潔くあること


息子の高校受験が始まっている
自ら高い目標を設定し
合格可能性20パーセント以下(つまりやめておけというレベル)から
一念発起して今日にいたるまで
目標があるとこれほど頑張れるものなんだなと感心するくらい
あのあまり勤勉ではなかった息子が頑張ってきた
このたびその一番高い目標へのチャレンジが終わり
何とか互角に勝負できるところまでこぎつけての受験だったが
残念ながら結果は不合格
十分予想された結果とはいえ
やはり本人良い気持ちはしない

それでも
現実的な第一志望校へ向けて
心も新たに
実にあっさり再スタートする様子は
親を安心させるものだった

わたしは心配性なので無謀な受験の経験がない
だからそういうことをする人を見ると
なんでわざわざ嫌な経験をしようとするのかと思ってきたが
今回息子のチャレンジを見て
これを機会に自分はどの程度の者であるのかを冷静に判断することは
今後の人生に実に益となると感じている

人は誰でも未知の可能性を秘めていて
だからこそ色々なことに挑戦してもみるのだが
物事が上手くいくと自分を過信するし
一方上手くいかないときに
それを自分のせいだとはなかなか認めたくない

受験が失敗した原因として
当日の体調が良くなかったとか
思わぬトラブルがあったからとか
あるいは
ちょっとした勘違いでミスしてしまったからとか
色々な言い分を聞くことがあるけれど
やはり一番の要因は自分の力が及ばなかったという事だろう

自分はこれでいっぱいいっぱいなんだなあ・・
壁にぶつかってつくづくそう思う事がある
「やってやれないことはない」
とはいうけれど
現実には一生懸命やってもどうしてもできない事がたくさんある
特別な才能を持ち合わせた人ならいざ知らず
大多数の凡人には
”あきらめ”という潔さも要求されるのだ

それでも自分はやれると思っている人は
どうしてもあきらめることができず
何度でも無意味な失敗を繰り返す事がある
「自分はこんなところにいるような人間じゃない」
と言って
せっかく入学した学校をやめ
あるいは仕事をやめ
そうして自分の思いの向くままにたどり着いたところでも
またすぐに面白くなくなる

長い人生の間には
そんな自分のこだわりや思いを
時にバッサリと断ち切らなくては
新しい芽も出てこない

時はちょうどバラの本剪定の時期
来月の芽だしに向けて
余分な枝を切り取り
長さもぐっと短く切り詰める

この時枝数をたくさん残すと
やがて伸びてきた新しい枝がごちゃごちゃと込み合って
通気性が悪くなる事から病害虫が発生しやすくなり
生長のためにも良い影響がない
また
枝の長さを思い切って短く剪定すると大きくて豪華な花が咲く
だが
その花もいつまでも枝についたままだと
次の新しい花が出てこない

バラは切る事で生長し
美しい花を咲かせる

人間も良い花咲かせるためには
時々余計な心の枝葉にハサミを入れたほうが良い
あっさりと潔い人ほど好感を持たれ
執念深いと嫌われる

明後日は
キーボード奏者である友人のライブに行く予定にしている
長いキャリアをもつ彼女は
自分の音とスタイルを持ってはいるが
ライブに行くといつも違った角度からの演奏を聴かせてくれるので面白い
「これが今やってる事のすべてというわけではないけどね」
そう言いながら
ひとつのことに固執せず
常に視野を広く持っているところから
また新しい世界が広がる

来月には彼女のうちへ遊びに行こうと思う
その頃には例の『豆腐石けん』が使えるようになっているので
ささやかな手土産にする
そこでわたしも
「これが今やってる事のすべてというわけではないけどね」
そう言いながら
いつも面白いものを探してきょろきょろしてるのよと
他愛もない話をするのを楽しみにしている




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