青いバラのため息




幻の青いバラ”ブルーヘブン”が次々花をつけている
青いバラに憧れて
もっと青い色はないものかと追い求め
今春手にしたこのバラは
従来の紫色をした青バラではなく
ほんとうに青と呼べるブルーグレーの花色をしている

もともとバラには青い色素がないので
自然界に青いバラは存在しない
だからたくさんの栽培家が青いバラの作出を夢見て
長い年月をかけての品種改良が続けられてきた

わたしは今まで何種類かのブルー系のばらを集めてきたが
このどれもが病気や害虫の被害を受けやすく
初心者にはとても育てにくい
そんな話をバラ友だちとしていたら
ある人が言った

「バラは青い色なんかになりたくないのよ」

この言葉はなにか心にしみるようだった
バラには本来生まれ持った特有の色があった
それで十分美しかったのに
人はいつもないものを求める

今朝起きてみると
この花は3つともなくなっていた
つぼみはそのまま下にころがり
あとの花は花びらがバラバラになって散っていた
誰がこんなことをやったのだろう・・・

でも
不思議と腹が立たなかった
盗まれたわけではないから
花はまだこれからも咲く
それに
こういうことをする人の心理は
何となくわからないでもない
何かきっと面白くないことでもあるのだろう

世の中には悪いニュースが後をたたない
その中で事件を起こしているのは
ほとんどが普通の人だ
根は悪い人じゃないのにとか
何が彼をそうさせたのかとか
色々語られているけれど
人がもしみんな
自分が本来持っている良い物を認識し
それを良しとし
それをずっと持ち続けていれば
心がそこまでゆがむこともないだろう

憧れのブルーのバラが咲いたとき
その不自然な青白い色に
わたしは心から喜べなかった
ただコレクションとして
こんなの持ってるのよと
人に自慢するには良いかもしれないが
どうもそういう気にもなれない

「バラは青い色なんかになりたくないのよ」

この言葉を聞いて以来
か弱い枝にうつむき加減に咲くブルーヘブンをみると
何かふっとため息をついているように見える

さっき
息子が父親に恒例の散髪をしてもらっていた
途中前髪を真直ぐそろえた姿は
おかっぱ頭だった3歳の頃とだぶる
顔はどんどん大人になっていくけれど
時々あのいたずら盛りだった頃の表情を見せる
好奇心旺盛で
新しいものをみつけると
「しゅごいしゅごいっ!」と歓声をあげていたあの頃・・
そうした感動する心を
いつまでも持ち続けていて欲しいものだと思う

最近学校でさかんにボランティアを勧められている娘は
一時期あっちでもこっちでも良い顔をしていて
そのうち疲れてしまった
自分のできる範囲をよく考えて
面倒だと思ったら素直にやめたらいい
ボランティアは心からするものだから
それが義務になったり
あるいは評価の対象になったり
ただ単に”やりがい”を求めて没頭するのは
ちょっと筋が違う
せっかく物心ついた時から病気の家族がいて
小さいながらも何らかの手助けをしてきた経験があるのだから
持ち前のやさしさで
自然で無理のない心からの手助けができるようにと
わたしは願ってやまない

みんな生まれ持った色がある
そのままの色で生きていけたら
一番幸せだ





<目次     次へ>