キアゲハ Papilio machaon hippocrates C. Felder & R. Felder 1864


広島県広島市南区黄金山 2000年8月12日


広島県世羅郡世羅町 207年6月30日



 キアゲハグループは北方に進出したPapilio属の集団で,セリ科植物に食性を広げ草原に適応したことにより繁栄した種で,北半球の寒冷地に広範囲に分布している。各地で多くの亜種が記載され,中央アジアの高地には翅形の異なった小型の個体群が分布するなど,分布上多くの問題があり,ミトコンドリアDNAによる系統解析の試みも行われている。

【形 態】
 春型は♂♀でほとんど差がない。夏型は♂♀ともに黒色鱗が発達するが,♀は♂に比べ大型で地色が薄く,斑紋は不鮮明で基部付近の黒色鱗が発達する。
 広島県産は日本・朝鮮半島亜種に属する。
 ♂交尾器は,valva内側にあるharpeのサイズや鋸歯の形状に地理的変異が見られる。しかしこの部位は個体変異も多く,規則性は見いだせない。

【生 態】
 呉市での観察では,4・6・7〜8・10月に成虫発生のピークがあるため,年4化と考えられる。しかし北部の寒冷地では春の発生時期が遅く,年3化であろう。
 成虫は山頂占有性があり,ギフチョウの山頂集合性と同じく交尾目的の行動と考えられる。蛹は非越冬蛹が黄緑色と褐色の2系があるが,越冬蛹は暗褐色系しかない。

【食餌植物】
 セリ科植物の野生種から栽培種まで広く食し,パセリや人参の害虫とされる。また,ミカン科・ウマノスズクサ科植物を野外で摂食している幼虫の観察例も多い。

【分 布】
 国内では屋久島以北の日本列島に広く分布する。
 広島県では中国山地から瀬戸内海島嶼部まで記録があり,全域に広く分布していると思われる。

【産地一覧】
 東城町,高野町,口和町,西城町,比和町,庄原市,作木村,三良坂町,甲田町,福富町,向原町,吉田町,豊平町,戸河内町,加計町,芸北町,戸河内町,神石三和町,総領町,上下町,世羅町,世羅西町,大和町,東広島市,呉市,川尻町,蒲刈町,下蒲刈町,熊野町,府中町,広島市,大野町,湯来町,吉和村,廿日市市,大竹市,新市町,神辺氏,内海町,府中市,福山市,向島町,尾道市,豊浜町,大崎町

【参考文献】
 Sperling. F.A.H. & Harrison, R.G.(1994) Mitochondria DNA variation within and between species of the Papilio machaon group
   of swallowtail butterflies , Evolution48(2):408−422.