宝くじ


 「宝くじで3億円当たったら何する?」ってベタな質問をボクは愛している。
 ベタな答えはこんな感じ。
 「貯金。」、「旅行。」、「家を建てる。」、「車を買う。」、「宇宙旅行をする。」、「寄付でもする。」なんてとこ。そういう空想ってそこそこ楽しい。
 そう、それに、「でもさ、結局、3億円じゃ、何もできないよね。」って、そこまで持っていって欲しい。それでこそベタだと思う。

 さて、ボクの知り合いの知り合いの知り合いの知り合いに、本当かどうかは知らないが、1日に3億円を稼ぎ出す人がいる。
 そんな話をしていて、「これから毎日、1日に3億円使えるとしたら何をする?」って、友達と2人で喋っていた。

 「世界中のリゾート地を購入して、そこにプライベートの料亭と高級ホテルを建てて、料理人を何人も雇い、自家用ジェット機で毎日そこに通いながら、おいしいものを毎日食べ続ける。」、「自分だけのビール工場やワイナリーを作り、最高においしいお酒を楽しむ。」、「プライベート美術館や博物館を建てる。」、「ピラミッドみたいなお墓を作る。」、「世界中にプライベートゴルフコースを作る。」、「芸術家のパトロンになって絵を描かせたり、曲を作らせたりする。」、「自分だけの最先端病院を作る。」等など・・・

 宝くじよりもだいぶ贅沢な空想を楽しんだ。
 だって1日に3億円だ・・・
 だけど、浮かぶのはせいぜいそんなとこ。ボクらのショボい想像力は一瞬にしてピークに達し、脳はカラカラ音をたて始め、そして、なんだかやるせない気分になった。
 「毎日3億円なんてとうてい無理でしょう・・・」って。それで終わり。そうなると、空想って面白くない。
 お金はいくらあってもいいが、使い切れないのは、それはそれで苦痛だ。

 さてさて、話は変わるが、昔の偉人はこんなことを言った。
 万物の根源(アルケー)は水であり、無限なるものであり、空気であり、数であり、火である・・・と。

 まあ、そんなもんなのかなと思ったりもする。万物の根源は水であるような気もするし、無限なるものであるような気もするし、空気であるような気もするし、数であるような気もするし、火であるような気もする。だけど、同時にすべて違うような気もする。

 そしてヒトの行動の根源は生理的欲求、安全欲求、所属と愛の欲求、承認欲求、自己実現の欲求といった基本的欲求であり、もしかして、そうした昔の偉人たちも同じような欲求に動かされていたのかなと思うと、なんだか親近感を覚える。

 そして、最近の偉人はこんなことを言っている。
 「我々の幸せの根源は、新居に買ったソファー 48,000円であり、記念に植えたガジュマルの樹 12,800円であり、妻とおそろいのシャツ 4,800円であり、家族で一緒に過ごすプライスレスな時間なのだ。」と。
 「追伸、買えるものはマスターカードでよろしく。」って。

 そんな現代人にとって、万物の根源は、ささやかな幸せと夢であり、つまるところ、それは例えば「宝くじ」なんだろうなって思った。

 そして、きっと100年度の懸命な人類は、「買っても当たらないけど、買わなきゃ絶対に当たらないから。」っていう、先人の確かな知恵を、永遠に語り継いでいるんだろうなって思った。

 長いこと書いてしまったけど、
 「宝くじで3億円当たったら何する?」ってベタな質問、、、
 やっぱり、ボクは愛してるんだ。


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