ナミアゲハ Papilio xuthus (Linnaeus,1767)

広島県呉市休山・山頂 2000年9月10日

 
広島県東広島市高屋町 2007年6月16日            広島県呉市広横路 2007年9月8日

 ロシア沿海州・朝鮮半島・中国大陸・日本列島・台湾に分布するほぼ均一の形質を持つ種で,唯一フィリピン・ルソン島の北部高地に別亜種ベンゲットアゲハ(ssp. benguetana)が分布している。東アジアの温帯林依存種とされるが,近年都市周辺に分布を広げるなど勢力を拡大している。グアム・ハワイ島にも最近分布を広げているが,これは人為的分布の可能性が高い。

【生 態】
 春型は♂♀でほとんど差がない。夏型は♀は♂に比べ大型で地色が薄く斑紋は鮮明,後翅肛角部に橙色斑がある。
 広島県産は原名亜種に属する。
 ♂交尾器は別種のベンゲットアゲハを含めほとんど差がなく,非常に安定している。Valva内側にあるharpeの鋸歯状遊離突起の形状はキアゲハと比べて短く,歯の切れ込みが深い傾向にある。

【生 態】
 呉市では3月末には成虫が現れ,その後ほぼ切れ目なく10月まで成虫を見ることができる。年3〜4化とされているが,夏季の6〜9月には新鮮な個体と破損した個体が同時に観察でき,正確な化性はよくわかっていない。吉和村では年2化(4月下旬〜5月,7月下旬〜8月)が報告されている。
 成虫は,明るい低木の茂み周辺に蝶道をつくって飛翔する。蝶道をつくるのは♂で,交尾行動と関係あると思われる。蛹で越冬する。

【食餌植物】
 ミカン科植物を広く食し,栽培柑橘類の害虫とされる。

【分 布】
 国内ではほぼ全土に分布する。
 広島県では全域に広く分布するが,中国山地の高標高地ではほとんど記録がない。

【産地一覧】
 東城町,西城町,比和町,高野町,口和町,庄原市,君田村,作木村,三良坂町,吉舎町,向原町,吉田町,八千代町,豊平町,芸北町,戸河内町,上下町,甲奴町,世羅町,世羅西町,豊栄町,大和町,東広島市,呉市,川尻町,蒲刈町,下蒲刈町,倉橋町,江田島町,熊野町,府中町,広島市,湯来町,宮島町,大野町,吉和村,廿日市市,大竹市,新市町,神辺町,内海町,沼隈町,府中市,福山市,向島町,尾道市,三原市,豊浜町

【参考文献】
 日浦 勇(1970) 日本産蝶の分布系統,大阪市立自然科学博物館業績149:73−88.