ナゴヤサナエ Stylurus nagoyanus (Asahina)



島根県出雲市上島町斐伊川 1999年10月2日


 日本特産の中型のサナエトンボで、本州東北部から九州南部にかけて分布する。産地のほとんどが平地を流れる大きな川の下流で、木曽川や利根川など大きな川の下流域全体を生活場所にしている非常にスケールの大きいトンボである。中国地方では広島・岡山・島根の三県に記録がり、広島県では福山市芦田川のみに生息している。
 中型のサナエトンボで、腹部第8節付近が広がり、そこに目立った黄紋がある。また各節にリング状の黄斑がある。近似種にメガネサナエとオオサカサナエがいるが、ともに広島県には分布しないため、同定に苦労することはない。
 盛夏には、福山市の芦田川下流の土手では、ナゴヤサナエの羽化が多数観察できる。時期的には6〜8月と長く、時間帯も昼間であるため観察も容易である。ナゴヤサナエの幼虫は川を泳ぎながら土手を目指し、土手に着くとそのまま陸上に上がって羽化を始める。その際、土手に人間の気配を感じると、泳ぐ方向を変えて沖合に逃げてしまう。やはり羽化は最も危険な作業であるため、その場所を選ぶのは慎重なのであろう。 それでも昼間の羽化であるため、セキレイ類などの格好の餌食になる。どういった進化の過程で、こうした昼間の羽化になったのか不思議な気がする。