本棚の中のボク


 道を歩いていたら、とてもキレイなお姉さんに声をかけられた。とても好みのお姉さんだった。立ち止まって、しばらく話をしているうちに、意気投合してしまった。

 お姉さんは、胸元から刃物を取り出し、それから、あなたの首を切ってもいいですかって聞いてきた。
 ちょっと怖かったけど、ボクは笑って、どうぞって答えた。

 気がつくと、ボクは首だけになっていた。
 まさかホントに切るとは思わなかった。でも、まあ、仕方ないやって思った。次第に、意識が遠くなっていった。

 気がつくと、見慣れない部屋にボクはいた。
 四畳半くらいのの小さな部屋で、扉や窓がひとつもない。不思議な空間だった。部屋の4つの壁には、古めかしい木製の本棚が、ひとつずつ置かれていた。

 その本棚には本がなく、代わりに、無数の首が飾られていた。
 ボクもそのひとつだった。男の首もあれば女の首もあった。

 首だけしかないのに、ボクたちは生きていた。
 となりの首とおしゃべりすることもできた。

 そんな状況に置かれながらも、楽しそうにしているやつもて、ボクはすごいなって思った。だけど、ボクにとってはどうしても居心地が悪くて、そこから出て行きたくてしょうがなかった。
 だけど、お姉さんに首だけにされてしまったボクには、どうしようもなかった。

 どうしてあんな軽はずみに、どうぞ、なんて答えたんだろうって、ボクは棚に並びながら考えていた。


 そんな夢をみた。そんな夢をまたみた。今回で3回目。何度も見る夢って不思議とあるよね。
 最初に見たのは、大学生のころだったかな。

 なんだか少し、懐かしい気がした。

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