オナガアゲハ Papilio macilentus Janson, 1877



佐伯郡大野町おおの自然観察の森 1999年8月22日

 日本列島・朝鮮半島と中国大陸中・西部に二つの個体群があり,それぞれ別亜種として区別される。翅型や飛翔は毒蝶であるジャコウアゲハに擬態していると考えられているが,系統的にはジャコウアゲハとかけ離れたシロオビアゲハ亜属に属し,クロアゲハに最も近縁な種である。

【形 態】
 前翅長は47〜68o。♂の翅表は♀に比べて地色が濃く,後翅表前縁部には黄白色の横帯があり,♀はこの横帯がない。また,メスは後翅亜外縁部赤斑が発達する。春型は夏型に比べて小型で,後翅亜外縁部の赤斑の発達が悪い。
 広島県産は原名亜種に属し,時に♀の後翅亜外縁部の赤斑が発達した個体が確認される。
 ♂交尾器のうち,valva背面はやや丸みを欠き,harpe末端の鋸歯状遊離突起はクロアゲハと比べて著しく小型である。またuncusも,クロアゲハやモンキアゲハに比べて小さい。

【生 態】
 呉市の観察では,成虫は4月下旬〜5月と7〜8月に発生する。9月に成虫が目撃されることもあり,年3化の個体か2化の個体の生き残りかは判断できない。吉和村では年2化(5月上旬〜6月,7月下旬〜8月)が報告されている。
 成虫は食餌植物の豊富な産地の渓流沿いに好んで生息し,林縁を緩やかに飛翔しながら各種の花を訪れる。♂は蝶道をつくるが,山頂集合性は見られない。蛹で越冬する。

【食餌植物】
 ミカン科のコクサギを最も好み,野外ではカラタチ,イヌザンショウ,カラスザンショウも食す。ミカン類でも飼育できる。

【産地一覧】
 国内では北海道・本州・四国・九州に分布する。
 広島県ではほぼ全域に分布するが,南部の低地では個体数が少ない。これは本種の幼虫が最も好むコクサギの分布に関係していると思われる。

【産地一覧】
 東城町,西城町,高野町,口和町,比和町,庄原市,君田村,布野村,作木村,三良坂町,向原町,吉田町,八千代町,千代田町,豊平町,戸河内町,芸北町,筒賀村,加計町,湯来町,神石町,神石三和町,総領町,上下町,世羅西町,大和町,東広島市,呉市,川尻町,熊野町,府中町,広島市,宮島町,大野町,吉和村,廿日市市,大竹市,新市町,神辺町,府中市,福山市,向島町,尾道市

【参考文献】
 比和町立自然科学博物館(1999) 蝶類観察ノート(伊藤弘),比和町立自然科学博物館標本資料報告第1号:51−128.