4時44分


 誰にでも、こんなことってあるんだろうか。

 ボクは今日もまた4時44分に時計を見てしまった。

 なぜかボクは子どもの頃から、4時44分に時計を見ることが多い。その度になんだか複雑な気分になるんだ。

 もしかすると、2時34分にも、3時45分にも同じくらい時計を見ているのかもしれない。だけど、4時44分だけは別。なぜって、ボクが思い出せる記憶の中で、何時何分に何をしてたかって明確に答えられる最も古い時間だから。

 最初に見た4時44分は小学4年生のとき。放課後、近所の友達と公園で遊んでいた。秘密基地かなんか作っていた。時計に目をやった瞬間ボクは、なんだかとっても不吉な時間のように感じた。

 それからボクは、数え切れないくらいの4時44分を過ごしてきた。4時44分に偶然時計に目をやる度に、あれから何度目の4時44分なんだろうなって思う。
 メランコリーと言えばなんだか響きは良いが、そんな時、無性にやるせない気持ちになる。

 現実に、ボクは生まれてから1万数百回程度の4時44分を経験してきた。ひょっとするとボクが生涯味わえる4時44分の数は決まっていて、ボクは今日もまた一つ、4時44分を消費しちゃったのかなって思ったりもする。

 そして4時44分は、ボクに、人生は短いよって教えてくれる。

 この4時44分の憂鬱は、なんだか、日曜日のサザエさんの憂鬱に少し似ている。

 

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