いいかげんな話



<9.石けん生活の話 3>

わたしは若い頃から自分に合うシャンプーが見つからない「シャンプージプシー」であり
毎日洗っても洗ってもいつも頭皮がかゆい日々を送っていた
また、かゆみと同時に、洗って乾かした時のサラサラ感が一日でベタッとなる不快感も嫌で
常にサラサラであることを求めて、いよいよ「洗う」ことに熱心になっていく

15年前、『あぶない化粧品』のシリーズを読み
「かゆみ」の原因のひとつが
シャンプーやリンスに含まれる合成界面活性剤等の化学物質にあることを知ってからは
石けん生活に切り替えたけれど
それでも「かゆみ」と縁切りはできないばかりか
ベタつきがひどくなった分、余計にかゆいように感じて
結局何度も合成シャンプーに戻っている

さて、ここ数年、「肌断食」とか「角質培養」という言葉を聞くようになり
”洗うだけで何も付けない””こすらない”といった美容法が静かなブームになっているが
長年、徹底したクレンジングと、ピーリングやパックによる角質除去が常識化し
それを熱心に行ってきた人々にとって
まるで反対の美容法は、頭で理屈は分かっても、実行するのは難しいかもしれない
わたし自身は、15年前からすでにこういうことは実践してきており
その過程で、自分の肌質を理解しながら(←これが重要)
加齢という変化も受け止めて(←これもかなり重要)
今は、自家製の化粧水(水+グリセリン+精油)と
少量のクリーム(アロエバター+ホホバオイル等+精油)で保湿するのがちょうどいいと感じている

また、わたしの若い頃の失敗を繰り返さないように
肌の弱い娘には昔から化粧品(特に基礎化粧品)の害を教え
友達が何を使っていようと、それに影響されないで
自分にちょうど良い方法を模索していくことを勧めている
そんな中で、昨年は
メイク落としシートの試供品を使ってまぶたがはれ上がるという大変な目にもあった
元々メイクはパウダーのみだから
石けんだけで十分落ちるのだが
手軽だと思って使ってみた商品がこれで
それ以来、滅多なものを使うもんじゃないと懲りたらしい

小さい時からアトピーに悩まされた娘だけど
有難いことに今は21歳らしいきれいな肌をしている
夜は、メイクを落とすために自家製の石けんで洗い
その時の肌の状態に応じて、自家製化粧水をつけたり、何もつけなかったり
そして朝は水で洗うこともなくそのままメイクする

ただ、彼女の肌に何のトラブルもないのかと言えばそうでもなく
特に頭皮と背中のかゆみが問題で
そのため毎日のシャワーと洗髪は欠かせない
中学生の時、久しぶりにアトピーが悪化して皮膚科に行った時には
アレルギーの原因は「汗」と診断され
その後、自分の肌から出る皮脂もかゆみの原因になっていると自分で感じたこともあり
それらを洗い流す作業はいよいよ欠かせないものとなっていく

このたび、石けんについて改めて調べてみて
わたし自身、合成シャンプーから石けんシャンプーに変えても、なお解消しない「かゆみ」の原因は
多分「洗いすぎ」によるものであろうことがわかってきた
つまり、洗浄力の強いシャンプー(石けんも)で洗うほど皮脂がたくさん落ちて
それを補おうとして更にたくさんの皮脂が出る
洗っても一日で頭皮が脂っぽくなってかゆいので毎日洗う
こうして洗えば洗うほどかえって皮脂の分泌を促進してしまう上に
洗うことにより、皮膚の「常在菌」が失われてしまうことも問題だ
なぜなら
この皮膚に住んでいる常在菌(表皮ブドウ球菌)は、お風呂やシャワーで70パーセント
更に石けんでゴシゴシこすって洗うと90パーセント以上が失われてしまうため
そうなると悪臭の元となる菌(黄色ブドウ球菌や真菌)が繁殖しやすくなるのだという
洗えば洗うほど皮脂と常在菌が失われ
ベタついた悪臭のする頭になるなんて、なんとも悲しい話だと思う一方で
この10年、バラのために土壌微生物と仲良くすることを試みてきたわたしには
皮膚の常在菌の話は実に受け入れやすく
いよいよ微生物に興味がわいてくるのだった

こういうわけで
世の中ではいつの間にか密かに「脱石けん」が進んでいて
頭も顔も体さえも洗わない「湯洗い派」の人々が結構いるらしいことも驚いた
わたしの場合、合成シャンプーが合わないから石けんシャンプーにかえることはしても
石けんを使わないという選択肢はなかった
だから何度も合成シャンプーに戻っていたわけで
結局、洗いすぎを解消しなくては頭皮のかゆみからは解放されないのだろう
ただ、昔は毎日欠かさなかった洗髪も
いつの頃からか洗うことそのものが面倒になって2日に一回になっている
それでも、正常な頭皮は4日位洗わなくてもかゆくならないそうなので
2日目にはかゆくて早く洗いたいと思っているわたしはまだまだダメみたいだ
そこで、今回とりあえず4日は石けんを使わず過ごしてみることにした

いつものように石けん洗髪をし、次の日は洗わず
2日目は湯洗いだけしたが、何だかすっきりしない
3日目の朝には頭皮のべたつきが気になるも、髪は汚くない感じ
3日目の夜も湯洗いするが、その前に夫に頭を匂ってもらうと^^;
「脂っぽいニオイだけど臭くはない」とのこと
湯洗いした後再び匂ってもらったら、「脂っぽいニオイもなくなった」
4日目の朝、また匂ってもらったら、やはり「脂っぽいニオイもない」ままで
その日一日、髪も思ったほどベタつかず、当然出ると思ったかゆみもほとんどなく
湯洗いだけでも結構いけることがわかった
ただ問題があるとすれば
頭が少しでもベタついていると、臭いんじゃないだろうか?と気になる自分の心かなあと、、

また、「タモリ式入浴法」で検索すると
たくさんの人がこの「洗わない入浴方法」に興味を持っていることがわかり
きっとみんな興味はあっても
それぞれが持つ「常識」に照らし合わせて躊躇するであろうことと
その一方で、実践者の好結果を聞けばやはり心騒ぐだろうことも容易に想像できるが
何にしても世間の「清潔、抗菌志向」とは真逆の入浴法が注目されるという
そんな世の中になっていることが実に面白いと思う


(2013.2.14)



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