いいかげんな話



<12.新入社員研修>

4月1日、息子たち新入社員は入社式を終え
その週は、本部での研修や
お寺での一泊二日の修行研修に出かけた

息子にとって特にお寺の方は全く未知の世界だったので
まあ色んな意味でいい勉強になったようだが
同じ時に一緒になった某社の新入社員達は二泊三日の研修であることに加え
夜中もずっと修行があったと聞いて(実際に夜中に声が聞こえていた)
息子たちは同情し、更には敬意を表し
「あんなに頑張っているんだからいつか彼らの会社の製品を買ってあげよう」
と話したという
ほんの短い間とはいえ、そして他社の人々であっても
修行の場を共にした者たちとの間には連帯感が生れるものだと
そんな体験ができたのも良かったかもしれない
また、同期の間にすでに助け合いや思いやりといった感覚が自然にあるところも
「ゆとり」とか「草食系」とか呼ばれて侮られている彼ら世代が
実は人間的にはかなり良いものをもっているのではないかと
少なくとも、人の足を引っ張って自分だけが良い思いをしようとするような
一人勝ちの時代は去りつつあるのではないかと
わたしとしては以前から密かに期待しているところだ

さて、厳しいお寺での修行ではあったが
実はお坊さんも普段はそこまで堅苦しい事はやっていないのかな?
というようなこともあったらしい
例えば、いちいち細かい規定がある食事作法についても
実際に見本を見せてくれる人が「どっちが先だったかな?」と迷う場面があったり^^;
まあ修行と言っても、本当にとことんやったら追い詰められてしまうので
ちょっといいかげんなところがあるくらいでちょうどいいのだろう
その方が人間らしくてホッとするし
本気で修行すれば、最後に開ける「悟り」は
「自分には力がない」ということになると思う

昔はわたしも随分と修行的な考え方をしていたから
その先にあるものはよく知っている
でも、何でもとことんやってみなければわからないので
一生懸命やることは決して無駄ではない
ただ、期待した結果が出るわけではないということ、、

研修も終わり
それぞれの配属先に分かれていく入社2週間目の初日
「9時までに出社」と言われた彼らは
とりあえず同期みんなで8時半に出社してみた
ところが、その時間にはもう社員全員による掃除が始まっていたので
翌日からは8時に出社するよう切り替えたのは言うまでもない
何しろ職場のトップ(校長)が毎朝一番に出社して掃除をし
管理職以下みんな”上へならえ”でこの職場は動いているらしいが
上の役職の人がいつも怒られ役で
一方、新入社員に対しては
先輩や上司が資格試験の勉強や仕事のコツなども手厚くサポートしてくれるなど
上に厳しく下に優しいシステムになっているところに
息子はいたく感銘を受けた

まさに、山本五十六の名言
”やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ”
を、地で行くような会社だな・・・と

入社早々には
「新入社員は最初の3カ月が勝負。
そこで良い印象があれば、後に多少ミスがあっても許される」と
トップからの話があったが
その後も
「どんな職種も数年もするとあきる。どこへ転職しても仕事とはそんなものだ」
「優良企業を探すよりも、自分のいる企業を優良にするよう考えた方がいい」など
公安がらみの関係上、完全縦割りの会社ながら、折にふれて
厳しくするところと緩くていいところを具体的に教えてくれるなどかなり良心的で
そもそも息子はこの会社の良心的な話に感動して入ったのだから
その話にウソはなかったと、だんだん確信していくのだった
                              


(2014.1.21)



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