明治に遊ぶ  (第一回)

<「秀才文壇」を読む>   

 ここに明治三十四年十月に創刊された「秀才文壇」という雑誌が十数册ある。

大正末期まで三百号以上も続いた文芸投稿雑誌であるが、文学史的にみて「文章

世界」「少年世界」ほど脚光を浴びなかったせいか、また保存状態も良くないた

めもあり、なかなか揃っての通覧はむずかしい。

 創刊当時の何冊かには、そのころ盛んに投稿をつづけていた若山牧水、相馬御

風、三木露風らの少年時代の作品が載っている。

 牧水や御風の同誌への投稿は所蔵の創刊当時のものが最後と思われ、以後作品

はみられない。

 当時十六歳だった牧水も翌年には早稲田大学に入っており、十八歳の御風は三

十七年<念珠の力>を「小学世界」に発表。三十八年には歌集「睡蓮」を出版。

さらに四十三年には「文章世界」で選者として登場している。

     また当時十二歳で新体詩などを投稿していた三木露風の作品は、『とても小学生の作とは思えない』と、選者

    の岸上質軒をして驚嘆たらしめている。これら幼少時代の作品は、おそらく個人全集にも収録されることもない

    であろうし、文学史的にもほとんど問題にもされまい。だがこれらの作品を目の当たりにして、小・中校生だっ

    た彼らの文学にたいする思い入れというものが伝わってくる。

     牧水の数々の入選作(和歌・俳句)などには、母親を詠ったものが多くみられる。姉弟中のただひとり男子だ

    った牧水が特に母親から可愛がられていたこと、母親の名マキを自分の号牧水に使ったと言われることからも、

    中学時代延岡に寄宿していた彼が母を想って作ったものかとわたしも遠くに思いを馳せるのである。

     口絵、挿絵では鏑木清方、梶田半古、中村不折、岡田三郎助らが健筆をふるい、投稿者の中には竹久夢二の名

    もみえる。

     明治時代の雑誌の魅力にとりつかれ集めはじめて久しいが、最近では古書店頭はもちろん古書目録にもすっか

    り顔を見せなくなった。年々数がへって行くのは致し方ないことだが、わたしなりにすこしでも多く集めて大切

    に保存したいと考えている。

     すこしでも多くの人が、明治時代の雑誌に関心をよせていただければ嬉しい。ただそうなるとますます手に入

    る雑誌が少なくなるだろうといささか心配でもあるが・・・。