アオスジアゲハ Graphium sarpedon nipponum (Fruhstorfer,1903)





 東洋熱帯・亜熱帯を中心にオーストラリア区にも分布する広域分布種で,Graphium属では最も北に分布を広げた種である。
 日本列島における分布北限では,都市周辺に生息が限られる。これは食餌植物であるクスノキが都市の街路樹として多く植裁されていることに加え,耐寒性のない越冬蛹にとって都市部の局地的な温暖化が大きく寄与していると思われる。

【形 態】
 ♂は後翅内縁が反り返り,内側に灰色の毛が生えている。春型は夏型より小型で,青色帯の幅が広く,色調が薄い傾向がある。
 広島県産は青色帯が狭い本州〜沖縄亜種に属し,広島市南区比治山ではまとまった数のエサキ型(前翅中室に青斑がある斑紋異常)が採集されている。
 ♂第8腹節背板は短いヘラ状のsuperuncusをもつが,近縁種のミカドアゲハにはない。Tegumenは第8節背板下にはまり,saccusは大きく膨らんでいる。

【生 態】
 呉市では,成虫は5,7〜8,9〜10月の年3化である。吉和村では5,7月下旬〜8月の年2化である。群馬県では年1化の蛹休眠性をもつ個体が混入していることが報告されているが,広島県では未確認である。
 成虫は訪花性が強く,また♂は地表での吸水性や獣糞などでの吸汁性が顕著である。飛翔は敏捷で,♂には山頂占有性が見られる。♀は葉裏や茎に1卵ずつ卵を産み付けるが,人工採卵は極めて困難な種である。蛹で越冬する。

【食餌植物】
 クスノキ科のタブノキ,クスノキ,ニッケイ,ヤブニッケイ,シロダモなどが記録されている。広島県沿岸部では,公園や道路にあるクスノキで多くの個体が発生している。

【分 布】
 国内では東北地方以南に広く分布する。
 広島県では全域に広く分布するが,中国山地では個体数が少ない。

【産地一覧】
 東城町,三城町,高野町,口和町,君田村,作木村,三良坂町,向原町,八千代町,福富町,吉田町,豊平町,芸北町,戸河内町,加計町,総領町,上下町,東広島市,呉市,川尻町,蒲刈町,下蒲刈町,熊野町,府中町,広島市,沖美町,宮島町,大野町,吉和村,廿日市市,大竹市,新市町,神辺町,内海町,府中市,福山市,向島町,尾道市,三原市,豊浜町

【参考文献】
拓植達雄ほか(1994) カラスがハトを黒くする?,情報センター出版.