私のお気に入りBOOKS 

 私は幼少の頃から、無類の本好きでした。もちろん最も好きなのは生きもの関係の本ですが、それ以外にも幅広く本を読んでいます。ここでは私が読んで、「これは!」と思った本を紹介します。サイトの関係上、生きもの関係の本が中心ですが、気が向いたらそれ以外の本を紹介するかもしれません。





 西中国山地

 桑原良敏 著  渓水社 発行

 昭和57年に発行された広島・島根・山口にまたがる西中国山地を地誌,自然誌,登山ガイドなどのあるゆる角度から紹介した名著です。個人的には,それぞれの山の博物誌の項がとても興味深く,この本を読みながら今度の休日にはこの山でモモンガを調査しよう,この渓谷で蝶を探そうなどと,思いをふくらませています。20年たった今でも,全然古くささを感じません。
 この本は発行してまもなく絶版になり,古本屋などでも高値を呼んでいましたが,数年前に再版されました。私の所有しているのは,もちろん初版です。
 桑原先生は広島女学院大学の教授で,広島虫の会の会員でもあり,蝶などにも造詣が深い人でした。大学退官後に芸北町にすてきな別荘を造られましたが,この別荘をほとんど利用されることなく他界されました。かつて先生の別荘に行ったとき,庭でベニシタバガが乱舞していたことを思い出します。







 DNAの冒険 −ことばと人間を自然科学する−

 トランスナショナルカレッジ オブ レックス編  言語交流研究会 発行

 A4サイズ,約500ページもある分厚い本で,最初書店でこの本を見つけた時,一体どんな内容なのか不思議に思って,内容を見た記憶があります。言語交流研究会,いわゆるヒッポファミリークラブの存在は知っていたが,こんな本を作っていたとは驚きでした。
 生物学に全くの素人たちがみんなで話し合いをしながら,分子生物学の発生や遺伝の仕組みを考えていくという内容で,実はこれを読んで私自身も初めて発生や遺伝がイメージできました。DNAがらせん構造だということは誰もが知っていますが,それが実際どうやって機能しているかを具体的にイメージできる人は,研究者以外ではほとんどいないと思います。漫画も多用され,楽しみながら分子生物学の名著・『細胞の分子生物学』が理解できる画期的な内容です。
 生物や遺伝はこんなに面白かったんだと再認識し,あわせてなんか研究者になった気分を味わえる不思議な本です。ときにはロシア語が突然話せるようになった話や,数学のフーリエ級数や量子力学も出版されており,ぜひ読んでみたい。




 カラー版 シベリア動物誌   (岩波新書587)

 福田俊司 著  岩波書店 発行

 福田俊司氏はあかね書房の「科学アルバム フクロウ」の著者で,現在ではシベリアの動植物写真のスペシャリストです。この本は新書本でありながら,フルカラーでシベリアの動植物の撮影紀行がまとめてあり,誰が読んでもシベリアのすばらしさを堪能できます。
 とりわけシベリアトラの生態と,シベリアトラを素手で捕らえる狩人の話は人間の知恵の粋を見たようで,感動しました。捕獲写真も素晴らしい。
 また昆虫好きにとってはウスリーオオカミキリの巨大な蛹やミヤマカラスアゲハのすごい集団吸水のシーンなどもあり,傑作写真のオンパレードです。シベリアの風景や人の暮らし,ヒグマ,アムールトラなどの動物や海生哺乳類,サケ,野鳥の写真も満載です。
 こんな傑作写真が満載で,興味深い紀行文も多々ある本が,たとえ新書版サイズであっても1000円以下で買えるのはもうけものです。写真を撮る者の端くれとしては,あまりに安すぎるといった感もあります。




 下蒲刈島のトンボ

 神垣健司 著  下蒲刈町(現:呉市) 発行

 いきなり自分の本を紹介するのも図々しいのですが,私が個人的に最も気に入っている本(もちろん自分が作ったなかですが)で,いまでも時々ペラペラとめくっています。
 この本は平成11年11月1日に発行したんですが,じつは7月のはじめから本格的なトンボの写真を撮り始めました。とにかくこれほど真剣に撮影をしたのは初めてで,その3ヶ月半の成果がこの本に集結しています。よくこの短期間に,これほど多くの種(ヤンマは広島県産全種)が撮影できたことを,今でも不思議に思います。ここの写っているトンボを見るだけで,いろんな思い出が走馬燈のように浮かびます。トンボの解説も,私がそのトンボに出会った時のことや,それにまつわる出来事など,読んでいただいても楽しい内容だと思います。表紙のウスバキトンボや裏表紙のオニヤンマ交尾は一見の価値ありです。
 それからこの本は色が素晴らしいんです。多くの人から,この本は素晴らしく美しいといわれます。これはひとえに印刷会社のユニックスのおかげで,私は「ユニックスマジック」と読んでいます。
 紹介したトンボも広島県産68種,南西諸島・小笠原産18種で,定価1500円は決して損ではないと思います。
 購入希望の方は,以下のサイト(発刊物の紹介)をご覧ください。

