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苦悩について
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浅見さんは本当に心配そうに「俺ってそんなにひどい講師なのかなあ」とつぶやいた。自覚のないことは幸せだと思う。悩まないから。まわりはともかく、本人はケロッとしている。 瀬尾まいこ『図書館の神様』
病院の外を元気に闊歩している時は気づかなかったが、世の中には、こんなにもたくさんの、傷つき、具合を悪くしている人がいたのだ。 山口雅也『奇偶』
なんでもないアスピリン一錠でも、患者を思いやり、苦しみを自分のものにできる友人の手から与えられれば、患者にとってどんな意味を持つだろう。その大きさは科学では測れない。 チェ・ゲバラ
自分の苦労を「ご苦労」と拝める存在になれるかどうかということです。 広瀬杲『観経四帖疏講義』
病んでも、苦しんでも、信仰を医師の代用品に使用してはなりませぬ。病いは恩師なり。 中村久子『こころの手足』
苦労人の特長のひとつは、怒っても仕方のないことは怒らないということである。苦労人には、世に不幸があり不運があることはほとんど仕方のないことであると感じられる。それにいちいち怒ったり恨んだりしてもはじまらない。 佐藤忠男『長谷川伸論』
楽しかったときと同様、つらかったとき、癪にさわったときのことも、大切に胸の奥にしまっておくといいわ。だって結局のところ、人生って、その両方からできあがっているんですものね。 ロザムンド・ピルチャー『シェルシーカーズ』
涙をもってパンを食うた事のない人の人生観は、いかほど価値のあるものであろうか。 西田幾多郎
まわりにまだ苦しんでいる人がいるのに、自分一人が安心をうるということは卑怯だ。 上原専禄
完全な人間はいないっていうことがわかったら、すごく楽になった。 想田和弘『精神』
私が自分を中心にものごとを考えたり、したりしているかぎり、人生は私にとって耐えられないものでした。そして、私がその中心をほんの少しでも自分自身から外せることが出来るようになった時、悲しみはたとえ容易に耐えられるものではないにしても、耐えられる可能性のあるものだということを理解出来るようになったのでありました。 パール・バック『母よ嘆くなかれ』
私は、人々に大きな影響を与えていく偉大な宗教家とは、当時の人々の苦悩がそのまま己れ自身の苦悩と一つになっていく、従って己れの苦悩を克服したとき、それが同時に人々を苦悩から解放することにつながっていくという、そういう人物だったと思っているのである。 井上洋治『法然』
辛いことが、辛くなくなることはない。自分の腹に収める場所を見つけるだけだ。 高村薫『レディジョーカー』
泣くがいい、悲しみを口に出さずにいると、いつかいっぱいにあふれて胸が張り裂けてしまうぞ。 シェークスピア『マクベス』
人がいやいやながらいる処は彼にとって牢獄である。 『人生談義』
苦悩はその原因が発見されないかぎり、人々を不安にする。 エリアーデ『永遠回帰の神話』
それでもま生きているから悩めるの 岡田温子
苦しみがなかったら、人間は自分の限界を知らなかったろうし、自分というものを知らなかったろう。 トルストイ『戦争と平和』
よろこんで、今日の出来ごとうけて、苦しみがあっても、その苦しみといっしょに、道があるのや。 山崎よん『みんなおあめださまのおかげです』
鬼や畜生やと憎んだ人が、まことは、このわてを、この広い道に、出してくれんがために、あの姿になって、現われてくれた仏さんや。 山崎よん『みんなおあめださまのおかげです』
挫折を知らないような人に、仏智に至る道など絶対ない。 今村仁司『仏智に至る道』
涙とともにパンを食べた者でなければ、人生の味はわからない。 ゲーテ
願生浄土という方向が立てば、いろいろな苦悩もあれば苦労もあるけれど、明るい顔して困っていける。方向がわからんと困ったままだ。 訓覇信雄『傑僧訓覇信雄』
人間は自慢するものがほかに何もないと、自分の悩みを自慢にする。 G・グリーン『燃えつきた人間』
痛み経て 真珠となりし 貝の春 青木恵哉
人生はどんなに苦しいことがあっても、しかも生きるに値する。この一事こそ私が今日までつかみ得た確信である。 尾崎秀実
僅かなる小さき願いもだんだんに 剥がれはがれて諦めとなる
諦めて諦めてやるせなき 寂の底より湧くは念仏 中井勝恵
今、人生というものをこう考えている。もし苦しみを経験しないで人生を生きていけるというなら、あなたはまだ生まれていないのだ。苦しみを経験して、その原因がはっきりわかっているというのなら、あなたはまだすべての選択肢を検証していないのだ。そしてもしあなたがつぎに同じ苦しみに出合ったとき、その苦しみを回避できると思っているなら、あなたは自分の背後を見落としている。そして、もし苦しみを避けるために生きることや愛することをやめてしまうのなら、あなたはかつて味わった素晴らしいものをわかっていないのだ。 ニール・サイモン『第二幕』
災難を逃れるのが念仏の利益ではない。
どんな災難をも引き受ける力が念仏である。
病をなくするのが念仏のはたらきではない。
どんな病気をも無駄にしないのが念仏のはたらきである。
仏は人間の苦を救うのではない。
苦悩の人間を救うのである。 太田祖電
人間にとって一番辛いものは、貧しさ・病気でなく、それらが生む孤独と絶望のほうである。 遠藤周作『イエスの生涯』
何人も彼から苦悩を取り去ることはできないし、彼の代わりに苦悩を苦しむこともできない。 フランクル『夜と霧』
汝が息子を愛するからと、子のために悩みと苦痛と失望を免除してやりたいと願っても、そうしてやれるか。 ヘッセ『シッダルータ』
深い悩みをもつことが人生を深く生きた人です。 安田理深
神がわれわれに絶望を送るのは、われわれを殺すためでなく、われわれの中に新しい生命をよびさますためである。 ヘッセ
木は不幸ではない。冬の木は葉を落として素裸かもしれないけれど、不幸ではあるまい。 開高健
十分に悲しめる者こそが、十分に喜ぶことができる。 野田正彰
人は苦悩を通じてしか清められない プラトン
貧、人を苦しむるにはあらず、人、貧に苦しむ 売茶翁月海元昭
世の中の人は、パンの問題に苦しむというが、実は、パンを求むる心に苦しめられているのである。 清沢満之
幸せな人間は幸せを逃がすまいとして苦しんでいる。 金子大栄
問題の困難さが人間的スケールを決定する 西洋のことわざ
悲劇がないと私たちが浄土を求めるということは絶対にない。 竹中智秀
何事も今日の歓楽すぎぬれば必ず明日は苦患とぞなる
道のありがたみを知っているものは、道のないところを歩いた者だけだ。 大島亮吉『山』
優という字は人偏に憂うると書く。人の淋しさ、侘しさ、つらさに敏感になること。これが優しさということであり、また人間として一番優れていることはないかしら。 太宰治
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