ヒメシロチョウ Leptidea amurensis (Menetries,1858)


  

 東アジアに分布するシロチョウ科では最も原始的な種のひとつで,外部形態は南アメリカで繁栄するコバネシロチョウ属Dismorphiaに極めて近縁である。草原的結びつきが強く,草原に適応することによって繁栄した種と思われる。日浦(1971)による分布系統では,内陸アジア草原広分布属に整理されている。
 広島県RDBでは絶滅危惧種に指定されている。

【形 態】
 ♂は前翅端に黒斑があり,♀に比べて翅形に丸みが乏しい。春型は♂の前翅端の黒斑の発達が弱く,夏型♂は鮮明である。
 広島県産は九州産と同じく前翅端の黒斑の発達が悪い(特に夏型♀に顕著)という大陸産に近い傾向があり,本州中部以北産とは一定の地理的変異があることが指摘されている。
 ♂交尾器は左右のvalvaが腹縁で癒合,vinculumともつながっている。Juxtaはharpeとampullaの背方に押し上げられている。

【生 態】
 中村ほか(1998)によると,広島県高野町では年2〜3化,4月下旬〜5月上旬,6月下旬〜7月中旬,8月下旬〜9月上旬に発生し,第3化は稀とされている。しかし私の観察では,8月上〜下旬に比較的まとまった個体数を,毎年コンスタントに確認しており,安定した年3化であると思われる。
 ツルフジバカマが自生する湖畔,草地,水田の畦などに生息し,成虫は主に紫色の花に好んで吸蜜する。♀は食餌植物の葉表に1卵ずつ産卵し,蛹で越冬する。

【食餌植物】
 広島県高野町では幼虫がマメ科のツルフジバカマを食することが確認されている。

【分 布】
 国内では北海道,本州,九州(久住,阿蘇高原)に分布する。
 中部地方以西の本州では,広島県比婆郡高野町のみに生息する。高野町では1990年までは多くの個体が採集・確認されていたが,その後急速に個体数が減少し,1994年以降は確認記録がなく,絶滅が懸念されている。

【産地一覧】
 高野町市原・南・奥門田・高暮・岡大内・上里原・下門田・上市・昭和池・新市・和南原・別所

【参考文献】
日浦 勇(1971) 日本産蝶の分布系統,大阪市立自然科学博物館業績149:73−88.
中村慎吾ほか(1998) 広島県高野町蝶類自然誌,広島県高野町の自然誌:475−517.