バージョンアップ


先日、街中で『豆腐石けん』なるものを見つけた
ほぉ〜、こんなものがあるのね
と感心しながらパッケージをながめると
どうやら豆乳とニガリで作ってあるらしい
うちでは母がよくお豆腐を作るので
いつでも豆乳は作ってくれるしニガリも常備している
これらを使ってそれらしいものができないかなぁ・・

わたしがいつも石けんつくりで参考にしている本
「石けんのレシピ絵本/前田京子著」に
『お母さんのミルク石けん』というのがある
これは母親になった友人に著者がプレゼントしようと考えたもので
材料にはその友人が赤ちゃんに飲ませて残った母乳を使っている
その母乳石けんは2本作られ
1本は赤ちゃんをお風呂に入れる時に使い
もう1本はその子が20歳になるまで大事に桐箱にはいっているそうだ
母と子のほんの一時期の思い出をこうした形に残すアイデアが
とてもほのぼのとしていて楽しくなる

現実的には育児は戦争みたいなものだから
そんな夢のようにほんわかしているばかりではないけれど
そういう中でも楽しみを演出するための
ちょっとした心配りがあると嬉しい

ということで
母乳とは内容はずいぶん違うけれど見かけは似ているので
このたびの豆腐石けんつくりにはこのレシピを採用する事にした
(詳しくは”色々な石けんのレシピ”を参照)

はじめてドキドキしながら石けんを作ってから
今年で4年目になる
さすがに今はあの緊張感はなく
ちょうどお料理をするような感覚で気軽に石けんつくりを楽しめるようになり
最近はこうして自分なりのアレンジにも挑戦している

前回は憧れの自家製ローズヒップ(バラの実)を使った石けんを作ったが
においの方が今ひとつだし
使用感についてももっといいものができそうに思うので
改良版を制作するべくただ今頭をひねっているところだ
どうせなら色もそれらしくしたいので
調味料のパプリカでほんのりピンク色に着色してみたい

もっとああしてこうしてと
作る端から反省しては更にワンランク上を目指す
すでにできたものでも十分良いものなのだが
やはり向上心は持ち続けていないと、思うわけだ
失敗を恐れて安全な事だけしていれば
安心ではあるけどずっと停滞したまま
どんな新製品にも必ずバージョンアップ版が出る
わたしももっとバージョンアップしたい

ただ
いくら新しいものやもっと上を目指すといっても
基本的なことができていないととんでもない事にもなる
石けんつくりに使う苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)は
強アルカリ性の劇薬だ
薬局で売ってもらうにも印鑑が必要なほど
自己管理責任が問われるものであることを決して忘れてはならない
だから新しいレシピを考案するといっても
何でも混ぜればいいじゃないとノーテンキではいられないのだ

例えば使うオイルでも
オリーブオイル、パーム油、ココナツ油、アボカド油、ホホバオイルなどなど
見かけはどれもただの油だが
それぞれの持つ特性は全く異なり
特に昔化学で習った”油のケン化率”についてある程度理解していないと
むちゃくちゃなオイルの配合で良い石けんはできないし
苛性ソーダの量が過剰になると危険でもある

それと今回のようにオイル以外に混ぜ物をする場合も
それがどういう性質のものかを考えないと
とんでもない化学反応を起こすこともありうる
このたびのニガリは中性だから別に問題はないと思うが
それでも混ぜるタイミングなどしばらく考え込んでしまった

自分なりのバージョンアップをめざすなら
何も考えずに既存の方法に依存しているわけにはいかないし
だからといって闇雲にあれこれやっても結果はついてこない
昔から「基本は大切」と繰り返し言われてきた意味が今はよくわかる
わたしは短気なのですぐに基本を飛び越えたくなるので
何をやっても一度や二度は失敗して
すごすごとまた基本に立ち返ってやり直している

じゃあ面倒だから何も考えずに本の通りにやっておけばいいじゃないかといっても
実は本に書いてある事も全てが正しいわけではなく
忠実にやってもその通りにならないことも多い
結局人の作ったマニュアルなんて完璧なものではないので
自分で考えて試行錯誤するしかないのだ

さて
この豆腐石けんに出会うちょっと前に
ある本で「豆乳ローション」なるものの存在を知って
これもぜひ作ってみたいと思っていたので
ちょうどいい機会だからあわせてトライすることにした

この豆乳ローションなるものの効用は何かといえば
大豆に含まれるフラボステロンは女性ホルモンに似た作用があるので
使っているとムダ毛が薄くなりお肌がすべすべになるとのこと
すでに市販品も販売されていて評判になっているらしい
もうずっと化粧水は自家製のものを使っているわたしとしては
久しぶりに面白いものに出会ってすぐに作りたくなった

興味のある方のためにつくり方をご紹介↓

<材料>
成分無調整豆乳  500cc
レモン汁       2個分(70〜100cc)
消毒用エタノール  60cc
<作り方>
@ 豆乳を弱火にかけて、60度になったらレモン汁を入れる
A とろみがついたら火を止める
B アルコールを加えてしばらく置く
C ザルにフキンとキッチンペーパー(2枚)を敷いて
   Bを流し入れる
D 軽く絞ってビンに保存(冷蔵庫で1週間保存可能)
   長期保存する場合は小分けにして冷凍し自然解凍して使う

作ってみると何となく豆乳くさいけど
使用感はさらっとしていて結構良い
とりあえず飽きるまでは使ってみよう

それにしてもこんなの初めに考える人はすごいなあと感心する
わたしのやっていることは
せいぜいこうして先人が作った道を追いかけながら
途中から自分の道に分かれていくようなものだが
何でも”初めの一歩”を踏み出す人はすごいと思う

そんな大それた事はとてもできないけれど
ちょっとした身の回りのもので楽しむ自分流の暮らしを
今年も色々チャレンジしながら実現してみたい





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