芳醇な香り


ただ今わたしの布団の中には
米ぬか発酵肥料とビール酵母菌が
電気毛布にくるまれてぬくぬくとしている
発酵肥料の研究をはじめて一年
さまざまな発酵の実験を繰り返しながら
ついに、こうじ菌や酵母菌を”可愛い”と思えるほどになったわたしは
自分でもかなり病気だと思う

昨年までは発酵肥料つくりはすべて屋外で行ってきたが
年が明けてからはあまりに寒いので
微生物の繁殖する適温に少しでも近づくよう
室内に持ち込んでごそごそやっている
今回米ぬか発酵肥料つくりをしながら
初めはこうじ菌の甘酒のような香り
次に納豆菌の香り
そして甘酸っぱい乳酸菌の香りから
最後は酵母菌のお酒の香りへと
米ぬか発酵肥料特有の芳醇な香りを楽しんでいるわけだが
家族からは「変なにおい」とヒンシュクをかっている(苦笑)
でも
これは3月にバラへ施すために作っているので
それ以降はまた外で作業するから今だけよ・・・と
しばしみんなには我慢してもらっているのだ(謝)

一方で今ハマっているのがビール酵母の培養
酵母菌はさまざまなアミノ酸を合成するが
中でもビール酵母は全ての必須アミノ酸を合成できる優秀菌
だから健康食品として人気が高い

ぬか味噌漬けを作るときには
米ぬかにビールを混ぜたぬか床を用いると美味しい漬物ができるという
米ぬかのかわりにパンをつかうと極上の漬物になるのだとか
これはビール酵母とパンの酵母が作り出す数種のアミノ酸が
旨味となって野菜を味付けしてくれるかららしい

今まで農業関係の本を読んできた結果
どうやら人間の体に良いものは植物にも良いらしく
こういう健康食品の類を上手く取り入れれば
無農薬栽培も夢ではないと思われる
今ちまたで人気のアミノ酸飲料は植物栽培にも有効らしい
というわけで
今回培養しているビール酵母は人間用ではなくてバラ用なのだ

さて
通常のご家庭ではビールが食卓の上るのは珍しくないと思うが
うちは教会なので飲酒の習慣がない
よって、ビールについての知識もない
現在ビールにはあまりに種類がありすぎて
一体どれを使ったらよいものか・・・と困っていたら
「ビール酵母入り」の濁り酒ならぬ濁りビールの存在を
バラのサイトのお友達に教えていただいたので
早速買いに行ってみた

うわぁ〜、ビールってこんなに種類があるのかぁ・・・
しばらく一缶ずつ原材料の表示など見ながら楽しんだ後
目的のビールを見つけたので購入
消費税込みで260円也

うちでは今は誰も飲まないけれど
夫は大学時代しっかりお酒の味を覚えているし
わたしに至っては
父親が大酒飲みだった関係から
小学校時代よりいろいろな種類のお酒を飲んでいて
高校生の頃には紅茶にブランデーを入れるのが好きだった
その頃にはもう父は亡くなっていたけれど
頂きものの洋酒などがまだあって
それをわたしが端から消化していたわけだ

人がお酒を飲むのは
酔う事で憂さを晴らしたり気分が良くなる事が目的の一つだが
わたしの場合酔うという感覚はどうも好きではなかった
わたしが好きだったのはただ単にその芳醇な香り
だから飲酒なんていつでも簡単にやめられた

このたびビール酵母入りの生ビールを買ってきて
一体通常のビールとどう違うのか疑問に思ったので
ちょっと夫に味見をしてもらう事にした
というのもわたしはビールの苦味が苦手で
これまでほとんど飲んだ事がないのだ

一口飲んだ夫がひとこと
「これはうちで作ってる肥料のにおいがするよ」

なるほど!
うちの酵母菌発酵した肥料とにおいが似ているとなれば
これはやはりビール酵母が生きている証拠か(喜)
というわけで気をよくしてビール酵母菌の培養をはじめた

酵母菌の繁殖に適した温度は28℃
今はちょうどとても寒くて暖房している室内でも23℃程度
これじゃあ繁殖は難しいかな、、
ちょっとでもあたたかい所はないものかと
ビンを抱えてはあっちへ置いたりこっちへ置いたりしている様子を
母が見て笑っている
この260円のビールで壮大な計画を立てているわたしの真剣な様子が
どうやらかなりコッケイにうつるらしい

いや、わたしはホントに真面目にやっているのだ
何しろ”年間のガーデニング経費1万円以内”を目標としているので
260円という実験材料費も決してムダにはできない



今なんとかビール酵母らしき白い粒々が表面に繁殖しつつある
米ぬかと混ぜているので初めはぬか臭かったが
5日目の今日はだいぶそれらしい香りがしてきた

小さなもので大きな事をやろうというわたしの野望は
またおかしなことを始めたものだと家族を呆れさせながら
こうして着実に進んでいる

今夜も発酵肥料とビール酵母の芳醇な香りに囲まれて眠る
あ、もちろん夜の間↑は布団から出しますけど(笑)




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