Rory Gallagher

アイルランド出身のブルース・ロック・ギタリスト。その歯切れの良いサウンドはもちろん、チェックのシャツにジーンズ姿で塗装の剥げたストラトキャスターを手にステージに立ち、人なつこい爽やかな笑顔と気取らない人柄も多くの人に愛された。'95年に46歳という若さで亡くなったが、いまだに世界中のファンの心に彼の残した作品と笑顔の想い出は深く刻まれている。


ロリーもまた私にとっては別格の存在です。彼のサウンドは実に軽快かつエキサイティングで、いつ耳にしても新鮮な感動を与えてくれます。疲れたとき、落ち込んだとき、ロリーのアルバムを聴くと元気づけられるのは、きっと流れてくるギターと歌声の中に短い生涯をギターひとすじに捧げ、懸命に生きた素晴らしい天才ミュージシャンの人生を感じ取るからにほかなりません。


概略紹介Rory Gallagher

1948年3月2日 アイルランドはバリーシャノンに生まれたロリー・ギャラガー。 彼の少年時代は多くのギタリストたちがそうであるように幼い頃からギターを手にし、バンドを組んだりしていた。15歳当時にはアイルランド国内をはじめ,ヨーロッパ各地に遠征し、ダンス・ホールなどへの出演をしている。当初はチャック・ベリーなどを聴いていたようだが、同年代のキダリストたちと同じく、やがてブルースに傾倒していく。'67年。バンド 第1期 「テイスト」 として数曲のレコーディングをしたが、ロリーはもっと自分に合った音を求め、ジョン・ウィルソン、リチャード・マックランと第2期テイストを結成し、'68年にはイギリスへと活動拠点を移し、ポリドールからアルバム 「テイスト」でデビューする。当時、英国ではエリック・クラプトン、ジャック・ブルース、ジンジャー・ベイカーのスーパー・トリオ、「クリーム」 が話題を呼び、ブルースを取り入れたロック・バンドがブームであった。こうした追い風もあってテイストはシーンの表舞台に飛びだし、'70年のワイト島フェスでも人気を博し、大変に評判が高かったと伝えられる。しかし、バンド内ではトラブルが続き、'71年には解散のはこびとなってしまうのだった。

テイスト解散後、ロリーはソロとして再出発するが、それまでのトリオの形を継承したバック編成でスタートする。'71年、「RORY GALLAGHER」 でソロ・デビュー。その同じ年の末には早くも 「DEUCE」 を発表。翌年の'72年にはライヴでこそ本領を発揮するロリーのステージを封じ込めた 「LIVE IN EUROPE」 をリリース、高い評価と順調なセールスを記録し、彼の名は世界に知られるようになる。その後 '73年2月に 「BLUEPRINT」 同年11月 「 TATTOO」 と勢いに乗って発表、翌年 '74年には母国アイルランドの紛争地ベルファストにおけるステージを収録した 「IRISH TOUR '74 」 をリリースし、この年に初来日を果たしている。翌年'75年「 AGAINST THE GRAIN 」 を、続く '76年にはディープ・パープルのロジャー・グローヴァーをプロデューサーに迎えた 「 CALLING CARD 」 でモダンな音づくりで新たな面を見せている。それから'82年の「 JINX 」 までコンスタントに作品をリリースするが、その後しばらくは作品を発表していなかった。'87年、彼自身のレーベル、"カポ"を設立し 「 DEFENDER 」 で復帰、過去の一連の作品の権利を買い取り、新生ロリーはスタートしたのである。'90年、「FRESH EVIDENCE 」 を発表し、'92年2月には久しぶりに来日し、トレードマークの使い込まれ色剥げしたストラトで往年の熱血ステージぶりを披露、ファンを喜ばせてくれたが、残念ながらこれが最後の日本でのステージとなってしまった。

そして、'95年6月14日、訃報は突然に届けられた。長年愛飲してきたアルコールによって彼の肝臓は移植を必要とするまでに至り、その手術で合併症を引き起こし、子供の頃から慣れ親しんだアイルランドはコークにおいて天才ギタリスト、ロリー・ギャラガーは天に召され、伝説となった。享年46歳、あまりに若く、惜しまれる死であった。今、ロリーが生きていたら50代になっているだろう。亡くなった人の歳を数えるほど虚しいことはないと分かってはいるが、人生を重ねたロリーがどんな音を聴かせてくれていたのだろうと思うと残念で仕方がない。彼の遺した作品はどれも輝きを失うことはなく、フレッシュで活き活きとした情熱をもって聴く者を包んでくれる。音楽に一生を捧げ、駆け抜けて行った彼の遺産をいつまでも大切に聴き続けていきたい。


Favorite Album


「FRESH EVIDENCE」
 1990年作品


1. KID GLOVES
2. THE KING OF ZYDECO
3. MIDDLE NAME
4. ALEXIS
5. EMPIRE STATE EXPRESS
6. GHOST BLUES
7. HEAVEN ' S GATE
8. THE LOOP
9. WALKIN ' WOUNDED
10.SLUMMING ANGEL
残念ながら遺作となってしまったソロ14作目の作品。
彼の作品は本当にどれも完成されており、1枚だけを選ぶことは至難の技なのだが、今作が遺作であることを思うと聴くと感慨もひとしお。アルバムはいかにもロリーらしいリズミカルなロックン・ロール仕立ての1で始り、敬愛するアレクシス・コナーに捧げられた4、ワンテイクで録られたサン・ハウスへの賛歌 5、ずしりと重みのある極太なスタイルでまとめられた7、彼独自の哀美なメロディーラインの10など一曲たりとも無駄がなく、妥協を許さなかったロリーの才能が散りばめられた最後の作品である。