今日は旧約聖書をお休みして
新約聖書の『コリント前後書』について
何が書いてあるかを
ザックリお話ししたいと思います

コリントの教会は
パウロが伝道旅行を行う中でできた教会ですが
次第に内部で
多くの問題を抱える様になっていきました

コリントはギリシャ南部に位置する
交易の中心地であり
多くの人や文化・風習が
入り乱れる都市でもあったからです
そこは当然大きな歓楽街も抱え
新宿歌舞伎町みたいなイメージの場所なのですが
最初は一致していた教会内にも
小さなトラブルが頻発するようになり
信者同士が互いに裁判で訴えたり
自分の信仰を競う様になったり
旧来のユダヤ教の教えを持ち込もうとしたりと
混乱が広がっていました

そこでパウロは
教会内の問題を諫(いさ)め
軌道修正をうながす為に手紙を書きます
これが『コリント人への手紙』
文語訳聖書だと『コリント前後書』になります

ここで特に問題になったのは
教会内の”派閥争い”でした
当時コリントの教会には定期的にパウロだけでなく
アポロと言う伝道者が訪れており
パウロとアポロはお互いに信仰を認め合い
神学的な知識の深さを称えあう関係性にありました
しかしパウロが論理を積み上げて
懇々(こんこん)と語るスタイルだったのに対し
ギリシャ出身のアポロは雄弁に福音を語った事で
コリントの教会内部に「パウロ派」と「アポロ派」が
生まれてしまいました

どちらも同じ福音を語り
同じ思いを伝えようとしていた訳ですが
その伝え方の違いが受け止め方の違いとなり
教会内に分裂を引き起こしたのです

そこでパウロはこの手紙の冒頭
コリント前書1-1013
「キリストが分裂したのか」
「パウロが十字架にかけられたのか」
と皮肉を書いています

そして有名な御言葉
「十字架の言葉は滅ぶる者には愚かなれど…」を述べ
信仰すべき対象がパウロでもアポロでもなく
イエス様である事を強調している訳です

パウロもアポロも所詮は人間に過ぎず
福音をのべ伝える使命を
与えられた存在ではありますが
決して神の立場を受けた訳ではありません
これによって
派閥争いが全くの無意味であると説いたのです

ところがこれで事態は収拾した訳でもなく
今度は
「パウロは手紙だと強気だが
実際に見ると弱腰だ」
との批判がわいてきました
そこでパウロは2通目の手紙
つまりコリント後書を送ります
この中で
「弱いと言うのは
キリストの働く余地があると言う事だ」と説き
弱さを受け入れる事の重要性を説いています

この様にコリント前後書と言うのは
人間の争いによって混乱するコリントの教会の
秩序を取り戻し
またパウロと言う人が決して神ではない
弱さを抱えた人間である事を強調し
あくまでも信ずる対象は
イエス・キリストであると言う事を
懇々(こんこん)と説いている訳です