クリスマスイブ




先日、教会のクリスマス礼拝も無事終わり
世間がクリスマスムードに浸っている今日
わたしはおもむろに台所の大掃除などはじめた
冷蔵庫を動かして背面をふきながら
昔の冷蔵庫はここにごちゃごちゃした線?があって
たまったほこりと油の汚れをおとすのが大変だったなあと思い出す
一方
もう20数年前から使っている電子オーブンレンジは
2年程前までは掃除のたびに抱えて移動していたが
今は重くてもう持てないので
片方ずつ持ち上げては下をふく

カーテンを洗ったり窓をふいたり
掃除が一段落したのはもう夕方で
クリスマスイブではあるけれど
夕食は”冷蔵庫にあるもの”ですませる
毎年そうなのだが
教会のクリスマス礼拝が終ると気が抜けてしまって
クリスマスイブだろうがもういいわという気になるのだ

それでも
子どもたちにとっては
クリスマスはプレゼントがもらえるのでやはり楽しい
娘はずっと前から欲しかった帽子をやっと手にした
息子はなじみのおもちゃ屋さんで
小3の頃流行った『ミニ四駆』を買った
当時爆発的な人気だった商品が今は格安になっているので
思い出にとっておきたいらしい

子どもたちがまだサンタの正体を知らなかった時代には
プレゼントを用意するには
ずいぶん頭を悩ませたものだ
何しろ子どもはここぞとばかり高価なものを欲しがる
親はどうにかして安価にすませようと
おもちゃ屋の安売り広告を見ては商品を探すのだが
人気商品は早く売切れてしまうし
きわめつけは
やっと手に入れたかと思えば子ども自身が
「やっぱり違うものの方がよかった」
と気が変わることもあって
思わず
「サンタさんも都合があるんだから
クリスマスの3週間前までには決めないとダメなのよ」
と”変更不可”を言い渡す

こうして毎年何とか苦し紛れの言い訳をしながら過ごしていたが
息子が小5の時にはもうそれも難しくなって
結局当時小2の娘もその時一緒に
サンタの正体を知ることになった

「おかしいなとは思っていた」
という息子はまだよかったが
すっかり信じていた娘は大ショック
「知らない方が良かった・・・」
後々何度もそういうので
知らせるのは息子だけにしておけばよかったなあと
ちょっと後悔。。。
でも
その後、娘は
当分自分で「サンタはいる」と信じることにしていたらしい
その方が夢があって楽しいから
自分でムードを演出する

娘は小さい頃から自分で自分を納得させていて
思うようにならない場面に遭遇しても
「これでいいんだ」と自分に言い聞かせていることがあった
あれは4才の時だったと思うが
クリスマスに大好きなKITTYちゃんのお菓子の詰め合わせセットを見て
サンタさんが持ってきてくれたらと願っていた
手頃な商品だったのですぐに購入しておいたが
その後小さなウサギのキーホルダーも気に入ったようだったので
それも付けることにした

当日
そのKITTYちゃんと一緒にウサギのキーホルダーを
娘の枕元にそっと置いて寝る
その後部屋が明るいので目がさめたら
まだ夜も明けないうちに子どもたちがプレゼントを見つけて
それぞれ嬉しそうにしている
よしよし、無事にサンタは来たんだね
こちらもほっとする

ところが
娘を見ると手にしているのは小さなキーホルダーだけ
「あれ?KITTYちゃんはどうしたの?」と聞くと
「KITTYちゃんは来なかったんだけど
ウサギさんが来てくれたの」
と嬉しそうに小さなウサギの頭をそっと撫でながらいう

えっ?!
夕べは確かにKITTYちゃんも置いたはず・・・
とあたりを見渡すと
寝ている間に蹴飛ばされたのか
KITTYちゃんはちょっと離れたところに見つかった
娘、大喜び

はじめ
自分の願ったKITTYちゃんがないと思った時
本心はがっかりしたはずだ
ウサギがいたってKITTYちゃんにはかえられない
それをどうして嘆かないのだろう・・?

ただ何事も我慢する”苦労性”ならちょっと問題だが
自分ではそれほど我慢とも思っていないのなら
生まれ持った性格なのだろうか
確かこういう人が近くにいた
すでに天国へいっている夫の母だ

小学校の時から目が見えなくなった義母は
自分が障害者であることを全く卑屈に思っていない人だった
いつもあっけらかんとしていて
嫁の立場のわたしにも
一度のグチも小言も言わなかった

料理の味付けが辛かったかなと心配していたら
「辛いのがおいしいねえ」といい
薄かったかと心配すると
「薄いのもおいしい」といった
いや、これは無理にそういっているのではなく
いつも自然に言葉が出ていたから
そういう性格だったのだろう

許容範囲の広い人は
周りの人をほっとさせる
義母があんまり良い人なものだから
わたしはある時
なんでそんな風でいられるのかと聞いてみた
すると答えは簡単だった
「わたしはただバカなだけよ」

自分の事をバカだと思っていたら
他の人のすることも何でもOKよということになる
でも自分をバカだと思うのもまた難しい
これは努力して体得したのだろうか
今となっては尋ねることもできないけど、、、

ウサギのキーホルダーを大事そうに抱いていた娘の姿は
忘れられないクリスマスの思い出となっている
男の子のようにあっさりした振舞いを見せる一方で
実に繊細な面ももつ娘に
一度義母の事をきちんと話しておきたいと思う
理想と現実の間で心ゆれる時
目が見えない現実の中で明るく生きていた義母の姿は
きっと生き方のヒントを与えてくれるだろう

明日が終れば今度はクリスマスの飾りを片付ける仕事が待っている
こうして今年も無事終るのだなあとほっとするのだった。。。





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