いいかげんな話



<理想と現実 3〜自分でやってみることの意義 2>

最近テレビで「冷凍卵」を作る情報を仕入れた母は
ネットでも調べながら早速やってみている
冷凍した卵の黄身は過熱しなくても”もっちり”した食感になり
しょうゆをかけて20分もすると、美味しいしょうゆ漬けの出来上がり

そもそも母がこの冷凍卵に興味を持ったのは
凍らせた卵ならパンに入れて焼くことができると思ったかららしい
娘がパン屋でバイトをしていた頃に売っていたカレーパンの中に
トロリとした卵黄が丸ごと入っているのをみて
どうやって黄身を壊さず入れているのかが疑問だったのだ

まだ実際にこれを入れたカレーパンは作っていないが
とりあえず黄身を4個しょうゆ漬けで食べたので
白身が4個分余っていた
そこで、卵3個分を加えて、白身多めのシフォンケーキを作る

普通のレシピの時よりかなり膨らんだ
できたてはもっと膨らんでいるが、写真は冷めて落ち着いたところ
あ、表面が一部はがれているのは、わたしがツマミ食いしたから^^

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シフォンケーキ作り歴10年以上の母だから
ケーキ作りそのものは失敗しないけれど
今回はいつもと違うとの不安もあってか
型から出すのが上手く行かなかった

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母は、失敗しないように!とあせるとパニックになりやすく
これはわたしもよく似ているので気持ちはわかる
だが、失敗を恐れていたのでは何もできないから
「何でも思い切ってやってみようよ」が、わたしの口癖になっている

前回
”何でも自分でやる一番のメリットは
自分が”素人”であることを教えられる所にあるんじゃないか”
と書いたが
それをマイナス思考でとらえると
自分が”素人”だと分かった時に、だからダメなんだ、、と落ち込み
せっかく今できている事さえも無意味だと思えてしまうかもしれない

それでも素人には素人なりに出来ることがあるのだから
自分自身が楽しんだり
あるいは人のためにも、そこそこに役に立つこともあれば
それが生きがいとなって、自分を活性化させてもくれるだろう

来月80歳になる母は
この頃はいつも「寝るか」それとも「何かやるか」の間で揺れているという
今時80歳で元気なお年寄りはたくさんいるように見えても
わたしは今の自分がすでに老化を感じている事を考えると
80歳の人々は相当体の不調を抱えて暮らしていると思われる
だから、母の言うような状態の人は結構あるんじゃないだろうか
ただ、みんな口をそろえて言うのは
「寝てばかりいたらダメになる、だから何かしないと・・」ということ

母がうちで同居するようになって14年
初めのころはまだ60代だった母に
何かやりがいになることを見つけてほしいと、わたしは願っていた

豆腐を作り、石けんを作り、俳句を作り
編み物をしたり、野菜を作ったり、お菓子やパンも作った
その中で今も続いているのが
石けん(廃油)、野菜、お菓子やパン作りだ
これらが母にとってちょうどいい趣味となり
家族のためにも役立っている

今朝起きると、母は中華まんとピザまんを作っていた
manju2015112.jpg

子どもたちの朝食に間に合うように、前日から生地と中味を作っておき
今朝は早起きして、蒸したてを食べさせる
「やっぱり蒸したては美味しいね〜」
その言葉が何よりの励みだ

母はお正月以降パン作りに熱中していて
できれば、ご飯を炊く感覚でパンが焼けるようにと
どうすれば時間を短縮できるか
要領よく作業する方法を毎日考えているようだ

カレーパンの中味のカレーが入れにくいのでいつも難儀するけれど
ネットで調べて、パン粉を混ぜる方法も覚えた
10年以上前に覚えたパソコンで自由に検索し
「みんな色々面白い事を考えてやってるね」と感心しながら
素人なりに熱心に研究している人々に触発されて
自分もまた熱心に考えている

こうして母の場合、色々自分でやってみることで
”失敗を恐れず進む勇気”を学び
”前向きに生きる材料”を得た
今も思考はマイナスになりがちではあるものの
パンのことを一生懸命考えている間は
余計な事を考える暇がない
また、春になれば野菜の方も忙しくなるから
更に気持ちも生き生きするだろう
心が上向くと体調も良くなることは
母の様子を見ているとよくわかるし
体が衰える一方の年代だからこそ、心の管理は重要だと思う

年をとっても、何かできることがある
80年も生きてくれば、振り返る過去の量が多すぎて
辛かったことを恨み、若く元気だった頃をうらやみ・・と
そればかり考えるときりがないから
少しでも前を向く材料を持っているのは幸いだ


(2015.1.12)



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