ALI PROJECT








ALI PROJECT
新譜「ARISTOCRACY」4/25発売!




ALI PROJECT(アリ プロジェクト 略称:アリプロ)

まずはオフィシャルから発表されている紹介文を載せておきましょう。


'87年に、宝野アリカ(ヴォーカル/作詞)と片倉三起也(シンセサイザー/作編曲)で結成された二人組のユニット。'88年、第一回SMB(サンチューン・ミュージック・バトルロイヤル)細野晴臣特別賞受賞をきっかけに、同年、アルバム「幻想庭園」を発表。

'92年、東芝EMIよりデビュー。シングル「恋せよ乙女〜Love story of ZIPANG〜」(現在、廃盤)を発売。以降、シングル3枚、アルバム2枚を発売。宝野は他のアーティストに詩を提供、片倉はCMに映画音楽にと活躍する一方、二人は「プラネタリウムコンサート」など幅広い活動を行う。その独自の音楽性で根強いファンを持つ、異色のユニットである。

 宝野アリカ〜Arika Takarano
洋画家の両親のもとで、感性豊かに育つ。アルバムデビューの前後より、CMソングの仕事を始める。詩や散文を書いたり、絵を描いたり、洋服を作ったりパントマイムをやったりして、気ままに過ごすこと数年。1989年、久石譲に歌唱力をかわれ、アニメ映画「魔女の宅急便」のイメージ・ソングを担当。以後、いくつものアニメ・イメージ・ソング、CMソングを唄う。現在は、童話作家、作詞家としても活躍している。

 片倉三起也〜Mikiya Katakura
作曲家、アレンジャーとして、主に、CMを中心に活躍中。




ディスコグラフィー
1988年インディーズ・レーベルよりアルバム「幻想庭園」を発表
1992年東芝EMIよりメジャー1stアルバム「月下の一群」を発表
1994年東芝EMIより2ndアルバム「DALI」を発表
1995年東芝EMIより発表された「'95運動会」に曲を提供
東芝EMIより初のベストアルバム「星と月のソナタ」を発表
東芝EMIよりアニメ「緑山高校甲子園編」のオリジナルサウンドトラックを発表
1996年ポリグラムよりCDエキストラ仕様の「エコエコアザラクUオリジナルサウンドトラック」を発表
1997年ビクターエンタテインメントより「music tracka from Wish」を発表
ビクターエンタテインメントより「CLAMP学園探偵団 ORIGINAL SOUNDTRACK1」を発表
ビクターエンタテインメントより「CLAMP学園探偵団 ORIGINAL SOUNDTRACK2」を発表
ビクターエンタテインメントより「CLAMP学園探偵団 VOCAL COLLECTION」を発表
1998年日本コロムビアよりフルレンスとしては3rdアルバムにあたる「Noblerot」を発表
Pioneerよりアニメ「聖ルミナス女学院」のオリジナル・サウンドトラックを発表
2000年かつて廃盤になったアルバム等の再販を熱望するファンの声に応え、アリプロの公式ファンクラブ「アリプロ-マニア」がZAZOU Recouds(ザズー・レコーズ)を発足させた。かつての作品の再販はもちろんのこと、メジャーではリリースされにくいテレビ作品などの発表の場としても期待される
ZAZOUよりファンクラブ会員向けのミニ・アルバム「ALIPRO-MANIA」を発表
ZAZOUより「月下の一群」を再販
初のライブビデオ「蟻プロジェクトライブビデオ1988824」を発表
ZAZOUより「DALI」を再販
ZAZOUより、かつてのシングル曲に新曲1曲を加えた「jamais vu」を発表
2001年春頃にフルレンス4thアルバムか??
↑ディスコグラフィーだけは、私が付け加えました。
ちょっと大雑把ですが、これから更に詳細を書き加える予定



