神の命令により イスラエルの民に対する人口調査が行われた際 ”どんな部族の誰の子であるか”を整理した 戸籍登録が行われることとなった背景には アブラハムから始まる「神の祝福の約束」が イサク、ヤコブへと受け継がれ 更に次世代へとつながっていくことを 確認する目的があった 更には イエス・キリストによる救いが与えられた後 その祝福の約束は異邦人にも及び 神の守りと助け、導きと平安が 常にある者とされることになる |
民数記略 第1章より
前回まで出エジプト記を通じて
モーセとイスラエルの旅路を追ってきました
神様とイスラエルの民の契約
金の子牛像事件による契約の危機
モーセのとりなしによる危機回避と展開して行き
シナイ山におけるイスラエルの民の再出発により
出エジプト記を終えました
今日から民数記略に入ります
民数記略は引き続き
シナイ山を出発するイスラエルの旅路を
描いていくわけですが
そもそも創世記から始まり
出エジプト記、レビ記、民数記略、申命記と言う5つの書は
モーセが書いたと言い伝えられています
それぞれの名前は
日本人が翻訳する際に名付けたもので
本来のタイトルがヘブライ語で与えられており
例えば創世記は『初めに』
出エジプト記は『名前』と言うタイトルでした
創世記は分かり易いですが
出エジプト記の『名前』と言うのは
第3章において始めて
神様がその名前を示した所に起因しています
そして民数記略の原題は
『荒れ野にて』と言うタイトルであり
文字通り荒野を旅しカナンの地を目指す
イスラエルの民の旅路が描かれる事になります
民数記略のアウトラインを整理しておくと
最初に今からお話しする人口調査があり
その次に出エジプトからここまで旅をして来た
イスラエルの旧世代が神様に反抗していく物語
そして最後にイスラエルに産まれた新しい世代が
カナンの地へ到達し平定する準備を整えると言う
3つの大まかな内容で構成されています
出エジプトから2年が経った丁度今頃の時期
神様は幕屋の中にいるモーセに対して次の様に告げます
「各12部族それぞれに、かつ各家族毎に
戦いに出られる成年男子の数を調べなさい
あなたとアロンがイスラエルの民に指示し
各部族から選ばれた者に調査させなさい」
そしてこのタイミングで選ばれた者の名前が
聖書に列記されています
実際にモーセ、アロン、族長らは
成年男子を集めて記録に残します
その結果、聖書には
各部族の成年男子の人数が記載されており
これらを全て足し合わせると60万人程度となりました
当時強大なエジプト王国の総人口でさえ
推定で300〜400万人と考えられていますので
この時のイスラエル民族の多さ
そして戦力の大きさがよく分かります
ただしこの調査結果にはレビ族が含まれていません
それは神様からの指示により
レビ族の総人口は数えてはならないとされた為です
レビ族は兵役も免除され、数も調べられません
その代わりに幕屋を管理し運営する仕事が割り当てられました
その為レビ族は幕屋の近くに住み
移動する際にはレビ族が幕屋を解体して運びます
それ以外の11部族の人間が幕屋に触れると死が与えられました
こうしてレビ族は
イスラエルの部族の中で特殊な存在となり
神様と人間の間に入って仲介を為すことになったのです
さて、人口調査を終えたモーセらに
次の仕事が与えられます
それは野営地における12部族の配置を調整する事でした
神様の指示は
野営地の中心に幕屋を建て
その周囲に部族ごとに旗を立てて
野営するようにと言う事でした
こうして各12部族が幕屋のどこに野営したのかが
聖書に記述されています
結局のところ、民数記と言うタイトルの元となった
イスラエルの人口調査は”戦力の確認”でした
これから始まるカナンの地までの旅路
そしてカナンの地を平定する戦い
そう言った中で戦える兵力を
確認する必要があったのです
またこの調査を通じて
各部族間の力にどの程度偏りがあるのか比較、自覚させ
また旗を立てて野営する事で
自分達が部族の一員である事を強く意識させます
例えば自衛隊だけでなく世界中の軍隊には旗があり
それは最低でも中隊規模から部隊の旗が用意されます
中隊と言うのは200〜300人規模の部隊ですが
この旗を通じて
自分達が部隊の一員であると言う誇りを持たせ
