その6 役員賞与の行き先

今回は「落とし穴」というよりも、処理の基礎となる
考え方の確認に重点がある。

ま、実際に処理の分岐が例として見られるという
意味では「落とし穴」なのかな(笑)。


「キャッシュフロー計算書で、役員賞与はどの活動区分に
表示すべきか?」
(注)ここでは商法の利益処分対象であるプロパーの役員賞与に話を限定している。

これは、多少悩ましい論点であるかもしれない。

つまり、配当と同様に利益処分項目という側面を重視すれば
財務キャッシュフローとして認識するような気もするし、
人件費支出だという側面を重視すれば、
営業キャッシュフロー
という気もするからである。

実際、INETで検索してみると、財務キャッシュフロー処理
している論者の例がいくつか見られた。
特にシェアウエアなどの例に多いので注意
また、書籍関係を見ると扱っていない例が多いが、扱っている
場合には営業キャッシュフロー処理しているようである。

日本公認会計士協会の実務指針の例示を見ると、
営業キャッシュフロー処理していることがわかる。

では、米国ではどうなのだろうか?

テキストには出ていなかったので、INETでEDGARで幾つか
あたってみたが、"Directors' Bonus"の表示はなかった。

で、ふと思いついて、キヤノンの有価証券報告書を見てみた。
答えはここに在った。

つまり、この会社は米国基準準拠なのだが、
日本基準との差異について注記
があるのだ。

「(イ)利益処分による役員賞与は「販売費及び一般管理費」として処理しております。」

そう、日本と違って役員賞与は利益処分項目になっていない
ようなのである。

では、日本の場合どう考えるべきなのだろうか?

確かに配当に準じて財務キャッシュフロー処理する論者にも
一理はあるだろう。

だが、直接法による作成時に人件費支出を把握することとの均衡及び、営業キャッシュフローが「その他」としての性格を帯びていることを鑑みれば、現状では財務キャッシュフローとしての積極的な定義が与えられていない以上、「その他」として営業キャッシュフロー処理するしかないというのが現時点での私の判断である。

・・・ということで、今回については、実務指針の処理に
準拠するのが妥当と考えられるようである。

人によっては異論あるだろうなとは思いますけど。