上手くいかないなと感じているところにこそ
 信仰のきっかけがある
 「きっと神様が
 何かを為そうとして下さっているのだ」
 そう思える人は幸い

創世記281

エサウが勝手にカナンの地に住むヘテ人の娘と結婚した事を受け
父イサクはヤコブに同じ過ちを起こさないよう忠告しました
カナンに住む人々は信仰が異なる為
そこから妻をもらう事は望ましくないと
アブラハムの時代から伝えられてきていたからです
そこで始まりの地であるハランに行き
母リベカの実家を訪れる様に
そしてリベカの兄であるラバンの娘を妻とする様に申し伝えました

これによりハランへ向けて出発したヤコブでしたが
道中で夜になったので石を枕にして寝る事にしました
すると夢の中に神様が現れ
アブラハムに成された約束を繰り返します
つまりアブラハムとの約束がヤコブヘと引き継がれているのだと言う事を
本人に自覚させたのです
ここでヤコブは初めて神様の存在をハッキリと認識し
そして畏れを抱いたとあります

さてハランに到着したヤコブでしたが
かつてイサクの妻を探したエリエゼルと同様に土地勘がありません
そこで井戸に集まっている人に聞き込みをすることにしました
するとラバンの娘であるラケルがもうすぐやってくると分かり
ラケルに対して自分がリベカ叔母さんの息子
つまり従弟であるのだと伝えます

その後、家に案内されたヤコブは
伯父のラバンに自分のこれまでの状況を語りました
そうしてエサウの元から逃げ出したヤコブは
やっと泊まれる家を見つけることが出来たのです

さて問題は妻探しの件です
父イサクの言い付け通りラバンの家には来ました
そしてラバンには娘が二人おり、姉がレア、妹がラケルでした
このどちらかを妻とすれば
父イサクとの約束は果たされます
ただ大きな問題がありました
それはお金が無いのです

かつてイサクの妻を探したエリエゼルは
アブラハムから多くの金品を持たされて出発しました
それは当時の習慣として
妻をもらう側が
奥さんの実家へ金品を納めなければならなかったからです
ところが急いで家を飛び出したヤコブは
十分なお金を持っていません
ですので自分から妻を下さいとは中々言い出せないのです

しかし、この後に起こる出来事から察するに
恐らくこの時点で伯父のラバンは
ヤコブに与えられた神様からの祝福の大きさに気が付いていたようです
ですから客人として一時的に迎えるよりも
自分の所で働き手としていてもらうと都合が良いと考えました

そこで、ヤコブに給料を払うから
幾ら欲しいのか?と問います
その時にヤコブは
これ幸いとばかりに妻の件を切り出しました
7年間の労働を納める代わりに
妹のラケルを妻に迎えさせてほしいと頼んだのです
その条件をのんだラバンとの間で契約が成立し
ここからしんどくもあっと言う間なヤコブの7年間が始まりました
聖書には7年が数日に感じたとありますから
それがどれだけ希望に満ち溢れていた期間だったのかが分かります

そうして7年の歳月が過ぎ
約束したラケルと結婚する時期が来ました
ヤコブがラバンにラケルを連れて帰りたいと言ったので
取りあえず宴会を開いて祝いの宴を行う事となります

当時は結婚の宴において花嫁は顔を隠すベールを被りますので
この時にヤコブはラケルがベールを被っていると信じていました
ところが朝になってベールを取ると
それは姉のレアだったのです
話が違うと訴えるヤコブに対して
ラバンはのらりくらりと交わしています

「この地域では姉より先に結婚する妹はいない」と言い
この1週間続く宴会が終わった後でラケルを渡すと伝えました
その代わりに
そこから更に7年間ラバンの元で働いてもらうと迫ったのです
こうして1週間違いでラバンの娘二人を妻にしたヤコブでしたが
その対価は14年間の労働と言う重い物でした

しかしこのレアとラケル
そしてそれぞれの女奴隷を含めた4人の妻から
この後ヤコブには12人の子供が与えられます

最初に子供が産まれたのは姉のレアでした
この頃レアはヤコブから愛されていない事を自覚しており
子供が産まれれば夫が自分を顧みてくれるのではないかと期待しました
そして2人目、3人目と立て続けに生んでいますが
毎回期待している事からもそれは成就していないのでしょう
そこで4人目が産まれた時、レアはただ神を賛美しました

これを苦々しく見ていたのが妹のラケルで
中々子供が産まれない事で姉に嫉妬し
なぜ子供が出来ないのかとヤコブに辛く当たりました
ここでヤコブは
「子供が産まれるかどうかは神様が為される事なのだから
私に言われても知らない」と突き返しています

そこでラケルは
女奴隷との間に生まれる子供を自分の物にしようと考え
養子にはなりますが待望の長男を得ることが出来ました
この様にレアとラケルはヤコブを取り合い
互いに子供の数を競う事で優位に立とうとしていたのです

ある日に姉レアの長男ルベンが
野原で恋なすびを見つけ
母親に見つけた事を報告しにきました
それを見た妹のラケルは
自分の子供にもそれを分ける様に要求します
するとレアは怒り
「夫のヤコブだけでなく、子供の取って来たものまで奪うのか」と
ラケルに迫りました

この辺の描写は
エサウとヤコブが争っていた時を思い起こさせます
兄エサウの家督と祝福を手に入れたヤコブに対して
エサウは「家督だけでなく祝福まで奪うのか」と迫っていましたから
兄の物を奪う弟、姉の物を奪う妹と言う対比構造が見えて
面白いなと感じます
最終的にこの出産競争は妹ラケルの死をもって終わります
末の12番目の子、ベニヤミンを生んだことが原因でラケルは亡くなりました

さて、このヤコブに与えられた12人の息子は
それぞれがやがて”イスラエル12部族”へと分かれていく事になります
そしてアブラハムからイサクへ
さらにヤコブヘと引き継がれたメシヤの家系ですが
この後は誰がその家系を継いでいくのか
聖書を知っている人からすると
直感的にラケルの子供であるヨセフが思い浮かびます
ヨセフは
ヤコブに特別可愛がられたことで兄弟から妬まれ
奴隷として売られ
牢屋に入れられた後に
王様の夢を説いたことで
一気に宰相まで出世するサクセスストーリーが有名ですから
感覚的にはアブラハムからヤコブへの流れを汲むのは
ヨセフと言う印象を受けます
ところがこの後に
メシヤの家系に組み込まれるのは姉レアの第4子、ユダでした

聖書によれば
妹のラケルは容姿が優れていたとありますから魅力的だったのでしょう
ですがラケルは
子供が出来ない事でヤコブに辛く当たっているのに対し
姉のレアは一貫して神に感謝しています
もちろん人間的な争いにより女奴隷をヤコブにあてがったりもしていますが
少なくとも子供が出来ない事を恨んだりはしていません

ですから姉レアは
決して日の当たる人生を歩んでいるとは思えない状況ではありますが
妹に勝る信仰を持っていたことで
神様のご計画に組み込まれる事となりました

「恥は我が物、栄光は主の物」と昔から言いますが
上手くいかないなと感じているところにこそ信仰のきっかけがあり
そして「なんで上手くいかないの?」ではなく
「きっと神様が何かを為そうとして下さっているのだ」と考えられる所に
信仰者としての強さが現れて来るわけです