ニホンカワトンボ Mnais nawai Yamamoto


広島県山県郡芸北町八幡湿原 2000年6月24日 (淡色型♀)


広島県呉市安浦町 2007年4月28日


 カワトンボ類のうち,本種とニシカワトンボ,ヒウラカワトンボ,ヒガシカワトンボのグループは,日本産トンボ類の中で,分類上でも,生態上でも,最も興味のあるグループのひとつである。いまだに一部の図鑑では本種とニシカワトンボは亜種関係になっているが,同一場所に混生していることが確認されているので,なぜ今でも亜種関係にしているのかよく分からない。あわせて翅の色で橙色翅型,淡色翅型,無色翅型など,多くのフォームが出現する。このフォームは地域によって出現割合が異なるなど,研究テーマとしては奥が深い。私自身,今でも無色翅型はどちらに種に属するのかよく分からないことが多い。同定については,橙色翅型の雄は,本種の性斑が大きくて目立つために容易に同定できるが,それ以外のフォームはいまだに同定に困るケースが多い。他だ,野外で見た場合には,本種の方がニシカワトンボよりやや大きいため,これが同定に役立つことが多い。広島県には本種とニシカワトンボが分布しているが,これまで混生していないとされていたため,あまり同定に気を使っていなかったが,実際は混生地も多くあることが分かりはじめている。今後は,種の同定には慎重を期さなければならない。なお,本グループの同定を確実に行うためには,できるだけ多くの個体を観察して,種を見分ける感を磨くしかないような気がする。(なお最近の研究で、旧ニシカワトンボ→アサヒナカワトンボ、オオカワトンボ→ニホンカワトンボに種名が変更されています。
 河川の中流域に生息し,緩やかな流れを好むとされている。ただ,筆者はこれまで広島県内の2カ所で本種を観察しているが,そのいずれも河川中流域ではなく,ひとつは河川上流の渓流域で,もうひとつは湿地のそばを流れる人工の側溝に発生していた。意外に多様な環境でも適応しているのではないかと思われるが,それにしては生息地が少ない。
 広島県ではこれまで中国山地を中心に分布するとされてきたが,これはどうも間違っているようだ。筆者が安芸郡熊野町呉地で本種とニシカワトンボの混生状況を報告しているほか,賀茂郡黒瀬町,広島市安芸区などでも本種の分布が確認できている(未発表)。このように本種も広島県内の広い範囲に分布し,一部ではニシカワトンボと混生していると思われる。本種の分布を明らかにするために,ぜひ広島県南部での記録は報告していただきたい。