その5 振替に御用心
既に主な論点は自分では書き尽くしたつもりだったのだが、
実務的な作成という視点で見れば、まだもう少し書き加えて
おいたほうがよいかなと思う点が幾つかなくもないかなと思い始めた。
(相変わらずこのあたり、いい加減なんで申し訳ない(^^;)
今回はそのうちの1つである、振替について記してみたい。
通常、売上債権の増減変動は、売上による発生増加と回収による
消込減少が想定されている。
よって、
売上収入=売上高+期首売上債権−期末売上債権
で、売上による収入は計算できるというのが標準的なテキストの
説明である。
ところが、現実にはそれだけでは済まないわけで、
例外的な項目がいくつか存在する。
それが、相殺・貸倒・振替である。
既に相殺については扱ったのだが、貸倒についても大きな問題は
ないだろう(引当と貸倒とを混同しないようにってくらいかな?)。
あえてコメントするなら、間接法の場合、営業キャッシュフローの結果
計算そのものではこれは考慮しなくても差額計算だけでよい(#)のだが、
非資金項目のキャッシュへの影響を開示するという観点からは、
プラスマイナスで貸倒損失を表示するほうがいいのかもしれない。
((#)計算ロジックとしては、営業キャッシュフロー活動内だけでの
増減なので、結果に影響を与えないという話である)
さて、では振替についてはどうだろうか、というのがここでの検討である。
たとえば、売上債権が不良債権化して、投資等の破産債権等に
振替を行う場合を考えてみよう。
ある債権について、前期は売上債権で表示し、
当期は投資等で表示している筈であるから、
間接法を前提として、単純にB/S増減をとると、
営業キャッシュフロー・・・プラス
投資キャッシュフロー・・・マイナス
なんて計算が出てくることがありうるわけである。
この振替は、実際のキャッシュフローを伴わず、あくまでも
自社内での表示組替えの結果に過ぎないのだから、
キャッシュフローの変動を認識しては間違いということになる。
よって、補正計算が必要ということになる。
で、実践的な話なのだが、比較貸借対照表方式で作成を行う場合、
あらかじめ振替分を前期の欄で組替えしておくことが簡易である。
(制度会計ベースの場合はこれだけで済まないだろうけど)
言ってみれば、前期のB/SをRestateしておくということである。
ちょっとしたことなのだが、手順の工夫が大事という一例である。
大雑把な例示を行ってみると、
勘定科目 | 前期 | 当期 | 増加 |
売掛金 | 100 | 10 | △90 |
投資等 | 20 | 60 | 40 |
この増加内容の中に、投資等30/売掛金30という振替が含まれている
とすれば、
勘定科目 | 前期 | 振替 | 前期’ | 当期 | 増加 |
売掛金 | 100 | △30 | 70 | 10 | △60 |
投資等 | 20 | 30 | 50 | 60 | 10 |
とすれば、実態を適切に表現していることになる。
料理と同じで、「鍋に入れるまでが勝負」なのである(^^;。
注)
このように期首貸借対照表の組換えを行うという手法は、
合併等による資産・負債の増減分析の際にも顔を出すので、
テクニックとして知っておくのは損にはならないのではない
だろうか?(^^;
あと、重要な非資金取引なら注記の対象かどうかも
考慮する必要があるだろうというのも忘れないように・・・。