 では、私が個人的な視点からアリプロの紹介をさせてもらいます。
 私が初めてアリプロ(というより、宝野アリカさん)に出逢ったのは、「魔女の宅急便 ヴォーカルアルバム」でした。その中でアリカさんは3曲歌われているのですが、「黄昏の迷い子たち」という曲に衝撃を受けました。もちろん、楽曲・歌詞ともに哀愁を帯びていて素晴らしいバラードですが、それを歌い上げるアリカさんの歌声が透明感溢れていて、それでいて優しい響きに包まれており、それはそれは美しいのです。それ以来、宝野アリカという歌手について調べていたのですが、偶然、セキスイ・ツーユーホームのCMに使われている曲がアリカさんの声に似ていたので、セキスイの広報に電話して、無事、アリプロの存在を知ることができました。
 そういう回り道を経て、初めてアリプロの曲を耳にすることができたのですが、アルバム「月下の一群」を聴いてショックを受けました。一番はじめに耳に飛び込んできたのは、穏やかな天使の歌声・・・・ではなく、中低音域を濃厚に歌い上げる小悪魔っぽいアリカさんの声でした。また、アコーステックなものを期待していたのに、その曲(メガロポリス・アリスという曲)はかなり電子的で現代音楽のようでした。もちろん、他の曲にはアリカさんの柔らかい声が活かされた曲もありましたが、アリプロというユニットに面喰らってしまったのは事実。(笑) でも、この2面性こそがアリプロの神髄といえるのでしょう。
 片倉さんの言葉に次のようなものがあります。『善も悪も、美とその対極も、すべての研ぎ澄まされた小さな形。』つまり、天使という概念にしろ悪魔という概念にしろ、それが極められているという所にこそ価値がある、という意味に私は解釈しています。こうした、天使―悪魔、善―悪、醜―美など、相反する概念を一つの〔極められたもの〕として積極的に表現しようとするアリプロのスタイルが、美しくも毒を持つ楽曲を数多く生み出してきたと思うのです。
 それ故、耳に馴じむのに時間のかかる曲も少なくなく、いわゆる大衆受けはよくないかと思います。しかしながら、世の中の音楽に対するニーズを全く無視しているわけでもないわけで、自分たちの固守すべきスタイルを基調として外からの要求にも応じようとする、理想的な現代の芸術家の姿勢だと言えるのではないでしょうか。
 とまあ以上の説明では、具体的にどういう曲を演奏しているのか分かりづらいと思いますので、分かりやすくジャンルという側面から解説しますと・・・イロイロです。(←説明になっていないな〜) やはり、まずは西洋のクラシックというものが根底に流れていて、そこからフレンチ・ポップス、ロックやテクノ、不協和音を多用した現代音楽といったジャンルに分岐しているかと思います。







私の好きなアリプロの曲・ベスト3



No.1 薔薇色翠星歌劇団 (アルバム「月下の一群」に収録)

 私はこの曲ほど「芳しい」という言葉が似合う曲はないのではないかと思います。もう、イントロのピアノの調べを聴くだけでも、噎せんばかりの香りに包まれそう・・。悲恋について詠ったバラードで、ピアノ・クラシックギター・アコーディオンにて演奏されています。三拍子もの。この曲はAメロBメロがしっとりと嘆くように歌われていて、サビに入ったら心が張り裂けたかのように力強くなるといった風に、大変メリハリがつけられていて印象深い構成になっています。アリカさんの歌声の繊細な部分と、力強くも流麗なファルセットが聴けて、私には大満足の一曲。
 歌詞も素敵なんですよね。「♪美しい夜明けが 降りるまでに 窓に残る 闇色の 洋墨(インク)で手紙 書く〜」といった詩的で美しい表現が光っています。
 あ、アコーディオンはあのCoba氏がゲスト演奏されています。凍てつきそうにエッジの効いた音で演奏されていて、曲のイメージをさらに膨らませていると思います。



No.2 天使に寄す (アルバム「music tracks from Wish」&シングル「Wish」カップリング)

クランプさんのラジオ番組で放送されたラジオ・ドラマ版「Wish」で使われた曲です。パイプオルガンとバイオリンのピチカート音による、賛美歌のような作品。やはり三拍子もの。(アリプロのワルツは絶品ですよ!)
 基本的に長調を基調としながらも短調を織り交ぜることによって、そうですね・・・表現するのが難しいのですが、聴き手に安楽をあたえると同時に、なんとも切ない感情を抱かせてしまうような不思議な曲。特筆すべきは、やはりアリカさんの歌声! まさに天井の調べというに相応しいでしょう。とくに、二重コーラスは魔力がかけられているのかと思う程に美しい。



No.3 共月亭で逢いましょう (アルバム「星と月のソナタ」&アルバム「jamais vu」&シングル「恋せよ乙女」カップリング)

