ニシカワトンボ Mnais pruinosa pruinosa Selys



広島県呉市郷原町大積 2000年6月18日

 西日本の渓流では最も普通に見られる種のひとつで,県南部では4月には姿を見せる。初夏の頃までの多く見かけるが,盛夏になると姿を消し,ミヤマカワトンボの季節となる。同定についてはオオカワトンボの項で記述したが,広島県の清流で小型のカワトンボを見たら,ほとんどが本種だと思っても間違いない。しかし渓流部にもオオカワトンボが分布する場合があり,やや大型の個体であればオオカワトンボの可能性もあることを頭に入れて,識別するとよい。
 河川上流域に生息し,わずかな水量しかない細流などでもよく発生する。流れのほとんどない湿地でも発生を確認したことがある。発生の早い場所では4月のギフチョウ発生時には姿を見せ,梅雨の終わり頃まで生息するようだが,具体的な終見はあまり明らかになっていない。ニシカワトンボは,雄に褐色翅型・橙色翅型・無色翅型,雌に無色翅型のみが出現するが,この出現率は地域によって異なる。
 広島県では島嶼部から中国山地まで広く分布する。筆者が観察している地域では,いまだに雄の褐色翅型を確認したことがないため,広島県の各地で各種フォームの出現状況を調査すると,興味深い結果が得られるかもしれない。また,オオカワトンボとの混生状況について,詳細な観察をすると,カワトンボ類の生態的位置づけが見えてくるようになるかもしれず,ぜひ取り組みたいテーマである。