ジャコウアゲハ Atrophaneura alcinous alcinous (Klug,1836)




 幼虫が,食餌植物であるウマノスズクサにある毒分を体内に取り込む毒蝶の一種である。鳥などの捕食者に毒蝶であることを認識させるため,成虫は非常に緩やかに飛翔する。
 国外では中国・台湾・朝鮮半島・ロシア沿海州に分布する。日本列島では南西諸島で4亜種に分かれるなど,島嶼性地理的変異に富んでいる。

【形 態】
 ♂は翅表が黒く,後翅内縁は内側に反った部分に灰色の毛がある。♀は翅表が黄白色で,後翅表面亜外縁の半月状紋は明瞭に現れる。季節型は顕著で,サイズは春型より夏型が大きく,後翅亜外縁の半月状斑は春型が赤色,夏型は黄色になる。
 広島県産は原名亜種に属する。
 ♂交尾器はvalva及びその内面のharpeにある遊離突起の形状に変異が多く,台湾産は鋸歯がない。

【生 態】
 呉市の観察では,成虫は年3回,5・7・9月に発生する。産卵は食餌植物の葉裏に1〜数卵産み付けられ,5齢で終齢幼虫となる。蛹化は食餌植物周辺にあるあらゆる物で行われるが,越冬する際には落葉樹の葉裏(蛹化時にはまだ葉が付いている)を避けることが報告されている。

【食餌植物】
 国内では本州・四国・九州・南西諸島に分布する。
 広島県では島嶼部を含む広い地域に分布するが,西中国山地では稀である。

【産地一覧】
 東城町,西城町,庄原市,君田村,三良坂町,高宮町,向原町,吉田町,千代田町,豊平町,加計町,湯来町,神石町,世羅西町,大和町,河内町,東広島市,呉市,蒲刈町,熊野町,川尻町,府中町,広島市,吉和村,宮島町,大野町,廿日市市,大竹市,新市町,神辺町,府中町,福山市,尾道市

【参考文献】
森三樹夫(1972) ジャコウアゲハの越冬蛹化時に於ける付着対象物の選択本能について,広島虫の会雑報22:16.