 この曲は、どのアリプロ・ファンに訊いても「名曲だ!」と仰るんじゃないでしょうか? それ程にアリプロを代表する一曲だと言えるでしょう。アリカさんご自身も、ライブで歌った際に「この曲を練習で唄うときに、いつも自然に涙がでそうになります。今日は泣かないで唄えて良かった。」と仰るくらいに、別れの辛さを見事に詠った曲です。
 メロディーはどことなく中国風で、やはりというか・・・またまた三拍子ものの切ないバラードです。(笑) このバラードを耳にしていると、聴き手の心をそっと誘いだしてくれるような気持ちになります。そう、まるで広大な中国大陸を風のように飛んでいる情景を思い浮かべます。少々、余談になりますが、アリプロの曲は聴き手の心に入り込んで感化させるというよりも、むしろこの曲のように心を連れ出してくれるような作品が多いような気がします。
 話を本題に戻して、特筆すべきは胡弓の音が使われていること。アリプロと言えば、ヨーロピアンなバイオリン等が定番なのですが、この曲では中国風のメロディーに合わせて胡弓が効果的に使われているんですね。あたかも泣いているようなあの独特の音色は、この曲の持つ悲哀感をより一層、深いものにしています。また、ソロもあるんですが、素朴な音色の中にも、まるで雫が滴るかのような気高さが感じられます。









これより下は、お気に入り順序に関係なく、思いつくがままに順次、アリプロの楽曲を紹介していきます。




ナルシス・ノワール (アルバム「Noblerot」に収録)

 じつに大変ないわくを持つ曲です。私がこの曲の旋律を耳にしたのは、「CLAMP学園探偵団オリジナル・サントラ2」に収録されていた「Un An Deja」という曲で、セレナード(夜曲)調のインストゥルメンタルでした。ピアノとシンセサイザー・オーケストラを用いたシンプルで短い小作品でしたが、そのメロディーは哀愁と気品に溢れていて多大な存在感を放っていました。
 そう感じたのは私だけではなく、幾人かのファンから「この旋律にアリカさんが歌詞を付けて歌って欲しい!」という要望がアリプロに届いたそうです。勿論、私もリクエストしましたけれどね。(笑) そういった経緯でめでたく発表されたわけなんですが、じつはもっと歴史のある曲で、長い間、発表されることなく寝かされていた不遇の曲だという噂を聞いたことがあります。それをアリカさんが「今度こそ、この曲をアルバムに収録しないなら、他の曲は歌わない!」とアリプロ解散覚悟の決意で訴えて下さったため、無事にアルバム収録とあいなったわけですね。
 この曲が、素晴らしい作品なのに発表されないという憂き目に遭った理由については、あくまで私の憶測ですが、歌詞の内容があまりにも凄すぎたのでしょう。そのおおまかな粗筋はについては・・・
主人公の少女は、家に訪ねてくる兄の友人に初めて恋心と云うものを抱くのだが、その少年は兄の恋人(同性愛のパートナー)であり、社会的に認められない二人は心中を遂げてしまう。その悲劇を少女が知るのは彼女が成長した後のことで、そのとき少女は、深い悲しみと少年への想いを綴ったセレナードを唄う。
・・・こうなっています。
 歌詞がとても過激で、アリプロの中では異色の作品なのですが、あまり同性愛という点ばかりに気をとられて聴くのもどうかと思うのです。これはあくまで、社会の差別や偏見のために死をもってしか成立しなかった悲恋の物語です。つまり「あるひとつの悲劇のカタチ」だと思います。
 詩から少し離れましょう。歌唱は氷のように研ぎ澄まされた発声にもかかわらず、とても熱いものになっています。少女の悲哀と愛慕が見事に表現されており、アリカさんの曲に対する思いの丈が伝わってきますね。アレンジメントはインストのそれと基本的に同じですけれど、シンセではなく生の弦カルテットが起用されており、ヴァイオリンがとても甘美な調べを聞かせてくれます。
 表題の「ナルシス・ノワール(Narcisse Noir)」は仏語で、和訳すると黒水仙になるそうです。





ビアンカ (アルバム「月下の一群」&アルバム「星と月のソナタ」に収録)

 初めて耳にしても、不思議とどこかで聞いたような追慕の念を抱いてしまうようなワルツでした。詩のテーマはお人形さんで、少女が自分の鏡ともいえる人形との日々に幸せを感じながらも、自分のみが成長していく現実を、心の片隅で愁えんでいる様子が描かれています。残念ながら私は男子なので、人形にそういった感情を抱いたという記憶はないのですが、物に対する情愛、物を物以上の存在に高めてしまう不思議な力はよく実感しています。そうした経験も手伝って、この曲が懐かしい響きを含んでいるように聞こえるのでしょう。
 歌唱については、高音域での優しく暖かい響きが聴けて、夢見がちな少女の純粋さが上手く表現されていると思います。ヴォーカリスト・宝野アリカを特徴づける、典型的な歌唱スタイルのひとつと言ってもいいでしょう。
 編曲にはヴァイオリンやマンドリンが起用されていて、とてもヨーロッパ的な仕上がりです。イントロにはパガニーニ風のヴァイオリン・ソロがあり、とてもインパクトがあります。伴奏は弦楽器のピチカート演奏がメインなので躍動が感じられ、この曲の持つ幸福感みたいなものが強調されています。





