キチョウ(キタキチョウ) Eurema hecabe hecabe (Linnaeus)


広島県佐伯郡大野町 2000年11月5日


広島県東広島市黒瀬町 2007年11月10日


[分 布]
 本州,四国,九州,南西諸島

[大きさ]
 20〜23o

[時 期]
 5〜翌4月(年5回程度)

[食餌植物]
 ニセアカシア,ネムノキほか

[越冬形態]
 成虫



【種の概要】
 東洋熱帯を中心に,亜熱帯から温帯にかけて広く分布する種で,日本では本州,四国,九州,南西諸島に生息する。近年の研究により,日本では九州以北の温帯グループと南西諸島の亜熱帯グループの二つの個体群に分けられ,沖縄本島では両個体群が混生することがわかった。この二つの個体群は前翅縁毛色,季節型反応,幼虫の食餌植物選択性などに違いがみられる。一方,遺伝子の系統解析では二つの個体群を分けることを支持しない結果が得られている。今後は,こうした形態・静態と分子レベルのおける分析結果の矛盾を解明することが,本種の進化の過程を明らかにすると思われる。
 形態面では,本土産と南西諸島産に顕著な相違があり,季節変異として,夏型は翅表外縁黒帯の発達が著しく,秋型では黒帯が消失する傾向がある。雄の翅の地色は黄色であるが,雌は淡黄色であり,雄は前翅裏面下縁近くに性標を有する。
 林道沿いや草地,田畑の周辺のほか,市街地などでもよくみられる。成虫は各種の花で吸蜜し,夏季には湿地や河原などに集まって吸水し,獣糞から吸汁することもある。雌は食餌植物の葉表に,1個ずつ卵を産み付ける。

【広島県の現状】
 中国山地から吉備高原,瀬戸内沿岸部,島嶼部まで広く分布し,各地とも個体数が多い。
形態面では,本県固有の地理的変異はみられない。また,本県産は九州以北の温帯グループに属しており,夏型は翅表外縁黒帯の発達が著しく,秋型では黒帯が消失する傾向があるなど,季節変異が顕著である。
 吉和村の観察では6月中旬〜7月に第1化が発生し,以後降雪時まで連続的に発生することから,年4〜5化と考えられる。また,夏型から秋型への移行も,8〜10月と長期間に及ぶ。