平井について

 

昔、ボクが中学生のころ、「平井」という苗字の後輩が2人いた。ひとりはとってもいい体格でボクはそいつを「ビッグ平井」と呼んでいた。反対にもう一人の平井はすごく細くて小さくて、ボクはそいつを「スモール平井」と呼んでいた。

 

10年後に、偶然、「スモール平井」と出会った。会ったとき、ボクは彼に気付かなかった。なぜって、「スモール平井」がすごく大きなやつになっていたから。

 

久しぶりの会話をしている最中、ボクはずっと、彼を「スモール平井」と呼んでいた。なにか違和感を覚えながら。

 

きっと今では、「スモール平井」と「ビッグ平井」の逆転劇が起こっていて、もし今3人で話をしたら、犬をみて「ニャオ」、ネコをみて「ワン」っていうゲームのごとく、ボクは混同するだろう。

 

 10年前、ボクは、なんて単純なあだ名を付けたのだろうって、空しく思った。無力感。でもあの時、2人のあだ名を逆に付けるだけの先見性はボクにはなかった。

 

「10年後・20年後にも通用するモノ」の美学について、ボクは、「スモール平井」と出会って考えていた。

 

それだけなんだけど、ずっと考えてたんだ。

 

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