最近になって、話題にもなり、多くのキャンプ場で見かけるようになったダッチオーブン。レシピ本もたくさん出回るようになりましたね。私が購入した頃には、今のようにレシピ本もなく、試行錯誤して使っていました。ですから、我流の部分もたくさんありますが皆さんの参考になりますでしょうか?
ところで、「よしおかなべ」というのが、昔から日本にはあるのをご存知でしょうか?、これとダッチオーブンがほぼ同じ構造なんです。厚い鉄板製の鍋で,蓋はフライパンとしても利用できるいい鍋ですが,なぜ、「よしおかなべ」はキャンプ場ではやらないのか?不思議なんです。シーズニングも簡単ですし,重さもたいしてかわらないのに・・・インターネットで検索しても売っている場所さえ見当たらない。昔ながらの金物屋さんにでも行けば見つかるかもしれないけれど,よき日本の伝統がひとつ失われたような気がします。
アメリカのカウボーイが,チリビーンズを作ったりパンを焼いたりしていた鍋がこのダッチオーブンです。オランダ人の商人が売り歩いたことからこの名前がついたとも言われています。西部開拓時代のものが今日本ではやっているのもなんとなく面白いですね。
ダッチオーブンは,鋳鉄製の鍋です。日本でいう南部鉄器と同じ製法でつくらています。ですから,使う前の慣らしはある程度必要ですし,使用後の手入れも必要です。ステンレスやアルミの鍋と比べると面倒なことの多い鍋ですが,料理の仕上がりと簡単さでは,いちまい上手といったところでしょうか。
この鍋の最大の特徴は,ウォーターシール効果にあると思っています。これは,材料から出る水分が,ふたと本体の間に挟まることにより,鍋の内部の圧力を上げ,圧力釜と同じ効果を生み出すことにあります。これにより,材料内部まで火が通る時間が短くなり,また,やわらかい火の通りになると思われます。
ですから,ローストビーフやスープを作ったりするのが最も適した使い方といえるかもしれません。
この鍋にも弱点があります。鋳鉄製品全般に言えることですが,衝撃に弱いということ。急激な熱変化に弱いということです。車での運搬中に壊れることはありませんが,コンクリートの上に落とすと,変形もしますが,割れてしまうことがあります。豪快に燃えている火の中に入れると,ピン!という音とともに割れることもあります。頑丈そうに見えるのですが意外とデリケートな製品でもあります。
ダッチオーブンには、大きく分けて次の三種類があります。それぞれにサイズが各種そろっています。作りたい料理によってサイズを使い分けてもよいのですが、ある程度慣れてからがいいですね。ちなみに私はすべて10インチを愛用しています。
これ以外にも,ふたでたこ焼きが作れるようになっているもの,鋳鉄だけでなくアルミ製のダッチオーブンなどがあります。ここにあげたものが基本形になると思うので,この辺からはじめるのがよいと思います。
購入するときには,ふたと本体があっていることをしっかりと確認して購入してください。通信販売等で購入すると,ふたがきれいにしまらないものがあります。そんな時は,苦情を言って交換してもらえればいいのですが,だめなときはヤスリで削るなどしてふたがきれいにしまるように加工する必要があります。
また,あまりにも錆びているものや軽く叩いてみて澄んだ音のしないものも避けたほうがいいでしょう。鋳鉄内部の欠損や巣が入っていることが疑われます。
次に,ふたの取っ手や本体の取ってがバランスよくついているかを確認します。特に本体のほうは本体を吊り下げて使用する場合もあるのでよく確認しておきましょう。
通信販売やインターネット販売では,このへんの確認ができません。信頼ある店を選ぶか,店頭でしっかり確認して,購入することをお勧めします。
下のメーカーからいろいろと発売されていますので参考にしてみてください。
◆ユニフレーム ◆スノーピーク ◆キャプテンスタッグ ◆ロゴスコーポレーション ◆コールマン ◆エバニュー
◇ロッジ
ダッチオーブンを買ったら、周りのグッズもそろえておきましょう。家にあるもので代用できるものもありますので一度に買い揃える必要はありません。でもまぁ、形から入るのも大切なので・・・
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スタンド |
ダッチオーブンを重ねておくにも、キャンプオーブンの下に炭を入れるのに使うにも何かと便利なスタンドです。普段は、ダッチオーブンの中に布巾・手袋とともに入れて収納しておきます。折りたたみのものもありますが,友人曰く,使用中に動いて鍋をひっくり返したそうです。気をつけて使わないといけないようです。 |
