14時間

 

 中学校のころ夏休みにクラスで肝試しをした。くじをひいて男女ペアをつくり、真っ暗な校舎の中を歩きまわるというものだった。クラスには仲のよい女の子がいて、ボクは彼女と同じ番号のくじをひけるよう全身全霊をかけて祈った。結果は外れだった。結局、誰と歩いたか覚えていない。ショッキングなできごと。

 

 剣道をやっていた。怖い先輩に防具を付けたまま放課後ずっと校外を走らされた。面は重く、小手は暑く、胴のひもは肩をひりひり痛めつけた。あの先輩、俺は城だ、なんて言ってたけど、今頃なにしてんだろう。殿様にでもなったのかな。

 

 友人から渡り廊下にまつわる怖い話をきいて、しばらくずっと怖かった。あれは一体だれが考え出したのだろう。それとも本当にあった話なのかな。でも今考えたら、そんな怖い話でもなかったような気がする。なにが怖かったんだろう。話してるあいつの顔が無気味だっただけかも知れないな。

 

 担任の音楽の先生はすぐイライラする人で、10分もまともにピアノをひいた事がなかった。とつぜん鍵盤を叩き付け、僕らにどなりちらしたりした。だけど何を怒られたのかまったく覚えていない。音楽の先生ってだから好きだよ。

 

 机に大仏のお姿を彫って毎日拝んだ。友人にも拝ませた。あまりに良いできだったから先生に見せたら、ひどく怒られた。あの大仏は今どうなっただろう。

 

 そういや、貸してやったファミコンのカセット、中古屋さんに勝手に売り飛ばしたやつがいたな。むかついて喧嘩したけど、考えてみたらかなりひどいことをされたもんだ。今はあいつ、何を売り飛ばしてるんだろう。普通に生活してるのかな。

 

 いろいろあった。書くのがめんどくさくなった。

 

 14時間という長さは想像以上に長い。とある日曜日、ボクは14時間も同じ場所に座っていた。母校の中学校の体育館の片隅に。朝日が昇って、夜暗くなるまで座っていた。座っていなくてはならなかったのだ。理由は書くまい。

 14時間ものあいだ同じ場所に座っているといろんな事を思い出す。懐かしい場所だ、思い出さないはずがない。ほとんど消えてしまっていた記憶すらじわじわと浮かんでくる。数珠つなぎの記憶の中をトリップした気分だった。

 

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