 http://www.hiroshima-cdas.or.jp/syunran/


 神戸のトンボ 新・神戸の自然シリーズ 1

 青木典司 著   財団法人神戸市スポーツ教育公社 発行

 昆虫をはじめとする生物を同定する時,よく検索表が使われます。まずある特徴から2つに分けられた分岐うちのどちらかに進み,そこに書かれた次の特徴からまた2つの分岐のうちつのどちからに進み,といった方法を繰り返し,最終的にはその種の名前に辿り着くという方法です。この方法は,実はその生物群を基本的に知っている者がやるといいのですが,よく知らない者がやると,広島で見つけたものが「沖縄固有種」のところにいったりします。
 その点,「神戸のトンボ」はトンボを同定する場合に極めて有用な本で,この本を持っていれば,たいていのトンボ(神戸周辺に産するトンボには限られますが),容易に同定できます。また「トンボの一生とその姿」というコーナーでは,トンボとは一体何かがビジュアル的にわかるようになっています。生態写真の他,美しい標本写真があるのが素晴らしい。あまりうまく説明できないのですが,一度この本でトンボの同定をしてみると,いかにこの本が素晴らしいかがよくわかるはずです。
 とはいっても,ある勉強会でこの本を紹介したら,多くの人が出版元に問い合わせたのですが,すでに絶版になっていました(発行は平成10年です)。ぜひ再販してもらえるといいのですが,公的機関なので難しそうです。こんなこともあるだろうと思い,この本を2冊購入した私は,先見の明があるなあと自画自賛しました。


 フクロウを撮る −農業青年の観察苦闘記−
 
 滝沢信和 文・写真   今泉吉晴 解説   岩波書店 発行

 この本、岩波フォト絵本として子供用のコーナーで売られていますが、内容は大人が十分楽しめます。というよりも、フクロウ関係の本としては最も充実しているような気がします。
 フクロウの観察を続けているとわかるのですが、これまでのフクロウ関連の写真集は不自然なシーン(普通の状態では見られない)が多く見受けられます。これはフクロウを撮影するために、人工的に環境をつくったり、餌を与えて半飼育状態にしているためです。
 しかし「フクロウを撮る」に掲載されている写真は、まさに自然状態でフクロウを撮ったもので(私自身が実際に目にしたようなカットが多くあります)、その苦労は大変だったと思います。とりわけ、洞の中にいる雛のそばに山積みにされた野ネズミは圧巻です。文章も淡々としていながら、その内に秘めた情熱をひしひしと感じます。私と同世代ということもあってか、共感する点も多くありました。今泉教授の解説もよかった。
 この内容で1700円は安いと思います。40ページあまりの本なんですが、私は毎日のように眺めています。



 世界遺産の森 屋久島 −大和と琉球と大陸のはざまで−

 青山潤三 著  平凡社親書101

 考えてみると、私と著者とのつきあいも10年以上になります。これほど長くお付き合いができているのも、基本的な性格に似たところがあるからかもしれません。
 著者は小笠原、屋久島、中国大陸のスペシャリストで、最も好きなのはチョウなんですが、それだけでは飯が食えないらしく、今では花を中心に活動しています。著者の自然の見方は独特で、示唆に富んでいるのですが、これは著者が元々画家志望だったことによるのかもしれません。私の周りにいるナチュラリストや学者とはひと味違っていて、話をしていると尽きることがありません。
 この新書も、いかに屋久島が生物を通してみて、素晴らしく、不思議な場所であるかを、わかりやすい文章で書かれています。著者は花の写真もすてきなのですが、それ以上に文章が素晴らしいと思います。これほど情緒豊かな文章を書ける写真家は、他にはいないでしょう。ぜひご一読をおすすめします。
 著者は現在、高山と山の花の図鑑を執筆中、初夏には発行になります。今は平凡社に通って校正作業中だそうですが、できあがりが楽しみです。私の撮った花の写真も少しあるようですし……。




戻 る