蛾月(せいがげつ) (アルバム「幻想庭園」に収録)

 アリプロのインディーズ時代、そう、まだ「蟻プロジェクト」というバンド名を掲げていた頃のアルバムです。アリプロのアルバムでは、一曲目から驚奇な作品を持ってきて、鑑賞者を煙に巻きながらもアリプロ・ワールドに引きずり込むという曲編成が多いのですが、この曲も「幻想庭園」のオープニングチューンでございまして、強烈な個性を持った作品だと言えるでしょう。
 曲の印象をひと言で表現するなら、狂気の世界はかくも美しいものなのか、というものでした。極めて変則的なリズムと酔狂の調べで構成された楽曲、掻き毟るかの様なピアノの音が印象的な編曲、か細く透明感のある声でまくし立てる様な歌唱、闇の中で一人狂乱する少女を詠った歌詞・・・まったくどの要素を取り上げてみても、破綻を来たしているとしか思えません。 しかし、これは恐ろしい事なのですが、それらの破綻はみな計算尽くめであり、一つの曲として仕上がったときに実に麗しい作品が生まれているのです。
 もっとも、黎明期のアリプロの作品なので、洗練されているとは言えないかも知れません。それでも、インディーズという世界で自分たちの感性を最優先して創られているので、アリプロが持つ恐さ、美しさ、危うさや、優雅さというものが、とても分かり易く顕れている作品だと思います。もっと踏み込んだ表現をすれば、アリプロの希少性が実感できる曲でしょう。これは「幻想庭園」の他の曲についても言えると思います。
苦しみは森に潜む 蛾の羽の
銀粉にまかれながら 消えうせてしまえ
花に埋もれ オフィーリア わたしはここに
狂気に埋もれた夢を とり戻すために
光に包まれて 抱かれて眠れ
悲しみよ 夢の中で 凍りつくがいい




桜の花は狂い咲き (アルバム「幻想庭園」に収録)

 こちらの作品は、アレンジを変えてメジャー1stアルバムに「堕ちて候」という曲で収録されたり、或いは、これ以前にも「桜の花は乱れ咲き」というタイトルで発表されているといったように、種々のアレンジが存在しているようです。それだけ、黎明期のアリプロを代表する作品であり、また、大きなテーマのひとつに位置付けられていた作品かと思われます。
 さて、この「桜の花は狂い咲き」でのアレンジは、うねるような歪系ギターサウンドが特徴付けているようにロックです。もちろん、歌詞の内容は素直に桜の艶やかさや優美を詠ったものなどではなく、むしろ、賑やかに咲き誇ったかと思えば、すぐに焦燥に駆られたかの様に散り急いでしまう忙しない桜に、人生の虚しさを重ね合わせて詠われています。
 従って、歯切れのよいロックには仕上がってはおらず、シンセサイザーの音色が大きく影響してギラついた輝きに満ちたサウンドになっています。同調して、やはりアリカさんの歌唱も狂おしいものになっており、この曲を美しくも息が詰まるほどの焦燥感に溢れる作品へと昇華させていると思います。
 最後に余談となりますが、この曲で殊更印象的に思えるフレーズが一つあります。それは、短調に纏められたこの曲の中で、唯一、白昼夢の如く挿入された長調の間奏。刺々しい楽曲から(シンセサイザーではあるけれど)弦カルテッドの優しい響きを持つこの間奏に移った際には、聴者の緊張は解けて心地よい感覚に包まれます。しかし、それも束の間、再び妖しいシンセの調べと共に、忙しい楽曲へと戻っていく刹那の名残惜しさよ。まるで、美しい夢をみていたのに、目覚めと共に現実の世界へ突き落とされてしまった時のようです。ちょっとした事ではありますが、この険しさと優しさのコントラスト効果を上手く楽曲に取り入れている片倉さんの手腕には、とても感嘆しました。
桜の花は 狂い咲き
春告げ鳥は 狂い泣き
やがて私は 散りいそぐ
薄墨色の春に泣く 春に泣く





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