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リフター |
ふたを持ち上げるためのものです。いろいろな形のものが売られていますが、どれでもかまいません。灰掻きの付いているものが便利そうです。キャンプオーブンでは、ふたに炭を置いて加熱しますので、ふたを直接持てないこともあります。 |
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ささら |
後片付けのところにもあるように、ダッチオーブンの片付けは水洗いが基本です。焦げ付いたりしたときにはこれでこそぎとります。 |
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焚き火台 |
トライポッドにダッチオーブンをつるし、下から加熱するためには焚き火台が必要です。直火禁止のキャンプ場がほとんどですので、ないと炭でダッチオーブンを下から加熱できないことになります。 |
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クックトング |
調理用の火ばさみといったところでしょうか。加熱したダッチオーブンから中身を採りだしたり,裏返したりするために必要です。また,シーズニングの時に油を塗るためにも必要です。菜箸でもかまわないとは思いますが。 |
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皮手袋 | ロッジなどから専用の皮手袋が販売されていますので,これでもかまいませんが,私は,ホームセンターで溶接用の皮手袋を買ってきました。この方が安いので・・・ちなみに,軍手でも代用できそうですが,ダッチオーブンはかなりの高温にすることができますので,場合によっては役不足になると思ってください。それに,滑り止めのついた軍手だと,滑り止めが溶けてかえってやけどするかもしれません。 |
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トライポッド |
ダッチオーブンをつるすための三脚です。焚き火台が、ダッチオーブンを乗せることができるぐらい丈夫なものなら必要ありません。最近は,四脚のものも発売されていますね。好みで用意すればいいと思います。 |
購入すれば、さっそく調理をしてみたいのが人情ですが、この「シーズニング」を行わなければ、ダッチオーブンは使えません。面倒ですが、しっかりと行ってください。
シーズニングの方法として、次の三つを上げておきます。どの方法もやってみましたが、内側の仕上がりは同じです。
一番簡単な方法は,シーズニングが済んだ物を買ってくることです。これなら,こんな手間隙は必要ありません。
☆正統派編 (これが普通なんです。皆さんはこれを実行してください)
☆オリジナル(マニュアルのない頃にやっていた方法です。やらないほうがいいかも!)
油を塗るときに、取っ手の下やなべの裏を忘れてしまうことがあります。内も外もすべて塗るようにしてください。それから、油ですが、サラダオイルでもかまいませんが、シーズニングの時には、エクストラバージンのオリーブオイルを使いたいものです。熱源は、焚き火でも、ツーバーナーでも、家庭のコンロでもかまいませんが、中火と強火程度は調整できるもので行う必要があります。
① 豪快に焚き火を起こします。ダッチオーブンより1.5倍ぐらいの大きさで焚き火ができないといけません。
② 火があまり大きくならないうちに、ふたを開けた状態でふたと本体を焚き火に投入します。
③ 徐々に火力を上げていきます。一気に火を上げると割れることがあるので注意が必要です。
④ ダッチオーブンから煙が上がります。煙が消えたら、一度取り出し、自然に冷まします。ここで、錆止めのワックスを焼いてしまいます。かなり熱くなっているので気をつけましょう。
⑤ さめたら、洗剤を使ってきれいに洗います。この時、金属製のたわしを使わないようにしてください。
⑥ 乾燥させたら、たっぷりと油を本体にもふたにも塗って、再度加熱します。
⑦ 油から煙が上がる直前で、火からはずし自然冷却して終了です。
⑧ 冷え切ったところで,余分な油が浮いているはずなので,キッチンペーパーなどでふき取っておきます。
① 中性洗剤でしっかりと本体やふたを洗います。錆止めのワックスを落とします。
② 火にかけて、あまり高温にならないように注意して、水分を完全に飛ばします。
③ ダッチオーブンが熱いうちに、エクストラバージンのオリーブオイルを塗ります。
④ そのまま冷却させつつ乾燥させます。
