事が動くまでには 時間がかかるかもしれないが その時が来れば 必ず良い結果になる |
創世記第30章25節より
ヤコブの第11子となるラケルの子ヨセフが誕生すると
ヤコブはラバンに対してカナンの地へ帰らせて欲しいと伝えました
それは20年間をラバンの元で過ごした中で
娘を妻としてもらった以外に何も得られていなかったからです
ヤコブはラバンの家畜を管理し
ヤコブの祝福のおかげでラバンの家畜はとても多くなっていました
しかしヤコブには自分の家畜がおらず
それは自分には何の財産も無いこと示していました
このままでは先行きが不透明である事から
ラバンの元を離れて自立したいと申し出たのです
ところがラバンは結婚騒動の件でも分かる様に
ヤコブを手放すつもりはありませんでした
何せヤコブは良く働き
神様の祝福で家畜がどんどん増え
しかもヤコブには特別な報酬を支払う必要が無いからです
これほど都合の良い人材はいませんから
ラバンとしては何とかしてヤコブを繋ぎとめようと画策します
そこでヤコブに対して
「お前さえ良ければもっと居てもらいたいが
不満があるなら報酬として何でも与えよう」と提案します
そこでヤコブは
「斑(ぶち)とまだらの羊と山羊を分け与えてくれるなら
しばらくは留まりましょう」と切り出しました
斑とまだらの羊や山羊と言うのは珍しいですから
その数は当然多くありません
ラバンもそれは承知していましたから
その程度ならとこれに合意します
これはヤコブにしてみれば自己防衛でした
つまりラバンは後から何を言い出すか分からないので
自分の家畜とラバンの家畜の区別が付く様にしたのです
ところがラバンは手持ちの家畜から斑とまだらのものを息子に渡し
ヤコブに対して白の普通の羊しか無い群れを預けたのです
そしてラバンとヤコブの群れの間に3日の距離を開けて
離れた場所で飼い始めました
これはラバンの謀略であり
要するに普通の羊から突然変異的に生まれてくる斑とまだらの羊を
ヤコブの物にさせようとしたのです
こうして相変わらず時間かせぎをしているわけですね
そこでヤコブは家畜の水飲み場に植物を使って縞模様を作り出し
ここで交尾をさせる事で
斑とまだらの家畜が産まれて来る様にしました
これは当時の考え方の中に
「妊娠中に母親の見たものが胎児に影響する」と
考えられていた為です
するとヤコブの群れから
次々に斑とまだらの家畜が増えて行きました
ヤコブは後に夢の中で知りますが
この時点で神様が介入し
ヤコブの物となる家畜が増える様に手を差し伸べていたわけです
こうしてやがてヤコブの財産はラバンを上回るものとなりました
こうなると穏やかでないのがラバンです
ある日ヤコブはうわさで
「ヤコブの財産が増えているのはラバンの物を奪ったからだ」
と言われているのを聞きました
またラバンのヤコブに対する態度も悪くなって行きました
この時に神様がヤコブに対して
「私が共にいるので、カナンの地へ帰り父の元へ戻りなさい」と告げます
そこでヤコブは
人気の無い場所へ妻のレアとラケルを呼び出し
伯父ラバンの元を去る計画を伝えました
娘からすれば自分の父親を裏切って逃げる訳ですから
その事について覚悟を求めると
レアとラケルは二人とも同意し
父からすれば自分たちは他人であると言い放っています
そこでいよいよラバンの元を去る事が決まりました
逃げるタイミングは
ラバンが羊の毛を狩る為に家を離れている瞬間で
この時にラケルは
ラバンの家からテラビムを盗んだと書いてあります
このテラビムと言うのは偶像の事であり
家の守り神、日本で言えば神棚みたいなモノとなります
ヤコブたちが逃げ出して3日後
ラバンは彼らが逃げたことを知りました
ラバンは慌ててヤコブたちを追いかけた所
7日後にヤコブの群れに追いつく事となります
本来であれば怒り狂って一悶着ありそうなものですが
事前に神様がラバンの夢に現れて
手を出さない様に忠告していたので
ラバンはヤコブに対して荒ぶる事無く接しています
ラバンの争点は1つでした
つまり逃げた事は神様からの忠告があったのでもう良いとして
なぜテラビムを盗んだのかと言う点です
ところが盗んだのはラケルであり
そのことをヤコブは知りません
ですから身に覚えのない罪を問われてヤコブは怒りました
自分が今まで如何に搾取され
奴隷の様な生活を強いられてきたか
その事を告げるとラバンにも言い分がありました
それはヤコブの妻やその子供
そして管理している家畜も全て自分ラバンの物である
それは出エジプト記21章にある奴隷契約をみると分かります
ですがラバンは娘と孫の為に手を引くと言いました
ただし石塚を築いて記念碑とし
お互いにこれを超えて近付かない様に
それを神の前で約束し神によって監視してもらおうと・・
これでヤコブとラバンは決裂し分かれる事となりました。
かつてイサクがリベカと結婚する時
リベカが家を離れる事についてラバンは
「神様の決めた事に対して良いも悪いも無い」と言っていました
ところがいつの間にかラバンは占いをする様になり
そして最終的に神様から心が離れ
ヤコブと、ヤコブによって増える財産に執着する様になっていたのです
この話を通じて分かることは
神様は常に私たちの置かれている現状を知っていて下さり
ラバンに根回しした様に
わたしたちにとって悪いことにはならないように
先回りして手を打って下さるということです
もちろん円満解決とは言えなかったかもしれませんし
本当はラバンと和睦して
認め合って別れる事が出来れば一番かもしれません
ですが結果的にヤコブは
莫大な財産と妻子を連れて父の元へ帰ることが出来た
事が動くのには時間が掛かるかもしれませんが
その時には必ず良い結果になると信じる事が出来れば幸いです