そして誰もいなくなった...

 

 

 道のかたわらに、自動車が捨てられていた。青々とした雑草の群れに取り囲まれ、真っ赤なボディーがやけに映えた。不法投棄という憎むべき行為なのだけど、素直にみとれた。ふと空を見上げると、ウロコ雲が地上を包み込むように浮かんでいて、思わずシャッターを押さえた。本当に綺麗な景色だと、ボクは思った。

 

 なぜボクはこの景色に心を奪われたのか。それはボクがそこに、人類が滅んだあとの地球を垣間見た気がしたからだ。目の前の真っ赤なボロ車は人類の足跡としては実にリアルだった。別に、不法投棄で人類が滅んでしまったわけではない。かといって核戦争で滅んだわけでもない。理由は考えない。だけど人類は滅んだ。そして、赤い車が残った。そしてボクはその車の前にいた。

 

 太陽が消滅し、地球が消滅するその日まで、人類は存在できるか考える。人間は地球の寄生虫だと皮肉る人もいるが、それができる寄生虫なら大したもんだと思う。

 

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