いいかげんな話



<7.石けん生活の話 1>

わたしはこのサイトを開設した当時から手作り石けんについてのコンテンツを載せている
わたしにとっての石けんとは
アトピーに悩まされていた娘にとっても
さまざまな化粧品や洗剤類で肌荒れを起こすわたし自身にとっても
救世主のような存在であったからだ

そもそも、わたしが石けん生活を始めるきっかけとなったのは
今から15年以上前に「あぶない化粧品」という本のシリーズを読んだことで
化粧品を変えてもシャンプーを変えても一向に肌の状態が改善されないのは
それらに含まれる化学物質の影響と
更には基礎化粧品を使いすぎたために”累積性皮膚炎”を起こし
皮膚が自ら潤う力も再生する力も失っていることに気づいたからだった

当時はまだ30代で、今よりずっと若かったのに
石けんで顔を洗った後の肌は何時間たってもつっぱったままで痛くなっていく
それから数日間は顔が痛いほどつっぱる状態が続き
ある日ひび割れるように皮がむけはじめ
3週間たった頃には一皮むけてきれいな皮膚が出てきて
それからは化粧水も何もつけなくても痛くない肌に生まれ変わった
その過程は本に書いてある通りで
それまで化粧品の害と言えば、厚化粧によって皮膚呼吸できないとか
脂やけを起こしてシミになることだと思っていたのが
怖いのはむしろ基礎化粧品の使いすぎであることを知ったのだった

本の中で、合成洗剤や化粧品に含まれる石油系の合成界面活性剤の悪い影響も知り
お風呂でも台所でも洗濯でも全部石けんに切り替える石けん生活を始めたが
わたしの場合、本を読んで一番興味深かったのは
化学物質の影響うんぬんよりも
原価100円のクリームが一万円で売られるといった
化粧品業界のぼろもうけシステムだ
今思えば、多分それに対する許せん!という気持ちが石けん生活へのシフトを加速させたのだろう
もちろん化学物質の影響も大きな要因ではあるけれど
こうして始めた石けん生活も
やがてその使いにくさを知るにつれてトーンダウンしていくのである

手作り石けんで顔を洗うのは今もずっと続けていて
これは自分で気持ちいいと思う
だが、石けんシャンプーは髪がギシギシし
酢やクエン酸である程度手ざわりは良くなるけれど
乾かした後の髪のべたつきが気持ち悪く
使い続けるほどに髪がバサバサになっていった

台所では、揚げ物をした鍋は石けんでは何度洗ってもすっきりしない
そのうち、油汚れ用にだけと合成洗剤が復活し
どうせ食器洗い機用の洗剤も合成洗剤だし、色々置いても面倒だよね・・と
いつの間にか台所から石けんが消えた

洗濯には何度も粉石けんや液体石けんを使ってきたけれど
仕上がりの風合いは柔らかめでいいとしても
黄ばみとニオイがダメで挫折している

こんな風に、なぜ石けん生活は難しいのか
それについては以下のリンクページに解説がある

「うちの洗濯物はどうして黄ばむ?」

これを読んで思うことは
わたしの石けんに対する考え方は、15年も前に仕入れた情報が元になっていて
その後、進歩していないということだ

また、この15年の間には
化学物質アレルギーの問題がクローズアップされるにつれて
世間の目も厳しくなり
消費者はまず安全と安心を重要視するようになったことから
企業も問題点を改善するべく努力をしてきたと思われる
台所の合成洗剤も、昔のように手荒れがしなくなったし
(うちは薄めて使っているせいもあるけど)
わたしと同じく石けんシャンプーが苦手な娘のために購入している合成シャンプー(ノンシリコン)は
石けんがベースになっているとはいえ、合成界面活性剤も含まれているが
洗い心地がとてもすっきりしていて、娘にとってはなくてはならない存在だ
そして、驚いたことには、これを娘と一緒にしばらく使っていたわたしが
久しぶりに石けんシャンプーに戻してみると
何と、昔のように髪がバサバサ&ベタベタにならないじゃないの?!と、びっくり〜
もしかして、ずっと昔に合成シャンプー使っていた頃よりも
髪自体の状態がいいのかもしれない?
とりあえずあのノンシリコンシャンプーは悪くないのかも?と思ったり・・

こうして、昔はダメと思ったものが
今は違う見方をするようになったものがある一方で
基礎化粧品は今も自分で作った化粧水とクリームしか使わない
メイク用品は安価なものをチョイスし、口紅は自分で作る
もう累積性皮膚炎はコリゴリだし
あの業界のぼったくり疑惑が今も腹立たしいから・・

多くの女性が、きれいになると信じて化粧品を買っている
その「信じる気持ち」を利用した商売は
安心・安全を信じて石けん生活を送っている人々もターゲットにし
今は本当にたくさんの業者がエコを名乗って市場に参入しているが
石けんだから安全で環境に優しいと思いこんでいる人に対して
デメリットを発信し、警鐘を鳴らす情報もネット上に出てきている
でも、石けんに対する絶対的信頼を持っている人はそれを合成洗剤屋の陰謀だと思うケースもあり
このような石けん絶対主義の人を「石けん信者」と揶揄する向きもあるらしい

自分が良いと思うものを人にすすめたくなる(認めてほしい)のは普通のことだが
問題は、それを受け入れない人に対する拒絶反応だろう
わたしは以前、エコ活動に熱心な人が
「台所に合成洗剤が置いてある人は信用しません」と言うのを聞いて驚いたことがある
合成洗剤の使用者=信用に値しない人
この感覚にはついていけないと、思わず引いたのは言うまでもないが
残念ながら、人に対して厳しい評価をするほど
自分も厳しく評価され
それが腹立たしくて更に論争へと発展することから
「石けん信者」は自ら立場を悪くするのだと思う

石けんを使わなかったらとても恐ろしい事が起こると脅すよりも
石けんを使って、穏やかに楽しく暮らしている姿を見せる方が
ずっと人に信用されると思うし
実際に、無理なく石けんライフを楽しんでいけるなら
むしろ多くの人がやってみたいはずだ
この15年の間に、わたしは生活の中に石けんを積極的に取り入れてきて
その良さを十分知っている
デメリットはあっても、やはりメリットも大切にしたいから、今でも石けん作りをやめていない


(2013.2.11)



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