ミヤマサナエ Anisogomphus maacki


広島県山県郡芸北町  2007年8月4日

 個人的には思い入れの強い種であり、頭の中で実物よりも大型の種という固定観念を持ってしまっていた。腹部の形状や斑紋などから、他の種との区別は容易である。かつてはそれほど少ない種ではなかったようだが、最近では個体数が激減している。兵庫県などでもそうした現象が指摘されており、広島県でも同様である。
 ダイナミックな移動をする種であり、雌は河川のやや上流部で産卵し、その後に幼虫は河川を緩やかに下りながら中流域から下流域にかけて羽化する。そして羽化した成虫は一気に標高の高い山の山頂まで飛び、そこで夏季を過ごす。そして涼しくなった9月中旬頃、再び河川に戻るというライフサイクルを持つ。これまでの観察は羽化直後の個体か、夏季に山頂に集まっている個体が多く、秋季に産卵のため河川に戻ってきた雌を見かける機会は少ない。これは本種の雌が河川の広範囲を産卵に利用するため、個体数がばらけるためと思われる。
 広島県では太田川(古川)や芦田川などの一級河川から、二河川などの小規模な河川に至るまで、広く生息している。しかし現在、確実に観察できる場所は、非常に少なくなったいるようだ。かつて6月下旬に古川の「せせらぎ河川公園」で多数の本種が羽化していることが報告されていたため、2000年頃に何度かこの公園を訪れたが、本種の羽化を観察することはできなかった。この公園の河川は太田川からポンプアップされた水が流れており、本種の幼虫はポンプアップされた水に混じってこの河川に混入したか、それともポンプアップされた後の古川に、直接産卵されたものであるかはよくわからない。いずれにしても秋季に、古川において本種の雌を確認したことはない。
 私は本種と初めて出会ったのは、7月末に吉和の冠山を登ったときで、山頂付近のススキにとまっていた本種を見つけたが、極めて敏感ですぐに飛び去ってしまった。次は鳥取県大山に登山した際、6合目付近で本種を見つけたが、やはりすぐに飛び去ってしまった。今のところはこの2度の出会いだけで、本種とは縁がないと実感している。夏季に標高の高い山に登れば、高い確率で本種を観察できるであろう。また、呉市二河川の昭和地区からやや下ったあたりにある堰堤で、多数の本種の幼虫が採集されたこともあり、秋季にそのやや上流部に行くと、産卵のためにやってきた本種の雌に出会えるかもしれない。