つストーリーは見応えがあった。
相手を殺すのが目的ではなく勝つのが目的であり留めは刺さないという考え方が、負けた敵が果し合い相手の名前を告げず自刃し、最後まで果し合い相手が迷宮入りとなるため三村新之丞に責めが来ないストーリーも想像外であった。
老殿が毒見役を勤め毒のために盲目となった三村に感謝し三村をきずかっていたことは当初の殿の様子からは想像がつかず本当に以外であったが、これが番頭・島田籐弥の悪人を実感させ敵となる場面設定も見事であった。