口では 「例え家に満ちる金銀を贈られても 主の言葉に逆らう事は出来ません」 と言いながらも 本心は違う所にある それがバラムという人の真の姿であり それを神は様々な角度から指摘し そして本人に突きつけている |
民数記略 第22章 バラクとバラム(前半)
前章でヘシュボンとバシャンと言う
2つの国を破ったイスラエルの民は
その圧倒的な力と数を
周辺諸国に示しました
これを目の当たりにしたモアブの人々は
「このままでは自分達も危ない
しかし正面から戦っても勝てない」と考え
対策を講じようとします
そこでモアブの王様であるバラクは
使者を送り
ベオルの子バラムの協力を
得ようと画策します
このバラムは
考古学的な資料にも名前が残っており
この地域では有名な
実在する呪術師でした
バラクから遣わされた使者と
ミデアンの長老達は、バラムに対して
「エジプトから上って来た群衆の
脅威を取り払う為
モアブに来て彼らを呪って欲しい」
と依頼します
つまり呪いによって
イスラエルを弱体化させ
その上で軍事力を投入して
イスラエルをモアブ周辺から
排除しようと試みたのです
ここでモアブの王様が
なぜミデアンの長老を遣わせたか
と言う事ですが
この後31章で描かれる様に
モアブとミデアンは
対イスラエル共同戦線を張っていました
ですからバラムは
2カ国の連合から協力要請を受けた事になります
ここでバラムは
一旦返事を保留しました
そして訪ねて来た使者に対して
「今夜は泊まって行きなさい
その上で主が私に告げる内容を
あなた達に教えましょう」と伝えます
こうしてバラクの使者達は一泊しますが
その夜バラムの下に神様が現れ
「あなたは彼らと共に行ってはならない
彼らを呪ってはならない
イスラエルは祝福されているからだ」
と制止しました
これを受けてバラムは
バラクの使者達に
「自分の国へ帰りなさい
主は私があなた達と共に行く事を許しません」
と告げました
バラクの使者達はモアブへ帰り
バラクへバラムが同行を拒否したことを伝えます
そこでバラクは
もっと地位の高い高官を使者として送ります
使者は再びバラムに対して同行を願い出ますが
バラムは
「例え家に満ちる金銀を贈られても
主の言葉に逆らう事は出来ません
あなた方も今夜はここに泊まり
この上で主が何とお告げになるか
確かめさせて下さい」と伝え
返事を保留しました
この日の夜に神様は
バラムの下に再び現れ
そして
「その者があなたを呼ぶのであれば
立って行くが良い
ただし私の言葉以外を語ってはならない」
と条件付きでモアブ行きを許しました
こうして翌朝にバラムは旅の準備を整え
バラクの使者と共に出発します
ところがバラムが出発すると
神の怒りによって御使いが送られ
バラム一行の行く手を阻(はば)む様に
立ちふさがりました
御使いは抜身の剣を片手に持っていますが
この時点でバラムの目は閉じられており
その存在を認知出来ていません
しかしバラムの乗ったロバには御使いが見えており
ロバはそれによって進むことを拒否しました
突然のこの動きが理解できないバラムは
ロバを撃って進む様に促します
しかし御使いが近付いて来て
完全に行く手を阻んだ為
困ったロバはうずくまってしまいました
これを見たバラムは怒りに燃え
更にロバを二度撃ちます
ここで神様はロバの口を開きました
ロバは
「なぜ三度も撃つのですか」とバラムに問い
バラムは
「お前が勝手なことをするからだ」と答えます
ロバは続けて
「これまで私に乗って来たじゃないですか
今までにここまで酷い仕打ちをしたことがありましたか?」
とバラムに問い
バラムは「いや、無かった」と答えます
ここで神様がバラムの目を開いた事で
目の前に抜身の剣を持った御使いが
立っている事に気が付きます
御使いは
「なぜこのロバを三度も撃ったのか
このロバは私を見たから
危険を避ける為に立ち止まったのだ
もしロバが私を避けなかったら
ロバは生かしていても
あなたを殺していただろう」と問います
これを受けてバラムはあわてて
「ロバを撃ったのは私の間違いでした
あなたが行く手に立っている事を知らなかったのです
もしも意に反するのであれば引き返します」
と釈明しますが
御使いは
「この人達と共に行きなさい
ただし私の言葉以外を語ってはならない」
と再度釘をさしました
