モンキアゲハ Papilio helenus nicconicolens Butler,1881



広島県呉市広横路 1998年10月6日

 東洋区に広く分布し,日本列島が分布北限となっている。亜熱帯・熱帯地方が分布の中心であるが,日本南端の宮古・八重山諸島には生息していない。こうした本種の分布については,休眠という適応性をもった個体群が日本列島・台湾に分布を広げ,その適応性のために逆に宮古・八重山諸島には分布を拡大することができなかった。つまり,冬に適応した個体群は,冬がないところには適応できないという推論がある。

【形 態】
 前後翅表面亜外縁には,♂はビロード状の黒色光沢があり,♀は薄黄色の不鮮明な帯がある。♀は♂に比べて大型で,後翅外縁部の赤斑は発達する。春型は夏型に比べて小型で,後翅外縁部の赤斑も発達する。
 広島県を含む日本列島に分布する個体群はひとつの亜種にまとめられているが,トカラ列島以南の個体群は前翅の黄白色鱗や後翅外縁の赤斑が発達傾向にある。
 ♂交尾器はvalva背面は大きく丸みを持つ。Harpe末端は鋭く尖り,鋸歯状遊離突起はほとんど見られない。Uncusは近縁種間では最も長く,背面に反って尖る。

【生 態】
 呉市では年3化で,5,7〜8,9〜10月に成虫が発生する。吉和村では年2化(5月上旬〜6月,7月下旬〜8月)が報告されている。
 成虫は林縁や人家周辺の森林帯に生息する。訪花性が強く,林道や渓谷で蝶道をつくって飛翔する。吸水性も強く,時に集団吸水も観察される。越冬態は蛹である。

【食餌植物】
 ミカン科植物を広く食し,カラスザンショウが最も普遍的な食餌植物である。

【分 布】
 国内では関東地方以南に分布するが,宮古・八重山諸島には分布しない。
 広島県では中国山地から瀬戸内海島嶼部まで広く分布する。

【産地一覧】
 東城町,西城町,比和町,高野町,口和町,庄原市,君田村,作木村,三良坂町,三次市,吉田町,八千代町,豊平町,芸北町,加計町,戸河内町,湯来町,神石町,上下町,世羅西町,東広島市,呉市,川尻町,蒲刈町,下蒲刈町,黒瀬町,府中町,広島市,湯来町,沖美町,宮島町,大野町,吉和村,廿日市市,大竹市,新市町,神辺町,府中市,福山市,因島市,尾道市,三原市

【参考文献】
西山保典(1984) 八重山になぜモンキアゲハは居ないのか?,TSU・I・SO(433):1−3.