音が伝わる為には空気が必要な様に
   神様の御業が為されるために
   用いられる存在が必要になる
   モーセの他に用いられたのは
   兄のアロンであった

 

出エジプト記第418節より

いよいよエジプトへ向かう事になったモーセですが
まずはこれまでお世話になった
舅(しゅうと)であるエテロの許可をとりに行きます
ただその理由は
「エジプトに残した家族の安否が知りたい」
と言うものでした
モーセはエジプトから
逃げる様にしてミデアンの地まで来ましたから
当然別れの挨拶もせずに飛び出しているのです
これからモーセは
本来神様からの指示によって
同胞を救う為にエジプトへ行く訳ですが
エテロにはその事は伏せられていました
ですからエテロはモーセに対して
「気を付けていってらっしゃい」と言う程度のニュアンスで
返事をしています

家を出発したモーセは
ミデアンの地から出る前に
神様からある事を示されました
それはかつて40年前に
モーセの事を捕まえようとしていたエジプトの王様や
モーセが殺したエジプト人の関係者等は
皆死んでもういないと言う事です
ですからモーセは安心して
妻子をロバに乗せてエジプトの地へ赴きました

モーセの手には
神の杖が握られています
この杖は羊飼いの杖です
羊飼いの杖は
羊飼いが道の無い放牧地を歩く時の支えとなり
また持ち手の部分が特殊な形状をしており
穴に落ちた羊を助けたりする時に使ったそうです
人間的に見ればただの杖ですが
この杖は神様から
「なんぢこの杖を手に執り
之をもて奇跡をおこなふべし」
と言われていますから
モーセから見れば神の杖な訳です
実際にこの後
モーセはこの杖を使って紅海を割り
岩を打って水を出しと
杖は神の力を示す為に用いられています

ここで神様はモーセに対して告げました
エジプト王に謁見し
神様がモーセに授けた奇跡の技を全て見せる様にと・・
ただし王様の心を神があえてかたくなにするので
イスラエルの民がエジプトを去る事を許されることは無い
その時にエジプト王に告げよ
私達の主がこう言っている
「イスラエルは私の子供、私の初子である
私のイスラエルを開放し、私の元に来させなさい
もしこれを拒むなら、お前の子、そしてお前の家の子を殺す」と

これらの技を託されたモーセはエジプトへ向かいますが
道中で神様はモーセを殺そうとしたとあります
これだけ用い
目をかけて送り出したモーセを殺すとは
一体どう言う事なのでしょうか?

これはこの直後に
モーセの妻チッポラがとった行動を見ると分かります
チッポラは討たれようとするモーセを見て
急いで息子に割礼を施しました
少し先の話ですが
出エジプト記184節を読むと
モーセには長男ゲルショムだけでなく
次男エリエゼルがいると分かります
ですから420節において
「子供等」と書かれているのはそれが理由です
しかしチッポラが割礼を施したのは
「男子」としか書かれていませんので
兄弟2人の内、恐らく次男のエリエゼルには
割礼が施されていなかったと考えられます
創世記1714節を見ると
「割礼を受けざる男兒即ち
其陽の皮を割ざる者は
我契約を破るによりて其人其民の中より絶るべし」と
神様がアブラハムに告げています

つまりこれから
イスラエルを率いて行くモーセの子供が
割礼を受けていないと言うのは一大事であり
その割礼を施さなかった責任を
モーセに取らせ様とした訳です
ただチッポラがこの事に気が付き
そして正しい対処をした事でモーセは許されました
この時にチッポラは神様を
「血の夫」、口語訳では「血の花婿」と表現しました

さてモーセに与えられた使命は何でしょうか
ただイスラエルの民を率いて
エジプトを脱する事でしょうか
それだけでは無いですね
モーセに与えられた使命は
イスラエルの民をエジプトから率い出し
そして彼らをカナンの地へ導くことです
更にカナンの地へ導くと言うのは
物理的な土地に導くと言うだけでなく
400年間のエジプト生活で薄れてしまった
本来の主に対する信仰を取り戻す作業も含まれます
ですからその責任は重大であり
もちろん神様の全面的なバックアップがあるとは言え
そこに不安は付き物です

しかも「息子に割礼を施していなかった」
と言う1点の過ちで
危うくモーセは命を取られる所でした
それほどに神様との約束と言う物は
厳格に運用される物であり
例えモーセと言えども
「不適」とされたなら代わりが立てられる
つまり悪い言い方をすれば
「代わりがいくらでもいる」
と言う程度の存在である訳です
しかし一方で神様からの約束は
必ず履行されるとの希望があります

なので神様のご計画が進む時
必ずその媒介として役割を与えられる人間が現れます
音が伝わる為には空気が必要な様に
神様の御業が為されるために
用いられる存在が必要になるのです
その存在には神様からのバックアップが与えられ
装われる事で大役を果たしていきます
それを事前に知る事は難しいですが
神様の御旨であれば
驚くほどスムーズに事が進んでいき
しかも振り返った時に
そういうことだったのかと納得があるのです

神様から許されたモーセですが
この一件の裏で
同時に別の人が招かれていました
それがモーセの兄、アロンです
神様はアロンに対して
「荒野でモーセを迎えなさい」と命じ
アロンはそれに従ってホレブの山へ向かっていました
そして2人は40年ぶりに再会を果たし
その際にモーセは
今回与えられた使命や神の業について
全てを伝えています
舅のエテロとは随分違う対応をしていますが
それはアロンに課せられた使命を果たす上で
必要な情報であるからです