憧れのハイヒール


昨年の夏
4年生の時から声楽を習っている娘に
「オペラに参加してみませんか」とのお誘いがあった
オペラ?!とちょっとびっくりしたが
どうやらキャストは専門家の方たちがつとめ
そのバックで歌う合唱団の団員を募集しているらしく
”その他大勢”程度なら何とかなるでしょうということで
参加することが決まった

電車を乗り継いで
繁華街にある練習場までひとりで出かけるのは
娘にとってはじめての経験
そこでいっしょに歌う人も知らない人ばかり
しかも参加者はみんな大人で
小学生は娘がひとりだけ・・・
大丈夫かなあとはじめ少々心配もしたが
持ち前の人懐っこい性格に加え
教会といういつも人の出入りする環境の中で育ったせいか
初日からそれなりにちゃんとなじんで
無事「面白かったよ〜」と言って帰ってきた



今回上演される作品は
あの『人魚姫』の物語にドボルザークが音楽をつけたオペラ『ルサルカ』
物語は知っていてもそれがオペラになっているのは初耳で
”その他大勢”とはいえ
何だかすごいものに参加させてもらうんだなと
ちょっとどきどきする

ところが
実際に練習が始まってみるとだんだん状況も変化して
「せっかくだから猫の役でも」と
魔女のお鍋をかき混ぜる猫を演じるお誘いがあり
娘、大いに喜ぶ♪
そのうちミュージカル『キャッツ』で使う本物の小道具
黒猫の耳としっぽを持って帰ってきた
黒いTシャツと黒いズボンをはいてこの耳としっぽをつけ
黒猫に変身するのだそうだ

そうこうするうちに今度は
「結婚式の場面でドレスを着て踊る役を」と言われ
それはとってもとっても嬉しいけれど
結婚式の場面にふさわしいドレスなんてないよねぇ・・
と心配になった
するとドレスの方は素敵なのを貸していただけることになり
またまた娘、大いに喜ぶ♪♪

が、問題はそのドレスにあわせる靴がない
わたしはハイヒールというものが苦手で
しかも白っぽいドレスに合わせられるようなシャレた靴はもっていない
それと
仮にわたしがそのようなものを持っていたとしても
わたしの足幅と娘の足幅は全く違うので
同じ靴をはくことは不可能に近い

わたしが二十歳をむかえる頃
この町の成人式は振袖ではなく平服が原則で
その時初めて紺色のワンピースに合わせて
黒いハイヒールのパンプスを買ってもらった
その頃はまだ今のように3Eや4Eといった
幅の広い足の人用の靴が出回っておらず
”足を靴に合わせて押し込む(!)”のが主流で
わたしの様に足幅の広い者は
長時間靴をはいていると足の裏に縦じわがよったものだ(苦笑)

こんなものをいつもはいていたら外反母趾になる、、、
そんな心配から次々幅の広い靴が開発されるようになり
現在はわたしにとってはきやすい靴が増えた
しかしそうなると今度は
娘に合う靴がなかなかない
”あちらを立てればこちらが立たず”
世の中なんてそんなもの
ぶつぶつ文句を言っても仕方がないので
とにかく”一足”を求めて探すべし

娘がまだ幼い時には
自分で脱いだりはいたりが簡単にできるようにと
スポッとはけるタイプの靴を探したが
どれも幅が広すぎて脱げてしまうので
結局いつもマジックテープつきのあまり可愛くない靴ばかりになった
ペタンコの靴でもそうなのに
今回はハイヒールとあって
足を入れると先の方へずずーっと落ち込んでしまう
あれも痛い、これもダメ・・と色々試して
やっと一足だけ何とかはけそうな靴が見つかった



ちょっとトゥシューズにも似た淡いピンクベージュのハイヒール
それはそれは娘、大いに喜ぶ♪♪♪

こうしてオペラのための衣装はそろった
あとは歌と踊りの練習のみ〜・・・・ではない!
生まれてはじめてハイヒールをはく娘は
歩き方がわからないのでロボットになったように不自然だ(汗)
やおらそこから歩き方の講習が始まる

はい、あご引いて、胸はって、お腹から前に出るように・・と
何度も部屋の中を行ったりきたり
レディーへの道は険しい。。。

3月19日、20日の本番まで
これから練習予定もたくさん詰まっているらしい
ひょっこり大人の中に混ぜてもらった娘は
精一杯背伸びしながら頑張っている
望んでもいなかったたくさんのチャンス到来を感謝しつつ
最後の小学校生活を有意義に過ごして欲しいと思う




<目次     次へ>