またその旗の名誉に恥じない行動を取ると言う
アイデンティティの確立に用いられるのです
さて第3章に入ると少し時間がさかのぼり
シナイ山でモーセが神様と相対していた頃の話となります
元々アロンには4人の息子がいました
長男ナダブからアビフ、エルアザル、イタマルとなります
ところがこの内で長男ナダブと次男アビフは
モーセが臨時で建てた会見の幕屋で
神様が指定した火を用いなかった罪により殺されてしまいます
これはレビ記10章で描かれていますが
ナダブとアビフは祭祀として
生贄を捧げる儀式を行っていました
ところが神様に捧げる香に使用する火が
神聖なものではなかった事で罪に問われ
神様がもたらした炎によって
2人は焼き殺されてしまいます
モーセはアロンの親族を2人呼び
殺されたナダブとアビフの遺体を片付けさせました
そして残されたアロンの2人の息子
エルアザルとイタマルに対して
祭祀を交代し、儀式を完了させるように告げます
更に2人には
「油を注がれたる者であるから
兄の死を嘆き悲しんではいけない
幕屋から離れず勤めを果たせ」と告げるのでした
このモーセの姿勢は冷たい様に見えますが
しかしその裏には神様が示された想いがありました
レビ記10章3節にある通り
「神様に近付く者通じて神様の清きを表し
全ての人々の前で栄光を現す」と
つまりこの時代は
律法を守る事が神様への清きを示す手法です
その律法を守る事で
神様の偉大さを周囲の人に示し
その姿・振る舞いを通じて
神様がどれだけ素晴らしい存在であるかを
周りに示すわけです
ですから神様に近付きながら、
こで律法を守らない者は
この神様の想いに沿わないとして処罰されたのです
話を戻して、アロンと遺された2人の息子は
祭祀の仕事を担っていました
ここで神様はモーセに告げて
全てのレビ族をアロンの仕事の手伝いに付ける様指示します
幕屋で行われる各種の儀式だけでなく
幕屋その物の管理や清掃、修繕と言った作業まで
全てをレビ族で完結させる様に告げました
また同時にレビ族以外の人間が幕屋に近付くと
死が与えられると忠告しています
これにより神様へ捧げものをする場合には
全てレビ族が仲介していく事になります
更に続けて
「レビ族をイスラエル人の長男全員の身代わりとする」と告げ
それに伴い生後1か月以上のレビ族の男子を
数える様に指示します
このレビ族の数は22,000人でした
同時にイスラエルの中で
生後1か月以上の長男を数えると22,273人でした
これにより全てのレビ族の男子は
イスラエルの身代わりとして聖別されました
こうして民数記略の最初のアウトラインである
人口調査が行われます
人口調査と言うと
単に人数を数えたと言う様に感じますが
新共同訳では
「戸籍登録しなさい」と書かれています
つまり単に20歳以上の男子を数えたのではなく
その人が
”どんな部族の誰の子供であるか”を整理したものでした
ではなぜ家系を管理する必要が有るのか
それはアブラハムから始まるイスラエルの歴史
”神様がアブラハムに、イサクに、ヤコブに約束した
保障の範囲を確認する為”でした
これから生まれる世代が
自分達もアブラハムに連なる者として自覚をして行く為に
そして自分が所属する事を約束された安心できる居場所を
明らかにする為に行われたのが人口調査でした
この調査が行われ家系の管理が為されたからこそ
イエス様が約束された家系から現れた事も確認できるわけです
ルカ伝10章20節では
イエス様が派遣した70人の伝道者に対して
「あなたがたの名が天に記されている事を喜びなさい」
と言っています
この伝道者たちは
イエス様の名を出すことで悪霊が退く事を喜んだ訳ですが
イエス様はそんな表面的な事ではなく
もっと本質的に
「神の国に連なる者が受ける、神様からの保障」を喜びなさいと
伝えているのです
私達は異邦人ですので
旧約聖書に描かれるイスラエルの家系図に入る事は出来ません
ですがイエス様を通じて
水と霊(洗礼と聖霊)による救いが与えられ
その結果として
神の国に名を記された者となりました
そこにはイエス様からの守りがあり、助けがあり、導きがあり
平安を守るとピリピ書にも書かれています
どんな時代が来ても揺るがない神の約束があることは
本当に有難いことだとつくづく思う次第です