⑤ 再び加熱し、温度が上がったところで、再度オリーブオイルを塗ります。この時、色が黒く変わるのを確認してください。色が変わらないときは、温度が低すぎると思われます。塗り終わったら火からはずして、一度冷却します。
⑥ 冷えたところで、薄くオリーブオイルを塗って再び加熱します。③~⑥を数回繰り返します。3回程度繰り返すとよいでしょう。
⑦ 温度が上がったら少し多めの油を中にいれ、ねぎなどの香りの強い野菜をいためます。これで鉄臭さを抜きます。
⑧ 野菜をいため終わったら、一度野菜を取り出して、中も水洗いします。
⑨ 再び火にかけ、温度が上がったところでオリーブオイルを再度塗って、乾燥・冷却をして完了です。
① 中性洗剤でしっかりと本体やふたを洗います。錆止めのワックスを落とします。
② 火にかけて、あまり高温にならないように注意して、水分を完全に飛ばします。
③ たっぷりの油を中に入れ、中火を維持します。
④ ジャガイモを細切りしたものを揚げ、塩やケチャップでおいしくいただきます。
⑤ 中の油を抜いて水洗いをします。
⑥ 再度、火にかけ乾燥させて終了。外側のシーズニングを行っていないので錆には注意しましょう。
ちなみに,私が持っている鉄製の鍋はすべてこの方法で,慣らしをやります。大量の油が必要ですがこれを2~3度行なえば,内部の慣らしは完璧に行なえます。ただし,外側の慣らしをしていないので,錆びることがありますし,ダッチオーブンでは,絶対にブラックポットにはなりません。ブラックポットにしたい人は,やめたほうがいいでしょう。
① 材料 スペアリブ(鳥の足でも,豚バラの固まりでも同じことですが・・・)
適当な野菜(たまねぎ・にんじん・じゃがいもなど)
塩・コショウ・オリーブオイル
② 下準備 スペアリブに塩コショウを適量振っておく。これだけです。
③ ダッチオーブンを火にかけます。徐々に温度を上げ,オリーブオイルを大さじ1杯程度入れます。油の温度が上がったところで,スペアリブを投入して焼き色をつけ,いったん取り出します。
油の温度をしっかり上げます。
肉の表面に焼き色をつけます。
④ オーブンに底上げのネットを入れます。これで,焦げすぎるのを防止します。ネットの上にスペアリブや野菜を入れていきますが,肉を中央に置き,回りに野菜をれるようにしていきます。
肉や野菜がダッチオーブンに触れないようにしておくと失敗が少ないです。
⑤ ここまでは強火でかまわないのですが,ここからは中火です。キャンプオーブンの場合には,ふたの上にも炭を置くようにして30分程度,放置しておきましょう。放置といっても,火加減の調整を忘れないように。
この状態です。炭をフランジに沿っておくのがポイントです。
⑥ 材料を入れてから約20分後,焼き上がりを確認します。金属製の串を肉に刺し,引き抜いて温度の確認をします。下口唇に当てるとわかりやすいのですが,中央まで火が通っていれば,熱くなっているはずです。あまり頻繁に開け閉めすると,ウォーターシール効果が薄れて仕上がりに影響しますので気をつけてください。最後にふたを開けるために、リフターが絶対に必要です。
⑦ 皿に肉や野菜を盛り付けて,スープ・ご飯とともに、おいしくいただきます。
ダッチオーブンに限らず,鉄製の鍋は,原則「水洗い」のみです。水を流しながら,亀の子たわしかささらで,中をきれいに洗っていきます。絶対に洗剤やクレンザー・金属製のたわしを使わないでください。
きれいになったところで一度火にかけ,水分を飛ばします。最後に鍋が熱いうちに,薄く油を引いて完了です。これを数回繰り返すと,だんだんと色が黒くなり,いわゆる「ブラックポット」になっていきます。
① もしも,焦げ付いてしまった場合には,一度空焼きをしてから,熱湯をいれてやると落ちやすくなります。冷水を入れると急激な温度変化を起こしますので割れることがあります。
② もしも,火加減がうまくいかないときには,「まめたん」を使ってみてください。炭のようにサイズがばらばらではないので火加減の調整がやりやすいと思います。私は,豆炭4つを上において,下には,5つおくと中火になるような気がします。
③ もしも,火加減を事前に知りたいと思うときは,新聞紙を丸めて中に入れてみてください。新聞紙が焦げるまでの時間が10分以上かかるなら弱火,5分程度なら中火,すぐこげるときには強火になっているはずです。
④ もしも,長期にわたり保管をしたい場合には,ダッチオーブン内部に新聞紙を丸めて詰め込み,もともと入っていた箱に入れて保管します。箱を捨ててしまった場合には,適当な段ボール箱に,新聞紙で包みながら入れ,あまったところにもどんどん新聞紙を入れておきます。そして,できるだけ風通しのよい,乾燥した場所で保管するようにします。