大きな成果


今年から趣味の釣りをぼつぼつ再開した夫は
このところ黒鯛を釣る事に熱心になっている
今から13年前
娘が生まれた数日後に釣った黒鯛は
夫の釣り史上の最高記録53センチ
この時は魚を釣道具屋に持ち込んで
魚拓をとってもらった



身長46センチで生まれた娘よりも大きな黒鯛ということで
当時2歳だった息子は
あまりの大きさに恐れをなして
いつもならなんでも触ってみる子が
側に近づこうともしなかったのを覚えている

ここ大野の海岸では結構色んな魚が釣れるのだが
この魚はまさに海の主であったろう

その後は黒鯛への熱意(?)もおさまったのか
アジやメバルといった魚をたくさん釣る事を楽しんでいたところ
最近になってまた大物狙いの意欲がわいて
昔の勘を取り戻すべく何度か黒鯛を釣りに出かけていた
しかし
実際にはアナゴやタコといった
狙った獲物とは違うものが引っ掛かってきて
黒鯛は釣れてもさほど大きくはない
わたしのように台所を預かる者としては何でもOKだけど
目標がある人にはやはりそれなりのものが釣れないと面白くないようだ

昨夜は夕食後
待ちかねたように釣りの用意をして出かける夫
疲れていても好きな事をする元気だけは残っているのは誰も同じ(笑)
そしてついに大きな成果を持ち帰った



50センチの真鯛と
40センチの黒鯛だ

これを見た息子が言う
「ちゃんと写真を撮っておかないと
そう、何か比較になるものも置いて」
何を置こうかと考えて牛乳パックを取り出した
ヒレを立たせた方が立派に見えるからと背びれを持ち上げて
記念写真を撮る

13年前は黒鯛の主を
そして今回は真鯛の主を釣り上げた

本当は魚拓もとりたいところだが
あれをやると皮が真っ黒になって食べられなくなるので
今回は写真だけとって早速調理する
こういう時の料理人はもちろん夫
たちまちお刺身やアラ煮などが出来上がる
お刺身は握り寿司にして堪能
うーん、なんて贅沢な食卓なのだろう

だが
これだけ大きな成果のかげで
竿は重みに耐えかねて折れ
同じく網も壊れるというリスクもついてきた
ものごとすべてが上手くいくわけではない

それでも
やはり大きな獲物はいいものだ
釣り道具を洗っている夫に
「こうやって自給自足で暮らせたらいいねえ」
と言うと
「そんなにいつも釣れるわけじゃないし
そのうち食べるのも飽きるよ」
との返事

ああそうか
人間って結構ぜいたくにできていて
感激なんてすぐに薄れてしまうものだ
大きな成果も続くとありがたみが失せるから
しばらく間があいたほうがいいのだろうか
それでも
次はまた13年後というのも寂しいので
そのうちまた海の主にお目にかかりたい





<目次     次へ>