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腕時計が壊れた。
この際だから、思い切ってロレックスを買おうと思い、時計屋に行った。滅多に買えるもんじゃないからそこそこのやつにしようって。エアキングやなんかを除くと、大体４０万円くらい。想像していたけど、やっぱり高いもんだ。
ふと視線を隣のケースに移すとオメガとかロンジンが並んでいる。そういう選択肢もあるよな。スピードマスターとかシーマスターとかドルチェビータなら、もっと安く買える。でも、なんか所有欲を刺激しない。後で後悔する気がする。どうしてあの時、プラス２０万円だしてロレックスにしなかったんだろうなあって思うような気がする。やっぱり時計はロレックスだ。
でも、４０万円は実際つらい。
ふと、身分相応のものを身に着けるべきだっていう声が聞こえる。心の声。だけど、なんとなく彼女の声に似ている。ボクはなんて、貧乏性で、勢いのないやつなんだろう。
そんな感じで、隣の隣のケースに視線を移すと、国産のお手ごろな時計が並んでいる。
やっぱり時計の役割といったら正確に時を刻むこと。だったら国産のそこそこデザインのいい、２万円程度のクオーツでもいいんじゃないかと思えてくる。
それって間違えてないよね。ボクの言ってることって正しいよねって自分に言い聞かせつつ、でもすぐにはそこまで割り切れない。しかも２万円って言ったって決して安くはない。
結局、時計は買わず、かわりにボクが買ったものは、「減量用プロテイン粉末・ヨーグルト味」、それから、それをシェイクする専用容器。合計２，７５５円。
今まで欲しいとも思ったこともない商品だったのだけど、瞬間的に猛烈な欲求に誘われ、つい買ってしまった。
なんかボクは、いつもつまらない衝動買いをしてしまう。
なぜボクは本当に欲しいものを買わず、いつも、大して必要のないものばかりに、お金を費やしてしまうのだろう。
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