このバラムと言う人は
イスラエルではない民族の出身です
ですから聖書的に言えば異邦人ですが
そのルーツを見ると
決して遠い存在ではありません
と言うのも
バラムが住んでいたペトルと言う場所は
アラム人の町であり
このアラム人の始祖であるアラムと言うのが
セムの直系の息子です
アブラハムもまたアラムの末裔であり(申命記26-5)
同じアラムの流れをくむ者同士なのです
従ってイスラエルと全く関係がない人とも言い切れず
遠い親戚くらいの立ち位置でした
先に述べた通りバラムは
イスラエルの神ヤハウェの声を聴く事が出来ましたが
別に専属の預言者と言う訳ではありません
あくまでも当時数多あった
様々な神とやり取りをする呪術師です
ただしヤハウェに対する恐れは持っていました
ですから「モアブに行ってはならない」
と言うメッセージを受け入れたのです
ところがバラムの心変わりは
神様が見抜いていました
最初に神のお告げを受けたバラムは
「主は私があなた達と共に行く事を許しません」
と言ってバラクの使者を追い返します
しかし2度目により高官の使者が現れた時
本来なら同じ様にすぐ追い返すべきでした
ところが
「もう一度主の意向を確認します」と言って
あわよくばモアブ行きが許される余地を
探していたのでした
そして決定的なのが
ロバに対する仕打ちであり
三度ロバを撃つと言うのも
モアブへ行きたい
そこで多くの褒美(ほうび)を受けたい
大きな仕事を為して名声を得たい
そういったバラムの本心とあせりが
透けて見えていたのです
口では
「例え家に満ちる金銀を贈られても
主の言葉に逆らう事は出来ません」
と言いながらも
本心は違う所にある
それがバラムという人の真の姿であり
それを神様は様々な角度から指摘し
そして本人に突きつけているのでした
目の前に御使いがいるのに
それが見えず
あせりによってロバを三度打った
そして三度目に目が開かれ
目の前に御使いがいると言う事を
やっと認識したバラム
この構図を見た時に
全く同じ描写を思い出しました
そう、ペテロです
イエス様が十字架にかけられる直前
予言通り
三度「私は知らない」とイエス様を否定し
そして三度目の否定と同時に
鶏の鳴き声で自分のした事に気が付かされる
聖書には
この「三度の否定」という
「人の弱さ」を描いた描写が多く登場します
サムソンが自身の弱点につい
て三度ウソをついたが
四度目にバラしてしまい
自身がとらえられる原因を作ったこと
イエス様がサタンからの誘惑を
三度拒否し勝利したこと
聖書における三度の否定というのは
その人の奥底にある本音が
暴かれる瞬間であるという事です
バラムは人間の堕落の象徴であり
お金に目がくらんで神を裏切った人間…
と見做(な)すのは簡単です
しかしそうやってレッテルを貼り
切り離してしまうと
「自分ごと」としてとらえられなくなる
聖書は弱さを乗り越えた英雄の物語ではなく
弱さを抱えた人間が
弱さに溺れ、振り回され
それでも何とか神に立ち返ろうと
過ちを繰り返した人の物語なのです
バラムは本来
イスラエルに関わることなく
一生を終えるはずでした
それが異邦人でありながら
神様によってとらえられ
イスラエルの為に用いられ
ある意味で
突然さらわれて
神とイスラエルの物語に巻き込まれた人
でもあります
その結果として
神の指示という霊的な権威と
王の指示という人間的な権威の板挟みとなり
その中で揺れ動き
そして次回続きをやりますが
最後にはイスラエルに対して弓を引いた
それは教訓として学ばなければならないと同時に
自分も同じ立場に置かれたら
きっと間違える可能性が高いという事を
我々に突きつけているわけです
そしてもう1つの視点
神は「バラムの様な人でも選んだ」
と言うことです
神の選びというのは
清い人である必要はなく
望んで選ばれるものでもなく
神の摂理に基いて降って来るもの
誰もが突然
舞台に引き上げられる可能性があり
その時に判断を誤らない様に
整えておかなければならないという教訓を
教えていると言えます
私たちは中々振り返ってみなければ
「あれが選びだったのだ」と
気づかない部分ではありますが
仕事で、私生活で、様々な中で
迫られる小さな決断が
実は神の物語の中に置かれているのだと
信じて進んでいきたいものです